第16章「四国編」
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「……あなたは……」
腰よりも長い艶のある黒髪。
平安時代を思わせるような十二単の着物。
しなだれ桜の花びらが舞う下で柔らかく微笑むその女性には、桜がよく似合うと思った。
「――私は珱と申します。初めまして、夏目さん。」
「どうして私の名前……」
「あなたのことは『あの人』を通して見ていましたから……それよりも、今あなたはとても困っている……そうではありませんか?」
「(あの人?)それは……」
図星なだけに、彩乃は返答に困った。
この女性を信用していいのか迷ったからだ。
とても優しげに微笑む目の前の女性は、とても悪い人には見えない。
だからなのか、彩乃の警戒心はすぐにほぐれた。
(それに……話してもいっか。夢だし……)
「実は……私の大切な友人が、私のせいで大怪我をしてしまったんです。」
「そう……」
先生が目の前で傷つけられていく様を、自分はただ見ていることしかできなかった。
その時の事を思い出してか、彩乃は落ち込んだ様子で目を細めた。
悲しむ彩乃の気持ちが伝わったかの様に、珱と名乗った女性もとても悲しい顔をしていた。
そして、珱姫はそっと彩乃の両手を自分の両手で包み込んだ。
「――珱さん?」
「あなたが私に少しだけ体を貸してくれるなら、あなたの苦しみをほんの少しだけ和らげるお手伝いができます。」
「え……」
「どう……しますか?無理にとは言いません。でも決して悪いようにはしません。信じてください。」
「えっと……」
とても真剣な眼差しで見つめられ、彩乃は戸惑う。
突然体を貸せと言われても、はいそうですかと簡単に答えるわけにはいかない。
(それにこれ……夢だよね?あれ?違うの?)
なんだか段々混乱してきた。
今日は本当に色んなことがありすぎて、正直頭がパンクしそうだ。でも……
「お願い……します。」
気付いたらそう口にしていた。
この人を信じてみたいと思ったし、それに何よりも……ニャンコ先生を助けたかったから。
今は伸ばしてくれるこの優しい手に、すがってみたいと思った。
……………………
………………
「んがぁ~……あてっ!」
斑に寄り添うように眠る彩乃の側に控えていたヒノエは、体勢が崩れて体を打ち付け、痛みで目を覚ました。
今晩は寝る間も惜しんで旧友の看病をしていたが、どうやらいつの間にか自分も寝ていたようだ。
(まったく、らしくないことはするもんじゃないね。斑なんかどうでもいいが、あんな彩乃の顔を見ちゃ、力を貸さないわけにもいかないし……)
まったく、惚れた弱みというやつか……
「……ん?」
ヒノエがやれやれと自分で自分の行動に呆れていると、不意に彩乃が起き上がったのだ。
「おや彩乃。起きたのかい?」
「……」
彩乃はヒノエの言葉に答えず、無言で斑の側に寄ると、そっと彼の体を撫でた。
「……彩乃?」
バァァァ!
「!?」
すると彩乃の手から光が溢れだし、その手に触れられた斑の傷が目に見えてみるみると癒えていった。
あり得ない光景にヒノエは目をひんむくと、すぐに頭を振って彩乃を睨み付けた。
「……あんた、彩乃じゃないね。何者だい。彩乃に取り憑いてどうする気だい!?」
「心配しないでください。もう帰ります。」
「えっ、ちょっ、まっ!」
彩乃に取り憑いている『何者』かはふわりと柔らかく微笑むと、それだけ言ってまた眠りについてしまった。
ふらりと傾く彩乃の体を慌てて抱き止めるヒノエ。
彩乃からもう不思議な気配はなく、いつもの彩乃だとわかってホッと安堵の息をつくヒノエ。
そう、いつもの彩乃……
ヒノエはワナワナと体を震わせたかと思えば、かばりと彩乃を抱き締めた。
そして首筋に顔を埋め、思いっきり息を吸う。
「スーハー!スーハー!ああ……彩乃の匂い……!!」
「んっ……」
「ああっ!彩乃の声……!!あ~~!!今すぐ襲いたい!!!!!」
ムラムラと沸き上がる欲望をヒノエはぎりぎり残った理性で押し留め、彩乃を静かに布団に寝かせるのだった。
そして……
「ああ……あ~~!!あ~~!!」
ヒノエはその夜、日が上って彩乃が目覚めるまで、ずっと彩乃達の側で必死に理性と欲望の鬩ぎ合いになりながら、己の欲求と闘ったのであった。
腰よりも長い艶のある黒髪。
平安時代を思わせるような十二単の着物。
しなだれ桜の花びらが舞う下で柔らかく微笑むその女性には、桜がよく似合うと思った。
「――私は珱と申します。初めまして、夏目さん。」
「どうして私の名前……」
「あなたのことは『あの人』を通して見ていましたから……それよりも、今あなたはとても困っている……そうではありませんか?」
「(あの人?)それは……」
図星なだけに、彩乃は返答に困った。
この女性を信用していいのか迷ったからだ。
とても優しげに微笑む目の前の女性は、とても悪い人には見えない。
だからなのか、彩乃の警戒心はすぐにほぐれた。
(それに……話してもいっか。夢だし……)
「実は……私の大切な友人が、私のせいで大怪我をしてしまったんです。」
「そう……」
先生が目の前で傷つけられていく様を、自分はただ見ていることしかできなかった。
その時の事を思い出してか、彩乃は落ち込んだ様子で目を細めた。
悲しむ彩乃の気持ちが伝わったかの様に、珱と名乗った女性もとても悲しい顔をしていた。
そして、珱姫はそっと彩乃の両手を自分の両手で包み込んだ。
「――珱さん?」
「あなたが私に少しだけ体を貸してくれるなら、あなたの苦しみをほんの少しだけ和らげるお手伝いができます。」
「え……」
「どう……しますか?無理にとは言いません。でも決して悪いようにはしません。信じてください。」
「えっと……」
とても真剣な眼差しで見つめられ、彩乃は戸惑う。
突然体を貸せと言われても、はいそうですかと簡単に答えるわけにはいかない。
(それにこれ……夢だよね?あれ?違うの?)
なんだか段々混乱してきた。
今日は本当に色んなことがありすぎて、正直頭がパンクしそうだ。でも……
「お願い……します。」
気付いたらそう口にしていた。
この人を信じてみたいと思ったし、それに何よりも……ニャンコ先生を助けたかったから。
今は伸ばしてくれるこの優しい手に、すがってみたいと思った。
……………………
………………
「んがぁ~……あてっ!」
斑に寄り添うように眠る彩乃の側に控えていたヒノエは、体勢が崩れて体を打ち付け、痛みで目を覚ました。
今晩は寝る間も惜しんで旧友の看病をしていたが、どうやらいつの間にか自分も寝ていたようだ。
(まったく、らしくないことはするもんじゃないね。斑なんかどうでもいいが、あんな彩乃の顔を見ちゃ、力を貸さないわけにもいかないし……)
まったく、惚れた弱みというやつか……
「……ん?」
ヒノエがやれやれと自分で自分の行動に呆れていると、不意に彩乃が起き上がったのだ。
「おや彩乃。起きたのかい?」
「……」
彩乃はヒノエの言葉に答えず、無言で斑の側に寄ると、そっと彼の体を撫でた。
「……彩乃?」
バァァァ!
「!?」
すると彩乃の手から光が溢れだし、その手に触れられた斑の傷が目に見えてみるみると癒えていった。
あり得ない光景にヒノエは目をひんむくと、すぐに頭を振って彩乃を睨み付けた。
「……あんた、彩乃じゃないね。何者だい。彩乃に取り憑いてどうする気だい!?」
「心配しないでください。もう帰ります。」
「えっ、ちょっ、まっ!」
彩乃に取り憑いている『何者』かはふわりと柔らかく微笑むと、それだけ言ってまた眠りについてしまった。
ふらりと傾く彩乃の体を慌てて抱き止めるヒノエ。
彩乃からもう不思議な気配はなく、いつもの彩乃だとわかってホッと安堵の息をつくヒノエ。
そう、いつもの彩乃……
ヒノエはワナワナと体を震わせたかと思えば、かばりと彩乃を抱き締めた。
そして首筋に顔を埋め、思いっきり息を吸う。
「スーハー!スーハー!ああ……彩乃の匂い……!!」
「んっ……」
「ああっ!彩乃の声……!!あ~~!!今すぐ襲いたい!!!!!」
ムラムラと沸き上がる欲望をヒノエはぎりぎり残った理性で押し留め、彩乃を静かに布団に寝かせるのだった。
そして……
「ああ……あ~~!!あ~~!!」
ヒノエはその夜、日が上って彩乃が目覚めるまで、ずっと彩乃達の側で必死に理性と欲望の鬩ぎ合いになりながら、己の欲求と闘ったのであった。