バーベキューでお腹を満たした彩乃達は、夜の最後のイベントであるキャンプファイヤーを楽しんでいた。
昼間のうちに積み上げておいた薪に炎を点火し、ゴウゴウと唸りを上げて勢いよく燃え上がる炎を眺めながら、皆が最後のイベントの為に炎を囲んでいた。

「皆さん、全員で輪になりましたね？それでは曲を流したら踊り始めてください。」

先生の言葉を合図に、軽快な音楽が流れ始める。
フォークダンスでは定番の曲、オクラホマミキサーだ。
彩乃達は曲が流れ始めると、今日まで練習してきた通りに男女で手を取り合って踊り始めた。

「あわわ、夏目さんだぁ！！」
「よろしく西村くん。」

彩乃が最初に踊ったのは西村だった。 
何故か彩乃の手を取るのを恥ずかしそうに躊躇い、さっきから顔を赤くしたり、妙にそわそわしたりと落ち着きがない。
そんなことをしているうちに次の番がきて、彩乃は次の相手へと向き合う。

「よろしく北本くん。」
「こちらこそよろしく、夏目さん。」

北本はいつも通り落ち着いていて、二人は難なくダンスを終えることができた。
そんなこんなで何人かと踊っているうちに、曲もクライマックスを向かえる。

「夏目か……」
「田沼くん」

最後のパートナーとなったのは彩乃のよく知る友人田沼だった。
二人は向かい合うと、少し照れくさそうに手を取り合って踊り始めた。

「――なんか、こういうのって少し照れるな。」
「ふふ、そうだね。」

慣れないダンスに二人は少し恥ずかしそうに笑い合いながら軽やかに踊る。
やがて曲は終わり、ダンスの流れも止まった。

「……終わったな。」
「――うん。楽しかったね。」

彩乃と田沼は微笑み合うと、手を放した。
フォークダンスの終わりはキャンプファイヤーも終わりだということ。
彩乃は皆と過ごした時間が楽しかっただけに、少しだけ残念な気持ちになったのだった。

(――色々あったけど、楽しかったな……林間学校……)

明日はいよいよ関東に帰る日だ。 
彩乃の林間学校の夜は、もう少しだけ続く。