第20章「アサギ編」
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彩乃に憑依してしまったアサギを剥がすために、彼女の願いを叶える協力をすることになった彩乃たち。
その為に、まずは楽器作りから行うことになった。
なんでも、 蛇の目さん曰く、アサギが以前愛用していた琴は磯月の森を去る時に、彼女がせめて自分の身代わりにと磯月の湖に沈めてしまったのだとか。
そんなこんなで、彩乃たちは現在、地元の池に来ていた。
「……何で池?楽器を作るんだよね?」
「鯉のいる天然池には大抵、額に白い線のある『線引き』って言う鯉そっくりな妖怪がいる。縄張り意識が強いから、一池に一匹で、人の子のような味がするらしい。それを捕まえろ!!」
「……え、何で魚……?」
「つべこべ言うな!」
「……」
「何だぁ。そのシケた面は!やる気あんのか!?」
「……」
「うっ、可愛くねぇ。だから人間のガキってのはよう!」
強制的に巻き込まれた彩乃にやる気がないのは仕方のないことであり、協力しているのに偉そうな態度ばかりの蛇の目さんが気にくわないのもあって、彩乃は不服そうに無言で顔をプイッと逸らすと、ツンとした態度の彩乃に蛇の目さんもまた気にくわなそうに文句を言い出した。
それから二人は鯉に似た妖怪を捕まえるべく、鯉を捕まえては放し、捕まえては放しを繰り返した。
幸い人気のない池だったので良かったが、傍から見たら一人で池を荒らしまくっている怪しい人間である。
*
数時間、原っぱでぐったりと倒れ込む彩乃と、それを呆れた眼差しで見つめるニャンコ先生がいた。
「……ハァハァ……うう……寒い……」
「そりゃ、いくら真夏とは言え、長時間も池に浸かっていればそうなるだろう。」
「先生も……手伝ってよぉ~……」
「やだ。」
真夏とは言え、流石に長時間も水に入っていたせいですっかり冷えきってしまった体。
カタカタと震えながら疲れて起き上がれない彩乃に、蛇の目さんが近づく。
「――大丈夫か?」
ふわりと優しく濡れた彩乃の髪を撫でながら、心配そうに声をかけてくる蛇の目さん。
不覚にもちょっと感動してじんと胸が熱くなる。しかし……
「蛇の……」
「疲れてないか?アサギ。」
「……」
『はい。私はこれっぽっちも……』
「…………」
「ん?何だ小娘。その不満げな顔は……」
「…………別に……」
ちょっとは心配してくれたのかと数分前にうっかり感動してしまった自分を殴りたくなった。
それからも、疲れて動けない彩乃を休ませ、蛇の目さんは一人で黙々と鯉を捕獲していった。
そんな蛇の目さんを遠くからぼんやりと眺める彩乃。
「……ねぇ。アサギと蛇の目さんはどういう関係なの?……その……恋人……とか?」
『ふふ、まさか。蛇の目さんは傘持ちだったのです。』
「傘持ち?」
『磯月の森には、壬生様が見初めた才ある美しき者たちが集っておりました。
そこで、壬生様やそれ等の者たちが日に焼けぬよう傘をさしかけたり、世話をしたり、用心棒として皆を守るのがお役目なのです。その中でも蛇の目さんはとても腕が立つのですよ。』
「へぇ……」
『そして優しい。こうして追われた私を心配して会いに来てくれました。』
『……美しい所でした。いつまでも居たかった……』
それは、夢のような……
『――ずっと……ずっと壬生様のお側で生きていくのだと思っていた。』
懐かしそうに語るアサギの声が、なんだかとても寂しそうに感じた彩乃は、アサギの境遇に酷く同情した。
「……弾けなくなったからって追い出すなんて、随分了見の狭い神様なのね。」
『……いいえ。いいえ、夏目様。寝所も持たなかった私を拾ってくださったあのお方のお側で、役に立てなくなったことに堪えられなくなったのは私なのです。』
「……」
そう語るアサギはやはりどこか寂しそうで、哀しげで、私はそんな彼女に何の言葉もかけてやることができなかった。
*
その日から、何故か蛇の目さんたちは私の部屋で寝泊まりをするようになり、私はアサギと体を共有しながら生活するという、不本意ながらも奇妙な共同生活が始まった。
その為に、まずは楽器作りから行うことになった。
なんでも、 蛇の目さん曰く、アサギが以前愛用していた琴は磯月の森を去る時に、彼女がせめて自分の身代わりにと磯月の湖に沈めてしまったのだとか。
そんなこんなで、彩乃たちは現在、地元の池に来ていた。
「……何で池?楽器を作るんだよね?」
「鯉のいる天然池には大抵、額に白い線のある『線引き』って言う鯉そっくりな妖怪がいる。縄張り意識が強いから、一池に一匹で、人の子のような味がするらしい。それを捕まえろ!!」
「……え、何で魚……?」
「つべこべ言うな!」
「……」
「何だぁ。そのシケた面は!やる気あんのか!?」
「……」
「うっ、可愛くねぇ。だから人間のガキってのはよう!」
強制的に巻き込まれた彩乃にやる気がないのは仕方のないことであり、協力しているのに偉そうな態度ばかりの蛇の目さんが気にくわないのもあって、彩乃は不服そうに無言で顔をプイッと逸らすと、ツンとした態度の彩乃に蛇の目さんもまた気にくわなそうに文句を言い出した。
それから二人は鯉に似た妖怪を捕まえるべく、鯉を捕まえては放し、捕まえては放しを繰り返した。
幸い人気のない池だったので良かったが、傍から見たら一人で池を荒らしまくっている怪しい人間である。
*
数時間、原っぱでぐったりと倒れ込む彩乃と、それを呆れた眼差しで見つめるニャンコ先生がいた。
「……ハァハァ……うう……寒い……」
「そりゃ、いくら真夏とは言え、長時間も池に浸かっていればそうなるだろう。」
「先生も……手伝ってよぉ~……」
「やだ。」
真夏とは言え、流石に長時間も水に入っていたせいですっかり冷えきってしまった体。
カタカタと震えながら疲れて起き上がれない彩乃に、蛇の目さんが近づく。
「――大丈夫か?」
ふわりと優しく濡れた彩乃の髪を撫でながら、心配そうに声をかけてくる蛇の目さん。
不覚にもちょっと感動してじんと胸が熱くなる。しかし……
「蛇の……」
「疲れてないか?アサギ。」
「……」
『はい。私はこれっぽっちも……』
「…………」
「ん?何だ小娘。その不満げな顔は……」
「…………別に……」
ちょっとは心配してくれたのかと数分前にうっかり感動してしまった自分を殴りたくなった。
それからも、疲れて動けない彩乃を休ませ、蛇の目さんは一人で黙々と鯉を捕獲していった。
そんな蛇の目さんを遠くからぼんやりと眺める彩乃。
「……ねぇ。アサギと蛇の目さんはどういう関係なの?……その……恋人……とか?」
『ふふ、まさか。蛇の目さんは傘持ちだったのです。』
「傘持ち?」
『磯月の森には、壬生様が見初めた才ある美しき者たちが集っておりました。
そこで、壬生様やそれ等の者たちが日に焼けぬよう傘をさしかけたり、世話をしたり、用心棒として皆を守るのがお役目なのです。その中でも蛇の目さんはとても腕が立つのですよ。』
「へぇ……」
『そして優しい。こうして追われた私を心配して会いに来てくれました。』
『……美しい所でした。いつまでも居たかった……』
それは、夢のような……
『――ずっと……ずっと壬生様のお側で生きていくのだと思っていた。』
懐かしそうに語るアサギの声が、なんだかとても寂しそうに感じた彩乃は、アサギの境遇に酷く同情した。
「……弾けなくなったからって追い出すなんて、随分了見の狭い神様なのね。」
『……いいえ。いいえ、夏目様。寝所も持たなかった私を拾ってくださったあのお方のお側で、役に立てなくなったことに堪えられなくなったのは私なのです。』
「……」
そう語るアサギはやはりどこか寂しそうで、哀しげで、私はそんな彼女に何の言葉もかけてやることができなかった。
*
その日から、何故か蛇の目さんたちは私の部屋で寝泊まりをするようになり、私はアサギと体を共有しながら生活するという、不本意ながらも奇妙な共同生活が始まった。