第15章「雲外鏡編」
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「……ふぁ~……眠い……」
時刻は夜中の3時過ぎ。
中学生は寝ていないとまずい時間はとうに過ぎている。
良太猫に名を返した後も宴会のような盛り上がりは続き、気付けばすっかりこんな時間になっていた。
「……そろそろ帰るか?」
「――そだね。家長さんも寝ちゃったし。」
「う~~ん、ねこさん……マタタビおいしいよぉ」
「うぃ~~っく、もっと……さけぇ……ムニャムニャ……」
「斑も寝てるけどな。」
「あれはもういつもの事だし。」
彩乃とリクオはテーブルに突っ伏しているカナと、長椅子に大の字になって寝ているニャンコ先生を見て呆れたように(主にニャンコ先生に対して)小さくため息をついた。
もうそろそろ夜明けなので、本当に帰らないと朝が起きられなくなる。
リクオは気持ち良さそうに寝ているカナを背負う。
「……よっと」
「家長さんの家、わかる?」
「ああ、小せぇ頃よく行ってたしな……」
「へえ……あれ?2人って幼馴染みなの?」
「ああ、言ってなかったか?」
「いや、初耳……」
そういえば、前に氷麗に見せてもらったリクオのアルバムに、カナらしき女の子がたくさん写っていたな……と、彩乃はふと思い出して納得した。
「彩乃はもう少しここで待ってろ。」
「え?どうして?」
「こんな時間に女一人で出歩くなんて危ねぇだろ。斑はこんなんで役に立たねーし。もうすぐここに迎えが来るから待ってろ。」
「……む、迎え?」
「あっ、いたいた。若~!」
彩乃がリクオの言う「迎え」の意味が解らずに不思議そうに首を傾げると、後ろから誰かがリクオを呼んだ。
振り返ると、そこには何故か首無がいた。
「いいタイミングで来たな、首無。」
「いきなり迎えに来いだなんて電話されて、びっくりしましたよ。」
「ワリィな」
「いえ。……じゃあ行こうか彩乃。」
「……へ?……何処に?」
「俺ん家に決まってんだろ。」
「えっ!?いやいや何で!?帰るよ!」
「何処にだよ?」
「……え?」
「何処に帰る気だよ。自分家には帰らないんだろ?」
「……何で……」
「――お前、ここに来る前に電話してただろ?」
「――え?……ああ……もしかして聞いてた?
遅くなると思ったから、藤原さんたちには『今日は友達の家で泊まります』って伝えたんだけど……」
「その『友達』ってのが誰かは言ってなかったよな。彩乃の性格上こんな時間に誰かの家に泊まるなんて非常識なことはしねぇだろうし、藤原さんたちにああ言った手前、朝帰りなんてしたら心配されるから帰るつもりもないだろうしな。」
「うっ」
「……まさか、どっかで野宿するつもりだったなんて言わねーよな?」
「……えっと……」
「……何で目ぇ逸らす。図星だろ?」
ジロリと目を細めて疑うような視線を向けられ、彩乃はリクオから目を逸らす。
……まさか、そのつもりだったなんて、言えない。
図星を指され、彩乃はダラダラと冷や汗を垂れ流して焦っていると、首無が彩乃の肩を叩いた。
「……まっ、そんなことさせられないから。だから若は俺に君を奴良組に連れていくように頼んだんだ。」
「え、でも……そんな迷惑……」
「元々俺が彩乃を連れ出したんだ。それに……野宿されるより、そっちの方がずっといい。」
「うっ……わかった。ありがとう。」
「ん」
「じゃあ行こうか。」
リクオにお礼を言うと、彼は小さく声を漏らして返事を返してくれた。
それからカナを連れて店を出て行った。
それを見送った後、首無は微笑んで声を掛けてくれたので、彩乃はコクリと頷いた。
それから彩乃は近くに待機させられていた朧車に乗って奴良組に向かうのだった。
******
――翌朝――
「……僕はなんてことを……」
「り、リクオくん。」
翌朝、彩乃は奴良組に泊めてもらった後、そのままリクオたちと登校した。
(氷麗は何故かリクオから距離を置き、少し離れた所からついてきている)
昨日の夜の自分がカナにしたことを思い出して、昼のリクオはかなり落ち込んでいた。
「カナちゃんは妖怪が嫌いなのにー!どんな嫌がらせしてんだ僕はーー!!」
「お、落ち着いてリクオくん!それにあれは多分嫌がらせとかじゃなくて……」
「おはよう。」
「カナちゃん!?」
「家長さん!?」
突然背後から声を掛けてきたのはカナだった。
昨日あんなことがあったのに、元気そうな彼女に彩乃は少しホッとした。
「夏目先輩、あなたに訊きたいことがあるんです。」
「へ?……わ、私?」
「……先輩って……あの人と……」
「え……(何!?何を言うつもりなの、家長さん!?」
妙に真剣な表情で話し出すカナの謎の気迫に、彩乃は何を訊かれるのか緊張してしまい、ドキドキと心臓が早く脈打ち、妙な緊張感が漂った。
隣にいるリクオも同じようで、2人して面白い顔になっている。
そんな2人の気持ちなど知らないカナは、突然彩乃の右手を取ると、ぎゅっと力強く両手で包み込むように握り締めた。
「お友達……なんですか!?」
「…………へ?」
「……え?」
予想外のカナの言葉に思わずきょとりと目を丸くして間抜けな声を出してしまう彩乃とリクオ。
そんな2人の戸惑いなど気付かないカナは、一人で勝手に話し出す。
「あ、あの人とは……よく会うんですか?」
「え……」
「はっ!も、もしかして……つ、付き合ってたり!?」
「えっ!?」
「な……ないない!!それは絶対にないから!!」
「…………(そ、そんな力いっぱい否定しなくても……)」
カナの言葉に彩乃は有り得ないと力いっぱい首を振って否定すると、それを見ていたリクオはショックを受ける。
あまりにも全力で否定するものだから、リクオは悲しくなると同時にちょっぴり泣きたくなった。
だが、そんなリクオとは真逆に、彩乃の言葉を聞いてカナはパアッと顔を輝かせた。
「ほ……本当ですか!?」
「え……う、うん。あの人って……若様のことでしょ?私と彼は友人であって、そういう関係じゃないし……今後も絶対に有り得ないよ。」
「……っ(また二度も有り得ないとか言われた。)」
リクオはそろそろ本気で泣きそうである。
彩乃の言葉にカナはホッと安堵の息をつくと、嬉しそうに笑顔を浮かべた。
「そっか……ふふ、良かった!」
「……??(あ、あれ?家長さんって、人間のリクオくんが好きなんじゃないの?でもこの反応……あれ??)」
彩乃はカナは人間のリクオが好きだと思っている為、妖怪の姿のリクオのことを気にかけるカナを不思議そうに見る。
カナは昼のリクオと夜のリクオが同一人物だなんて知らないし、別人だと思っている筈だ。
なのに、何でどっちも気にかけてるんだろう??
まさかカナが昼のリクオと夜のリクオ。
どちらのリクオからも無意識に面影を感じていて、本人ですら気付かない違和感のせいで気になっているのだとは、カナ本人ですらまだ気づいていなかった。
「でも……何で?」
「えっ!?えっと……な、何でもないです!じゃあ!!」
「えっ、家長さん!?……行っちゃった……」
「……」
「……本当にどうしたのかな、家長さん。……リクオくんはどう思う?」
「……」
「……リクオくん?」
「……」
「あ、あれ?リクオく~ん?」
「……」
何度声をかけても、目の前で手をひらひらと動かしても、リクオは微動だにせず、まるで石化でもしたかの様に固まっていた。
「……うう、リクオ様……」
悲壮感を全力で漂わせ、目から涙をポロリと溢したのは、それを見守っていた氷麗の方であった。
氷麗は意中の女性(夏目)からの無自覚な言葉にダメージを受けて落ち込んでいる主の心情を察して、心から涙を流すのだった。
時刻は夜中の3時過ぎ。
中学生は寝ていないとまずい時間はとうに過ぎている。
良太猫に名を返した後も宴会のような盛り上がりは続き、気付けばすっかりこんな時間になっていた。
「……そろそろ帰るか?」
「――そだね。家長さんも寝ちゃったし。」
「う~~ん、ねこさん……マタタビおいしいよぉ」
「うぃ~~っく、もっと……さけぇ……ムニャムニャ……」
「斑も寝てるけどな。」
「あれはもういつもの事だし。」
彩乃とリクオはテーブルに突っ伏しているカナと、長椅子に大の字になって寝ているニャンコ先生を見て呆れたように(主にニャンコ先生に対して)小さくため息をついた。
もうそろそろ夜明けなので、本当に帰らないと朝が起きられなくなる。
リクオは気持ち良さそうに寝ているカナを背負う。
「……よっと」
「家長さんの家、わかる?」
「ああ、小せぇ頃よく行ってたしな……」
「へえ……あれ?2人って幼馴染みなの?」
「ああ、言ってなかったか?」
「いや、初耳……」
そういえば、前に氷麗に見せてもらったリクオのアルバムに、カナらしき女の子がたくさん写っていたな……と、彩乃はふと思い出して納得した。
「彩乃はもう少しここで待ってろ。」
「え?どうして?」
「こんな時間に女一人で出歩くなんて危ねぇだろ。斑はこんなんで役に立たねーし。もうすぐここに迎えが来るから待ってろ。」
「……む、迎え?」
「あっ、いたいた。若~!」
彩乃がリクオの言う「迎え」の意味が解らずに不思議そうに首を傾げると、後ろから誰かがリクオを呼んだ。
振り返ると、そこには何故か首無がいた。
「いいタイミングで来たな、首無。」
「いきなり迎えに来いだなんて電話されて、びっくりしましたよ。」
「ワリィな」
「いえ。……じゃあ行こうか彩乃。」
「……へ?……何処に?」
「俺ん家に決まってんだろ。」
「えっ!?いやいや何で!?帰るよ!」
「何処にだよ?」
「……え?」
「何処に帰る気だよ。自分家には帰らないんだろ?」
「……何で……」
「――お前、ここに来る前に電話してただろ?」
「――え?……ああ……もしかして聞いてた?
遅くなると思ったから、藤原さんたちには『今日は友達の家で泊まります』って伝えたんだけど……」
「その『友達』ってのが誰かは言ってなかったよな。彩乃の性格上こんな時間に誰かの家に泊まるなんて非常識なことはしねぇだろうし、藤原さんたちにああ言った手前、朝帰りなんてしたら心配されるから帰るつもりもないだろうしな。」
「うっ」
「……まさか、どっかで野宿するつもりだったなんて言わねーよな?」
「……えっと……」
「……何で目ぇ逸らす。図星だろ?」
ジロリと目を細めて疑うような視線を向けられ、彩乃はリクオから目を逸らす。
……まさか、そのつもりだったなんて、言えない。
図星を指され、彩乃はダラダラと冷や汗を垂れ流して焦っていると、首無が彩乃の肩を叩いた。
「……まっ、そんなことさせられないから。だから若は俺に君を奴良組に連れていくように頼んだんだ。」
「え、でも……そんな迷惑……」
「元々俺が彩乃を連れ出したんだ。それに……野宿されるより、そっちの方がずっといい。」
「うっ……わかった。ありがとう。」
「ん」
「じゃあ行こうか。」
リクオにお礼を言うと、彼は小さく声を漏らして返事を返してくれた。
それからカナを連れて店を出て行った。
それを見送った後、首無は微笑んで声を掛けてくれたので、彩乃はコクリと頷いた。
それから彩乃は近くに待機させられていた朧車に乗って奴良組に向かうのだった。
******
――翌朝――
「……僕はなんてことを……」
「り、リクオくん。」
翌朝、彩乃は奴良組に泊めてもらった後、そのままリクオたちと登校した。
(氷麗は何故かリクオから距離を置き、少し離れた所からついてきている)
昨日の夜の自分がカナにしたことを思い出して、昼のリクオはかなり落ち込んでいた。
「カナちゃんは妖怪が嫌いなのにー!どんな嫌がらせしてんだ僕はーー!!」
「お、落ち着いてリクオくん!それにあれは多分嫌がらせとかじゃなくて……」
「おはよう。」
「カナちゃん!?」
「家長さん!?」
突然背後から声を掛けてきたのはカナだった。
昨日あんなことがあったのに、元気そうな彼女に彩乃は少しホッとした。
「夏目先輩、あなたに訊きたいことがあるんです。」
「へ?……わ、私?」
「……先輩って……あの人と……」
「え……(何!?何を言うつもりなの、家長さん!?」
妙に真剣な表情で話し出すカナの謎の気迫に、彩乃は何を訊かれるのか緊張してしまい、ドキドキと心臓が早く脈打ち、妙な緊張感が漂った。
隣にいるリクオも同じようで、2人して面白い顔になっている。
そんな2人の気持ちなど知らないカナは、突然彩乃の右手を取ると、ぎゅっと力強く両手で包み込むように握り締めた。
「お友達……なんですか!?」
「…………へ?」
「……え?」
予想外のカナの言葉に思わずきょとりと目を丸くして間抜けな声を出してしまう彩乃とリクオ。
そんな2人の戸惑いなど気付かないカナは、一人で勝手に話し出す。
「あ、あの人とは……よく会うんですか?」
「え……」
「はっ!も、もしかして……つ、付き合ってたり!?」
「えっ!?」
「な……ないない!!それは絶対にないから!!」
「…………(そ、そんな力いっぱい否定しなくても……)」
カナの言葉に彩乃は有り得ないと力いっぱい首を振って否定すると、それを見ていたリクオはショックを受ける。
あまりにも全力で否定するものだから、リクオは悲しくなると同時にちょっぴり泣きたくなった。
だが、そんなリクオとは真逆に、彩乃の言葉を聞いてカナはパアッと顔を輝かせた。
「ほ……本当ですか!?」
「え……う、うん。あの人って……若様のことでしょ?私と彼は友人であって、そういう関係じゃないし……今後も絶対に有り得ないよ。」
「……っ(また二度も有り得ないとか言われた。)」
リクオはそろそろ本気で泣きそうである。
彩乃の言葉にカナはホッと安堵の息をつくと、嬉しそうに笑顔を浮かべた。
「そっか……ふふ、良かった!」
「……??(あ、あれ?家長さんって、人間のリクオくんが好きなんじゃないの?でもこの反応……あれ??)」
彩乃はカナは人間のリクオが好きだと思っている為、妖怪の姿のリクオのことを気にかけるカナを不思議そうに見る。
カナは昼のリクオと夜のリクオが同一人物だなんて知らないし、別人だと思っている筈だ。
なのに、何でどっちも気にかけてるんだろう??
まさかカナが昼のリクオと夜のリクオ。
どちらのリクオからも無意識に面影を感じていて、本人ですら気付かない違和感のせいで気になっているのだとは、カナ本人ですらまだ気づいていなかった。
「でも……何で?」
「えっ!?えっと……な、何でもないです!じゃあ!!」
「えっ、家長さん!?……行っちゃった……」
「……」
「……本当にどうしたのかな、家長さん。……リクオくんはどう思う?」
「……」
「……リクオくん?」
「……」
「あ、あれ?リクオく~ん?」
「……」
何度声をかけても、目の前で手をひらひらと動かしても、リクオは微動だにせず、まるで石化でもしたかの様に固まっていた。
「……うう、リクオ様……」
悲壮感を全力で漂わせ、目から涙をポロリと溢したのは、それを見守っていた氷麗の方であった。
氷麗は意中の女性(夏目)からの無自覚な言葉にダメージを受けて落ち込んでいる主の心情を察して、心から涙を流すのだった。