第20章「アサギ編」
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ガサガサ
「あー、ないなー」
(全然見つからないんだけど……本当にあるのかなぁ?)
息も絶え絶えになって、草を掻き分ける彩乃。
日が昇り始めた早朝から、彩乃たちは山の中で切り株を探している。
けれど何時間探し回っても、一向に竹の生えた切り株なんてものは見つからない。
時刻はもう、お昼になろうとしていた。
「どこだー切り株ー!」
「ううーん、こっちかなぁ?」
ガサガサ
「何か……お探しか?」
「竹の生えた切り株を……」
「それならほれ、藪の中。」
「え?……あっ、本当にあった。」
(――あれ?今、私は何と会話を……)
ハッとして振り返れば、そこには大きな顔の妖がいた。
「教えてやったぞ。教えてやったぞ。代償(かわり)にお前の腸を貰おう。」
「――なっ!?」
彩乃が驚く間もなく、妖はゆらりと霧のように消えてしまった。
「――まっ!……しまった。」
(どうしよう……変な妖と口を利いてしまった。)
「おーい、夏目。そっちは……あっ!」
「見つけたんだね、彩乃ちゃん。」
「でかしたぞ夏目!!」
「わーーーっっ!!」
彩乃が切り株を見つけたことに蛇の目さんが大喜びではしゃぎ、喜びを表現するかのように彩乃を胴上げした。
「わっ!ちょっ!やめろーー!!」
なんだかんだと騒いだせいで、蛇の目さんが落ち着いた頃には、彩乃はすっかり疲れてしまい、変な妖のことなどすっかり忘れてしまったのであった。
******
シャ、シャ、シャ
木を削る音がする。
近くで蛇の目さんが切り株を削っているのだろう。
がんばれば夜までにギリギリ間に合うそうだ。
「……う」
「彩乃ちゃん大丈夫?」
「う、うん……なんとか……」
(気分悪くなってきた……)
近くの木にもたれかかり、彩乃はぐったりとしていた。
それを心配そうに見守るリクオと氷麗。
因みに、今日はニャンコ先生は側にいない。
「付き合いきれん」とか言って、何処かに飲みに行ってしまったのだ。
(……このざらついた熱っぽさは、アサギのだ。
こんなに弱っているのに、演奏なんてしたら、アサギの命が……)
『――夏目様、大丈夫ですか?申し訳ありません。私のせいで……』
「そういえば……確認してなかったんだけど……」
『はい』
「アサギは、もう一度琴を弾きたいの?」
『……はい。もう一度。もう一度でも、その機会があるのであれば、私は……』
「――私は器用じゃないし、全然音楽の才能なんてないけど……それでもいい?」
『――はい。夏目様。』
その時、アサギが笑ってくれた気がした。
(ねぇアサギ、知ってる?)
アサギ。蛇の目さんは……アカガネはずっと、ずっと……
アサギのことが大好きなんだよ。
余程疲れていたのだろう。
彩乃は迫り来る眠気には勝てず、ゆっくりと瞼を閉じていく。
段々と眠気で遠のいていく意識の中で、誰かが手を握ってくれた気がした。
(――あっ、これはきっと……リクオくんの手だ……)
何故か、彩乃にはそれが解った。
冷たく冷えきった指先が、人の手の温もりで温められていく。
安心できるその温もりを感じながら、彩乃はゆっくりと目を閉じた。
(――私にもいつか、そんな風に想える人ができるのだろうか……)
深い眠りに入るまどろみの中で、ふと浮かんだ者の顔は、一体誰だったのだろうか……
「あー、ないなー」
(全然見つからないんだけど……本当にあるのかなぁ?)
息も絶え絶えになって、草を掻き分ける彩乃。
日が昇り始めた早朝から、彩乃たちは山の中で切り株を探している。
けれど何時間探し回っても、一向に竹の生えた切り株なんてものは見つからない。
時刻はもう、お昼になろうとしていた。
「どこだー切り株ー!」
「ううーん、こっちかなぁ?」
ガサガサ
「何か……お探しか?」
「竹の生えた切り株を……」
「それならほれ、藪の中。」
「え?……あっ、本当にあった。」
(――あれ?今、私は何と会話を……)
ハッとして振り返れば、そこには大きな顔の妖がいた。
「教えてやったぞ。教えてやったぞ。代償(かわり)にお前の腸を貰おう。」
「――なっ!?」
彩乃が驚く間もなく、妖はゆらりと霧のように消えてしまった。
「――まっ!……しまった。」
(どうしよう……変な妖と口を利いてしまった。)
「おーい、夏目。そっちは……あっ!」
「見つけたんだね、彩乃ちゃん。」
「でかしたぞ夏目!!」
「わーーーっっ!!」
彩乃が切り株を見つけたことに蛇の目さんが大喜びではしゃぎ、喜びを表現するかのように彩乃を胴上げした。
「わっ!ちょっ!やめろーー!!」
なんだかんだと騒いだせいで、蛇の目さんが落ち着いた頃には、彩乃はすっかり疲れてしまい、変な妖のことなどすっかり忘れてしまったのであった。
******
シャ、シャ、シャ
木を削る音がする。
近くで蛇の目さんが切り株を削っているのだろう。
がんばれば夜までにギリギリ間に合うそうだ。
「……う」
「彩乃ちゃん大丈夫?」
「う、うん……なんとか……」
(気分悪くなってきた……)
近くの木にもたれかかり、彩乃はぐったりとしていた。
それを心配そうに見守るリクオと氷麗。
因みに、今日はニャンコ先生は側にいない。
「付き合いきれん」とか言って、何処かに飲みに行ってしまったのだ。
(……このざらついた熱っぽさは、アサギのだ。
こんなに弱っているのに、演奏なんてしたら、アサギの命が……)
『――夏目様、大丈夫ですか?申し訳ありません。私のせいで……』
「そういえば……確認してなかったんだけど……」
『はい』
「アサギは、もう一度琴を弾きたいの?」
『……はい。もう一度。もう一度でも、その機会があるのであれば、私は……』
「――私は器用じゃないし、全然音楽の才能なんてないけど……それでもいい?」
『――はい。夏目様。』
その時、アサギが笑ってくれた気がした。
(ねぇアサギ、知ってる?)
アサギ。蛇の目さんは……アカガネはずっと、ずっと……
アサギのことが大好きなんだよ。
余程疲れていたのだろう。
彩乃は迫り来る眠気には勝てず、ゆっくりと瞼を閉じていく。
段々と眠気で遠のいていく意識の中で、誰かが手を握ってくれた気がした。
(――あっ、これはきっと……リクオくんの手だ……)
何故か、彩乃にはそれが解った。
冷たく冷えきった指先が、人の手の温もりで温められていく。
安心できるその温もりを感じながら、彩乃はゆっくりと目を閉じた。
(――私にもいつか、そんな風に想える人ができるのだろうか……)
深い眠りに入るまどろみの中で、ふと浮かんだ者の顔は、一体誰だったのだろうか……