第16章「四国編」

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――数週間後、四国。

海がよく見える崖の上に、玉章は立っていた。
そこには墓石なのだろう……誰かの名が書かれた石がいくつも並べられていた。
玉章はリクオとの約束を果たし、きちんと自分の手で子分たちの弔いをしたのであった。

ザザァン……
「……」

波の音が心地よく耳に響く。
玉章は水平線の向こうから昇る朝日を静かに見つめていた。

『後悔して。そして……精一杯悔やんで……』
『そうすればきっと……玉章は今度こそ本当に大切なものに気付けるから……』

あの時、彩乃に言われた言葉が頭から離れない。忘れることができない。
正直、人間の小娘なんかに説教されて腹立たしいことこの上ない筈なのに……玉章はどうしてか脳裏に彩乃の言葉と顔がちらつくのだ。

「……」
「――玉章……そろそろ行くぜよ。」
「――なあ、犬……」
「あ?」
「お前、本当はあの子……夏目彩乃の側にいたかったんじゃないか?」
「……否定はしねーぜよ。」
「妙に素直だな。」

玉章の質問に素直に自分の気持ちを話す犬神を、玉章は少し意外だと思った。
今まではもっと、野心的な話ししかしたことがなかったからだ。

「だけど……俺はお前についてくって決めたんだ。」
「ハッ……物好きな奴だな……僕はあの子みたいに優しくないし、甘やかしたりもしないよ。」
「知ってるっての!どんだけの付き合いだよ!」
「ふん……」

そう言って鼻で犬神を笑った玉章の表情は、少しだけ穏やかなものだったという。

******

後日……彩乃の元に一通の手紙が届いた。

「――誰からだろ……えっ!?玉章!!?」
「捨てろ!!今すぐ捨てろ!!」

天敵と言ってもいい相手からのまさかの手紙に、彩乃もニャンコ先生も警戒を強くする。
そして読むのも怖いが、読まずに捨てるのも逆に怖いので、彩乃は開封してみることにした。


――今度は君を迎えに行く……

玉章


「――え……これって……どういう意味?」

玉章の短い文章に意味が解らずに戸惑う彩乃
そしてその意味が解ったニャンコ先生は、心底嫌そうに呟いた。

「……お前……厄介なのに惚れられたな……」
「えっ!?」
「はあ~……面倒な……」
「ええーー!!!!??」

まさかの言葉に彩乃の絶叫が木霊した。
それはまだ、先の再会のお話で……
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