第17章「的場編」
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的場一門が洞窟を去って、残された彩乃たちの周囲には重い空気が漂っていた。
「――くそっ!的場を殺せなかった!あんなに……あんなに時間をかけて準備したのに!!」
「主……」
「なんで、何故だ……!!」
「主……もういいのです。私は主に復讐など求めていません。」
「だがヨル!」
悔しそうに憤りを露にする女を労るように、カゲロウはそっと女の手を自分の手で包み込んで柔らかく微笑む。
「もう……よいのです主。もう誰かを憎むのは止めてください。共に静かに暮らしましょう。また一緒に……」
「ヨル……私の元に帰ってきてくれるのか?」
「はい。ワタクシたちの間にはまだ契約の絆があります。ワタクシは……ヨルは、主と共に参ります。貴女がそれを望むなら、貴女の生涯が終わるその時まで……共に……」
「ヨル……」
「――ただ、ワタクシにはもう貴女を空へと運ぶ翼がありません。片翼の鴉となったワタクシでも宜しければ、また共に……」
「そんなことは気にしない!私はただ、お前と一緒にいられればそれだけでいい!!」
「わかりました……」
(……良かったね、カゲロウ……)
翼など無くてもいいとはっきりと告げてくれた女の言葉に、カゲロウはとても嬉しそうに、満ち足りた顔で微笑んだのだった。
………………
…………
「――行ってしまったね。」
「はい……」
「彼を行かせてしまって良かったのかい?」
「いいんですよ。カゲロウの望んだことなら、私は応援したいです。」
「そうか……」
女とカゲロウは彩乃たちに別れを告げて何処かへと去っていった。
きっとこれからは、二人仲良くまた共に生きていくのだろう。
今度こそ、二人には静かで穏やかな幸せが訪れることを願ってやまない。
「……私たちも帰ろうか。」
「はい。」
「リクオ様、私たちも帰りましょう!」
「うん、そうだね。」
怪我をして、疲れてスヤスヤと眠るニャンコ先生をだっこし直して、彩乃は名取の言葉に答える。
彩乃の心には僅かに蟠りが残り、モヤモヤとした感情が渦巻いていた。
『使えるものは使わないと……』
――もし、もしも友人帳を持つ者がそっちへ考えが流されてしまったら……
友人帳がそういう考えの者に渡ってしまったら……
(……違う。)
彩乃は無意識にニャンコ先生を抱き締める腕に力を込めた。
(私と的場さんは違う。私にはニャンコ先生がいるし、名取さんやリクオくんたちがいる……絶対、私はあちら側にはならない……)
不安げに瞳を揺らし、自分の感情に戸惑う彩乃の変化には、誰も気付かなかったのだった。
******
「――あっ、結局名を聞き忘れてしまったな。」
「おやおや……確か夏目彩乃……あの夏目レイコの孫らしいですよ。」
「ほう……夏目レイコの孫……ああ、それはますます面白いものを見つけたな。」
「――くそっ!的場を殺せなかった!あんなに……あんなに時間をかけて準備したのに!!」
「主……」
「なんで、何故だ……!!」
「主……もういいのです。私は主に復讐など求めていません。」
「だがヨル!」
悔しそうに憤りを露にする女を労るように、カゲロウはそっと女の手を自分の手で包み込んで柔らかく微笑む。
「もう……よいのです主。もう誰かを憎むのは止めてください。共に静かに暮らしましょう。また一緒に……」
「ヨル……私の元に帰ってきてくれるのか?」
「はい。ワタクシたちの間にはまだ契約の絆があります。ワタクシは……ヨルは、主と共に参ります。貴女がそれを望むなら、貴女の生涯が終わるその時まで……共に……」
「ヨル……」
「――ただ、ワタクシにはもう貴女を空へと運ぶ翼がありません。片翼の鴉となったワタクシでも宜しければ、また共に……」
「そんなことは気にしない!私はただ、お前と一緒にいられればそれだけでいい!!」
「わかりました……」
(……良かったね、カゲロウ……)
翼など無くてもいいとはっきりと告げてくれた女の言葉に、カゲロウはとても嬉しそうに、満ち足りた顔で微笑んだのだった。
………………
…………
「――行ってしまったね。」
「はい……」
「彼を行かせてしまって良かったのかい?」
「いいんですよ。カゲロウの望んだことなら、私は応援したいです。」
「そうか……」
女とカゲロウは彩乃たちに別れを告げて何処かへと去っていった。
きっとこれからは、二人仲良くまた共に生きていくのだろう。
今度こそ、二人には静かで穏やかな幸せが訪れることを願ってやまない。
「……私たちも帰ろうか。」
「はい。」
「リクオ様、私たちも帰りましょう!」
「うん、そうだね。」
怪我をして、疲れてスヤスヤと眠るニャンコ先生をだっこし直して、彩乃は名取の言葉に答える。
彩乃の心には僅かに蟠りが残り、モヤモヤとした感情が渦巻いていた。
『使えるものは使わないと……』
――もし、もしも友人帳を持つ者がそっちへ考えが流されてしまったら……
友人帳がそういう考えの者に渡ってしまったら……
(……違う。)
彩乃は無意識にニャンコ先生を抱き締める腕に力を込めた。
(私と的場さんは違う。私にはニャンコ先生がいるし、名取さんやリクオくんたちがいる……絶対、私はあちら側にはならない……)
不安げに瞳を揺らし、自分の感情に戸惑う彩乃の変化には、誰も気付かなかったのだった。
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「――あっ、結局名を聞き忘れてしまったな。」
「おやおや……確か夏目彩乃……あの夏目レイコの孫らしいですよ。」
「ほう……夏目レイコの孫……ああ、それはますます面白いものを見つけたな。」