第16章「四国編」
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目の前に飛び散る赤。
「ガアアアアアア!!」
耳を塞ぎたくなるような苦痛に満ちた咆哮が辺りに響き渡る。
犬神は一度食らい付いたニャンコ先生の喉元を食い千切らんとばかりに強く噛み付き、それを振り払おうと先生が暴れる度に先生の喉元から赤い血が辺りに飛び散った。
「やめて!もうやめてよ!先生が死んじゃう!!」
「――少し、手伝ってやるか……」
彩乃は犬神が攻撃を止めるように玉章に訴えるが、玉章は先生が傷ついていく様を楽しげに眺めているだけで止めてくれそうにない。
すると不意に玉章は胸ポケットから一枚の葉っぱを取り出すと、それを先生と犬神に向けて飛ばした。
ビュオオオ!!
「グァアアアアッ!!」
「ギャアアアア!!」
その一枚の葉は数千もの数に増えると、まるで鎌鼬のように鋭い刃の如く先生と犬神を傷つけた。
無数の葉がまるで台風の如く二人に纏わりつくように襲いかかる。
その度にニャンコ先生と犬神の体にどんどん傷ができていく。
「なっ……仲間ごと傷つけるなんて……!犬神はあなたの仲間なんでしょ!?なのにこんな!!」
「ああ……犬神は大事な捨て駒だよ。」
「捨て駒って……仲間をそんな……!」
「そんなことよりいいのかい?このままでは君の式は死んでしまうよ。」
「っ!先生っ!」
冷やかな笑みで仲間である犬神までも簡単に殺そうとする玉章に、彩乃は信じられない思いだった。
しかし今はそんなことよりも、このままでは先生が傷ついていくばかりだ。
「お願いもうやめて!このままじゃ先生も犬神も死んじゃう!!」
「なら、僕に友人帳を渡すんだ。そうすれば止めてあげるよ?」
「それは……!」
彩乃は友人帳の入った鞄を一瞥すると、一瞬だけ脳裏に過った考えに頭を振った。
――駄目だ。
こんな奴に友人帳を渡したら、どんな風に悪用するかわからない。
だけど……
「ガアアアアアア!!」
「――っ!」
「……ほら、このままでは彼も苦しいだけだよ?」
「先生……っ」
こんな、こんなことになるなら、妖を傷つけるのは嫌だと逃げずに、ちゃんと向き合えば良かった。
友人帳を持つということは、多くの妖と関わることになる。
それは優しい妖ばかりじゃなく、人を襲う非道な妖もいる訳で……
――いつか、いつか自分の甘さが原因で藤原さん達や先生が傷つくかもしれないと考えなかった訳じゃない。
だからせめて自分の身くらいは自分で守れるようになれればとゆらちゃんや名取さんに護身術を習おうと考えたこともあった。
けど、妖を殺すのは嫌だと学ぶことを躊躇った。
後回しにしてずっと避けてきた。
それが、こんなことになるなんて……
彩乃はぎゅっと友人帳の入った鞄を握り締める。
「……友人帳……」
友人帳には三篠や奴良組の顔見知りの名も多くある。
仲間を簡単に切り捨てるようなこんな奴に友人帳を渡したら、きっと友人帳に名のある妖も同じ目にあうだろう。
――渡すわけにはいかない。
でも、だけど……
ニャンコ先生はどんな妖よりも大切な存在で、先生を見捨てるなんて、できない。
でも、それでも……友人帳を渡すわけには……
友人帳を渡すか躊躇う彩乃の迷いを見抜いた玉章は、彩乃の耳元にそっと唇を寄せて囁く。
「――ほら、早くしないと本当に死んでしまうよ。」
「っ、先生……!」
友人帳など力ずくで彩乃から奪ってしまえばいい。
その方が手っ取り早いし、楽であるのに、玉章はわざわざ彩乃自ら渡すように促しているのは、ただ単純に苦しむ彩乃を見て楽しんでいるのだ。
「わ、わた……」
「――呪術・傀儡の舞」
「!」
思わず渡すと言いそうになった彩乃の言葉を遮るように、凛とした女の声が響き渡る。
「ガアアアアアア!!」
耳を塞ぎたくなるような苦痛に満ちた咆哮が辺りに響き渡る。
犬神は一度食らい付いたニャンコ先生の喉元を食い千切らんとばかりに強く噛み付き、それを振り払おうと先生が暴れる度に先生の喉元から赤い血が辺りに飛び散った。
「やめて!もうやめてよ!先生が死んじゃう!!」
「――少し、手伝ってやるか……」
彩乃は犬神が攻撃を止めるように玉章に訴えるが、玉章は先生が傷ついていく様を楽しげに眺めているだけで止めてくれそうにない。
すると不意に玉章は胸ポケットから一枚の葉っぱを取り出すと、それを先生と犬神に向けて飛ばした。
ビュオオオ!!
「グァアアアアッ!!」
「ギャアアアア!!」
その一枚の葉は数千もの数に増えると、まるで鎌鼬のように鋭い刃の如く先生と犬神を傷つけた。
無数の葉がまるで台風の如く二人に纏わりつくように襲いかかる。
その度にニャンコ先生と犬神の体にどんどん傷ができていく。
「なっ……仲間ごと傷つけるなんて……!犬神はあなたの仲間なんでしょ!?なのにこんな!!」
「ああ……犬神は大事な捨て駒だよ。」
「捨て駒って……仲間をそんな……!」
「そんなことよりいいのかい?このままでは君の式は死んでしまうよ。」
「っ!先生っ!」
冷やかな笑みで仲間である犬神までも簡単に殺そうとする玉章に、彩乃は信じられない思いだった。
しかし今はそんなことよりも、このままでは先生が傷ついていくばかりだ。
「お願いもうやめて!このままじゃ先生も犬神も死んじゃう!!」
「なら、僕に友人帳を渡すんだ。そうすれば止めてあげるよ?」
「それは……!」
彩乃は友人帳の入った鞄を一瞥すると、一瞬だけ脳裏に過った考えに頭を振った。
――駄目だ。
こんな奴に友人帳を渡したら、どんな風に悪用するかわからない。
だけど……
「ガアアアアアア!!」
「――っ!」
「……ほら、このままでは彼も苦しいだけだよ?」
「先生……っ」
こんな、こんなことになるなら、妖を傷つけるのは嫌だと逃げずに、ちゃんと向き合えば良かった。
友人帳を持つということは、多くの妖と関わることになる。
それは優しい妖ばかりじゃなく、人を襲う非道な妖もいる訳で……
――いつか、いつか自分の甘さが原因で藤原さん達や先生が傷つくかもしれないと考えなかった訳じゃない。
だからせめて自分の身くらいは自分で守れるようになれればとゆらちゃんや名取さんに護身術を習おうと考えたこともあった。
けど、妖を殺すのは嫌だと学ぶことを躊躇った。
後回しにしてずっと避けてきた。
それが、こんなことになるなんて……
彩乃はぎゅっと友人帳の入った鞄を握り締める。
「……友人帳……」
友人帳には三篠や奴良組の顔見知りの名も多くある。
仲間を簡単に切り捨てるようなこんな奴に友人帳を渡したら、きっと友人帳に名のある妖も同じ目にあうだろう。
――渡すわけにはいかない。
でも、だけど……
ニャンコ先生はどんな妖よりも大切な存在で、先生を見捨てるなんて、できない。
でも、それでも……友人帳を渡すわけには……
友人帳を渡すか躊躇う彩乃の迷いを見抜いた玉章は、彩乃の耳元にそっと唇を寄せて囁く。
「――ほら、早くしないと本当に死んでしまうよ。」
「っ、先生……!」
友人帳など力ずくで彩乃から奪ってしまえばいい。
その方が手っ取り早いし、楽であるのに、玉章はわざわざ彩乃自ら渡すように促しているのは、ただ単純に苦しむ彩乃を見て楽しんでいるのだ。
「わ、わた……」
「――呪術・傀儡の舞」
「!」
思わず渡すと言いそうになった彩乃の言葉を遮るように、凛とした女の声が響き渡る。