第19章「夏目の家族編」
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「行ってきます。お父さん。」
彩乃は最後に見納めとなる両親の家をじっと見つめると、小さくそう呟いた。
――さようなら……私の家……
……………
…………
「――鍵……ありがとう。」
「……」
叔父さんの家に鍵を返しに行くと、出てきたのは意外にも三世子だった。
彼女は彩乃が鍵を差し出すと、無言でそれを受け取った。
「……それじゃあ……」
「……待って。」
彩乃が気まずそうに踵を返すと、三世子は何故か彩乃を呼び止めた。
それに彩乃は意外だと思いながらも、驚いた表情で足を止めて振り返る。
「……あの、さ……その……」
「?」
三世子は何かを言いたそうにもじもじと手を弄り、目をキョロキョロと落ち着きなくさ迷わせる。
それに彩乃は不思議そうに首を傾げたが、軈て三世子の視線が彩乃の肩にいるニャンコ先生に止まる。
すると突然神妙な面持ちにになる三世子。
「……あんたさ……本当は……嘘なんて……」
三世子はそこまで言うと、その先を言うのを躊躇うように口を噤んだ。
何となくその言葉の先を察した彩乃は、困ったように苦笑すると、静かに首を横に振った。
――何も言わなくていい。
そう言ったのだと三世子は察して、驚いたように目を見開く。
「……あんた……」
「もう……いいの。」
それはどういう意味だったんだろう。
三世子にはそれを尋ねる勇気がなかった。
ただ、少しだけ寂しそうに笑った彩乃を見て、三世子は自分が少しだけ恥ずかしいと感じたのだ。
………………
………
――叔父さんの家を出て、その後のことは疲れていたのかよく覚えていない。
ただ、ひたすら家路を急いだ。
早く……帰りたかった。
あの……優しい笑顔が待っている温かな場所へ……
「――お帰り彩乃ちゃん。」
「――ああ、帰ってきたのか。お帰り彩乃。」
「ただいま」
悲しい日も
辛い日もあった。
そしてこれからも
そんな日はやってくるのかもしれない。
それでも……
「――ほら、彩乃ちゃん。笑って笑って!」
「え?えっと……」
「ほら、彩乃は真ん中だ。」
「あ、あの……」
「にゃ~お」
アワアワと慌てふためく彩乃を呆れたような眼差しで見つめるニャンコ先生。
「しっかりしろ」と言わんばかりに鳴き声を上げられ、彩乃は恥ずかしそうに前を見る。
パシャッ
小さなシャッター音が響くと、塔子さんと滋さんは嬉しそうにカメラを確認しに行く。
「うふふ、楽しみね。初めての家族写真。」
「ああ、綺麗に撮れてるといいな。」
「え……」
家族……今、二人はそう言ったのだろうか……
自分の耳を疑いたくなるような、今、とても嬉しい言葉を聞いた気がする。
茫然としていると、塔子さんと滋さんが振り返って彩乃を見た。
その眼差しはとても優しげで、まるで愛おしいものを見るように柔らかく……
「これからもっと写真を増やしましょうね。彩乃ちゃん。」
「え……」
「そうだな。折角見つけたカメラだ。これから家族の時間を増やしていこう。」
「……っ」
じんわりと、心に温かい何かが広がっていく……
つんっと鼻が痛んで、目尻に涙が浮かびそうになる……
「――はい。」
自分は今、どんな顔をしているのだろうか……
後に現像されたその写真は、塔子さんと選んだ写真立てに入れられて、彩乃の部屋にひっそりと置かれることになる。
大切な……大切な宝物として……
彩乃は最後に見納めとなる両親の家をじっと見つめると、小さくそう呟いた。
――さようなら……私の家……
……………
…………
「――鍵……ありがとう。」
「……」
叔父さんの家に鍵を返しに行くと、出てきたのは意外にも三世子だった。
彼女は彩乃が鍵を差し出すと、無言でそれを受け取った。
「……それじゃあ……」
「……待って。」
彩乃が気まずそうに踵を返すと、三世子は何故か彩乃を呼び止めた。
それに彩乃は意外だと思いながらも、驚いた表情で足を止めて振り返る。
「……あの、さ……その……」
「?」
三世子は何かを言いたそうにもじもじと手を弄り、目をキョロキョロと落ち着きなくさ迷わせる。
それに彩乃は不思議そうに首を傾げたが、軈て三世子の視線が彩乃の肩にいるニャンコ先生に止まる。
すると突然神妙な面持ちにになる三世子。
「……あんたさ……本当は……嘘なんて……」
三世子はそこまで言うと、その先を言うのを躊躇うように口を噤んだ。
何となくその言葉の先を察した彩乃は、困ったように苦笑すると、静かに首を横に振った。
――何も言わなくていい。
そう言ったのだと三世子は察して、驚いたように目を見開く。
「……あんた……」
「もう……いいの。」
それはどういう意味だったんだろう。
三世子にはそれを尋ねる勇気がなかった。
ただ、少しだけ寂しそうに笑った彩乃を見て、三世子は自分が少しだけ恥ずかしいと感じたのだ。
………………
………
――叔父さんの家を出て、その後のことは疲れていたのかよく覚えていない。
ただ、ひたすら家路を急いだ。
早く……帰りたかった。
あの……優しい笑顔が待っている温かな場所へ……
「――お帰り彩乃ちゃん。」
「――ああ、帰ってきたのか。お帰り彩乃。」
「ただいま」
悲しい日も
辛い日もあった。
そしてこれからも
そんな日はやってくるのかもしれない。
それでも……
「――ほら、彩乃ちゃん。笑って笑って!」
「え?えっと……」
「ほら、彩乃は真ん中だ。」
「あ、あの……」
「にゃ~お」
アワアワと慌てふためく彩乃を呆れたような眼差しで見つめるニャンコ先生。
「しっかりしろ」と言わんばかりに鳴き声を上げられ、彩乃は恥ずかしそうに前を見る。
パシャッ
小さなシャッター音が響くと、塔子さんと滋さんは嬉しそうにカメラを確認しに行く。
「うふふ、楽しみね。初めての家族写真。」
「ああ、綺麗に撮れてるといいな。」
「え……」
家族……今、二人はそう言ったのだろうか……
自分の耳を疑いたくなるような、今、とても嬉しい言葉を聞いた気がする。
茫然としていると、塔子さんと滋さんが振り返って彩乃を見た。
その眼差しはとても優しげで、まるで愛おしいものを見るように柔らかく……
「これからもっと写真を増やしましょうね。彩乃ちゃん。」
「え……」
「そうだな。折角見つけたカメラだ。これから家族の時間を増やしていこう。」
「……っ」
じんわりと、心に温かい何かが広がっていく……
つんっと鼻が痛んで、目尻に涙が浮かびそうになる……
「――はい。」
自分は今、どんな顔をしているのだろうか……
後に現像されたその写真は、塔子さんと選んだ写真立てに入れられて、彩乃の部屋にひっそりと置かれることになる。
大切な……大切な宝物として……