第16章「四国編」
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「……誰も……いない?」
下駄箱に置かれていた差出人不明の謎の呼び出しの手紙を読んだ彩乃は、怪しみながらも裏庭へとやって来た。
しかし、いざ来てみるとそこには誰もおらず、彩乃は訝しげに手紙を見た。
「場所……間違ってないよね?」
「やあ、一人で来てくれて良かったよ。」
「!?」
後ろから突然声を掛けられ、彩乃は慌てて振り返ろうとした。
しかし、それは誰かの手によって敵わなかった。
振り返ろうとした彩乃の肩を掴んで壁に押し付けるように叩きつけたのだ。
「いっ!」
「君が……『友人帳の夏目』だね?」
「……っ」
彩乃が壁に叩き付けられた痛みで顔を歪めながらうっすらと目を開けると、そこには数日前に出会った高校生くらいの少年二人がいた。
黒髪の少年は彩乃を壁に押し付けながらニヤリと口元を吊り上げて笑うと、はっきりと『友人帳』と口にしたのだ。
「……あなた達、妖なの?」
「そうだよ。自己紹介が遅れたね。僕は玉章。四国八十八鬼夜行を束ねる者。そしてこいつは犬神。」
「……けっ。」
「四国……あなた達が鳥居さんや街の人達を襲った四国妖怪だったの!?」
彩乃は鋭い眼差しで玉章を睨み付けるが、彼は彩乃の視線など気にした様子もなく楽しげにクスリと笑った。
「奴良組の連中も漸く僕等の動きに気付いたのか。」
「そんな事より玉章。さっさとこいつを殺して友人帳とやらを奪うぜよ。」
「っ!」
殺して友人帳を奪えと言う犬神の物騒な言葉に、彩乃は警戒して思わず友人帳の入った鞄を咄嗟に手で押さえてしまう。
それを見た犬神がニヤリと口角を吊り上げて笑う。
「そこにあるんだな。」
「……友人帳を奪ってどうするつもりなの?」
「決まってるじゃないか。友人帳には大物の妖怪もいると聞く。従わせられれば戦力になるからね。」
「……友人帳を悪用する気なら渡せない。」
「お前の意見なんて関係ねーぜよ!どうせ殺すんだからな。」
「……例え私を殺して友人帳を奪っても、友人帳に名を書かれた妖の名と姿を知らなければ従わせることはできないよ。」
「ほう……それは面倒だな。一々友人帳に名のある妖怪を探すのは面倒だ。だがまあいいさ。とりあえず奪ってから考えるとするよ。」
「……っ、あんた達に友人帳は絶対渡さない!」
彩乃は追い詰められているこの状況でも気丈に振る舞おうと玉章達を睨み付けた。
そんな彩乃の精一杯の抵抗が可笑しいのか、玉章クスリと小さく笑い、犬神は面倒くさそうに舌打ちした。
「いいからさっさと寄越せよ!」
「うぁ……っ!」
犬神は彩乃の首に手を伸ばすと、強い力で締め付けた。
犬神の指が肉に食い込み、きりきりと首を締め付ける。
彩乃は苦しさのあまりなんとか犬神の手から逃れようと彼の手を掴んでみるが、まるで意味のない抵抗だった。
「うぁ……苦し……」
「このまま首をへし折ってやるぜよ。」
犬神は苦しそうに顔を歪める彩乃を楽しそうに見つめながら、更に指に力を込めた。
息苦しさから生理的に涙が流れる。
(……このままだと本当に殺される……)
彩乃はぐっと拳を強く握り締めると、力一杯犬神の顔面を殴った。
ゴスッ!
「でっ!」
「っ!ゴホゴホ!」
まさか抵抗されるとは思ってなかったのだろう。
完全に油断して彩乃に顔面を思いっきり殴られた犬神は、殴られた拍子に彩乃から手を離し、痛そうに顔を手で覆った。
手加減無しに本気で殴られた顔は赤くなっていて、犬神は忌々しそうに彩乃を睨み付けた。
「いって~!このくそ女!」
「……ゲホ……」
「へえ……やるね。」
彩乃はまだ苦しいのか噎せながらも犬神と玉章を見据える。
そんな彩乃を玉章は面白そうに見つめた。
「妖祓いでもないただの人間のくせに、妖怪に逆らうなんて度胸がある。勇敢なのか単に恐れを知らない馬鹿なのか。」
「……っ」
まるで彩乃を品定めするかのようにねっとりとした視線で見つめてくる玉章に、彩乃は不快感を感じて眉を寄せた。
「友人帳にも興味はあるが、君も面白そうだ。」
玉章が彩乃に再び手を伸ばそうとすると、突然突風が吹いた。
あまりにも強い風に一瞬目を閉じると、次に目を開けた時、彩乃はとても安心したように険しい顔を緩め、目付きに安堵の色がよみがえった。
「ニャンコ先生!」
視界いっぱいに広がる白。
それは本来の大きな獣の姿に戻ったニャンコ先生だった。
下駄箱に置かれていた差出人不明の謎の呼び出しの手紙を読んだ彩乃は、怪しみながらも裏庭へとやって来た。
しかし、いざ来てみるとそこには誰もおらず、彩乃は訝しげに手紙を見た。
「場所……間違ってないよね?」
「やあ、一人で来てくれて良かったよ。」
「!?」
後ろから突然声を掛けられ、彩乃は慌てて振り返ろうとした。
しかし、それは誰かの手によって敵わなかった。
振り返ろうとした彩乃の肩を掴んで壁に押し付けるように叩きつけたのだ。
「いっ!」
「君が……『友人帳の夏目』だね?」
「……っ」
彩乃が壁に叩き付けられた痛みで顔を歪めながらうっすらと目を開けると、そこには数日前に出会った高校生くらいの少年二人がいた。
黒髪の少年は彩乃を壁に押し付けながらニヤリと口元を吊り上げて笑うと、はっきりと『友人帳』と口にしたのだ。
「……あなた達、妖なの?」
「そうだよ。自己紹介が遅れたね。僕は玉章。四国八十八鬼夜行を束ねる者。そしてこいつは犬神。」
「……けっ。」
「四国……あなた達が鳥居さんや街の人達を襲った四国妖怪だったの!?」
彩乃は鋭い眼差しで玉章を睨み付けるが、彼は彩乃の視線など気にした様子もなく楽しげにクスリと笑った。
「奴良組の連中も漸く僕等の動きに気付いたのか。」
「そんな事より玉章。さっさとこいつを殺して友人帳とやらを奪うぜよ。」
「っ!」
殺して友人帳を奪えと言う犬神の物騒な言葉に、彩乃は警戒して思わず友人帳の入った鞄を咄嗟に手で押さえてしまう。
それを見た犬神がニヤリと口角を吊り上げて笑う。
「そこにあるんだな。」
「……友人帳を奪ってどうするつもりなの?」
「決まってるじゃないか。友人帳には大物の妖怪もいると聞く。従わせられれば戦力になるからね。」
「……友人帳を悪用する気なら渡せない。」
「お前の意見なんて関係ねーぜよ!どうせ殺すんだからな。」
「……例え私を殺して友人帳を奪っても、友人帳に名を書かれた妖の名と姿を知らなければ従わせることはできないよ。」
「ほう……それは面倒だな。一々友人帳に名のある妖怪を探すのは面倒だ。だがまあいいさ。とりあえず奪ってから考えるとするよ。」
「……っ、あんた達に友人帳は絶対渡さない!」
彩乃は追い詰められているこの状況でも気丈に振る舞おうと玉章達を睨み付けた。
そんな彩乃の精一杯の抵抗が可笑しいのか、玉章クスリと小さく笑い、犬神は面倒くさそうに舌打ちした。
「いいからさっさと寄越せよ!」
「うぁ……っ!」
犬神は彩乃の首に手を伸ばすと、強い力で締め付けた。
犬神の指が肉に食い込み、きりきりと首を締め付ける。
彩乃は苦しさのあまりなんとか犬神の手から逃れようと彼の手を掴んでみるが、まるで意味のない抵抗だった。
「うぁ……苦し……」
「このまま首をへし折ってやるぜよ。」
犬神は苦しそうに顔を歪める彩乃を楽しそうに見つめながら、更に指に力を込めた。
息苦しさから生理的に涙が流れる。
(……このままだと本当に殺される……)
彩乃はぐっと拳を強く握り締めると、力一杯犬神の顔面を殴った。
ゴスッ!
「でっ!」
「っ!ゴホゴホ!」
まさか抵抗されるとは思ってなかったのだろう。
完全に油断して彩乃に顔面を思いっきり殴られた犬神は、殴られた拍子に彩乃から手を離し、痛そうに顔を手で覆った。
手加減無しに本気で殴られた顔は赤くなっていて、犬神は忌々しそうに彩乃を睨み付けた。
「いって~!このくそ女!」
「……ゲホ……」
「へえ……やるね。」
彩乃はまだ苦しいのか噎せながらも犬神と玉章を見据える。
そんな彩乃を玉章は面白そうに見つめた。
「妖祓いでもないただの人間のくせに、妖怪に逆らうなんて度胸がある。勇敢なのか単に恐れを知らない馬鹿なのか。」
「……っ」
まるで彩乃を品定めするかのようにねっとりとした視線で見つめてくる玉章に、彩乃は不快感を感じて眉を寄せた。
「友人帳にも興味はあるが、君も面白そうだ。」
玉章が彩乃に再び手を伸ばそうとすると、突然突風が吹いた。
あまりにも強い風に一瞬目を閉じると、次に目を開けた時、彩乃はとても安心したように険しい顔を緩め、目付きに安堵の色がよみがえった。
「ニャンコ先生!」
視界いっぱいに広がる白。
それは本来の大きな獣の姿に戻ったニャンコ先生だった。