第13章「林間学校編」
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彩乃が傷ついたイタクを連れてきたのは現在彩乃が居候している家だった。
獣医に診てもらう為には子供の彩乃ではお金がないし、仕方なく居候先のおばさんに助けを求めたのであった。
しかし――
「捨ててきなさい!」
「でも、おばさん……」
「まったく、そんな血まみれになって、その鼬はもう助からないわ。だからどっかに捨ててきなさい。お金だってばかにならないのよ!」
「……でも……」
「捨ててくるまで家には入れないからね!」
ピシャン!
無情にも目の前で扉は閉められ、彩乃は暫くの間呆然と立ち尽くしていた。
しかし、このままここにいても腕の中で確実に弱っている命は助からない。
彩乃はどうにかしなければと必死に頭を働かせた。
だけど、どんなに考えを巡らせても、たかだか10歳の彩乃に出来ることなんて何もなかった。
大人に頼る以外に何も思い付かなかった彩乃は、頼りにしようとしていたおばさんに手を振り払われてしまっては、もうどうすることも出来なかったのだ。
「――ごめんねイタチさん。」
彩乃はもう誰にも頼ることができないと悟ると、何処かへ向かって歩き出した。
それをイタクはぼんやりとした頭で考える。
(……何処に向かってるんだ?まあどうせ、俺を捨てに行く気なんだろうな。所詮人間なんて自分が一番大事だ。)
イタクは人間が嫌いだ。
弱いくせに傲慢で自分勝手で、その上たかだか80年程度しか生きられないくせに妖怪に楯突こうとするから面倒だ。
イタクがそんなことを思っていると、彩乃は小さな神社の中に入っていった。
誰もいない小さな稲荷神社の中に入ると、掃除が行き届いていないのかかなり埃っぽい臭いがした。
彩乃は神社のお賽銭箱の置かれた階段に座ると、そっとイタクの体を床に置いた。
「……イタチさん……ごめんね。」
彩乃はそっとイタクの頭を撫でると、小さな声で謝った。
「ごめんね。ごめんね。……何もできなくて、ごめんね……」
「……」
何度も何度も謝りながら、彩乃は泣いていた。
顔をくしゃりと歪めて、ポロポロと止めどなく溢れてくる涙を拭うこともせずにただイタクの体を撫で続けた。
やがて彩乃は泣き疲れたのかそのまま寝てしまい、気付けば夜になっていた。
夜になったことでイタクの妖力は増し、いつの間にかイタクは鼬の姿から少年の姿へと戻っていた。
「……馬鹿な奴……」
ちっぽけな鼬一匹なんて放っておけばいいのに、相手が妖怪とも知れないで鼬一匹の為に必死になって、死にかけた命のために涙を流した。
途中で見捨てて捨て置くことだってできたのに、それをしないで最後まで側にいてくれた。
イタクは人間は嫌いだが、この少女のことだけは放っておけなくなっていた。
だって、こんなにも心が温かいのだから……
この少女が手当てをしてくれなければ、きっとイタクは夜まで保つことはできなかっただろう。
イタクはこの小さな命に救われたのだ。
「……ありがとうな……」
イタクはぽつりとそう言うと、眠る彩乃を起こさないようにそっと横抱きした。
そして、二人は月明かりの下から姿を消した。
******
「彩乃ちゃーん!もう怒らないから出てきなさーい!」
「彩乃ちゃーん!!」
イタクが彩乃を連れて先程の家に戻ると、中年の男女が誰かを探していた。
(……こいつを探しているのか?)
先程少女を家から追い出した女も、今は必死になって誰かを探している。
きっと、「彩乃」というのはこの少女の名前で、暗くなったので流石に心配して探し始めたのだろう。
「――連れてきて正解だったな。」
イタクは彩乃をそっと家の近くの塀の壁に寄りかからせるように座らせると、優しく彩乃の頭を撫でてやった。
きっと、ここに置いておけばすぐにあの二人が見つけるだろう。
「……じゃあな、彩乃。」
イタクはそっと彩乃の頭を一撫ですると、今度こそ本当に闇の中へと姿を消したのであった。
獣医に診てもらう為には子供の彩乃ではお金がないし、仕方なく居候先のおばさんに助けを求めたのであった。
しかし――
「捨ててきなさい!」
「でも、おばさん……」
「まったく、そんな血まみれになって、その鼬はもう助からないわ。だからどっかに捨ててきなさい。お金だってばかにならないのよ!」
「……でも……」
「捨ててくるまで家には入れないからね!」
ピシャン!
無情にも目の前で扉は閉められ、彩乃は暫くの間呆然と立ち尽くしていた。
しかし、このままここにいても腕の中で確実に弱っている命は助からない。
彩乃はどうにかしなければと必死に頭を働かせた。
だけど、どんなに考えを巡らせても、たかだか10歳の彩乃に出来ることなんて何もなかった。
大人に頼る以外に何も思い付かなかった彩乃は、頼りにしようとしていたおばさんに手を振り払われてしまっては、もうどうすることも出来なかったのだ。
「――ごめんねイタチさん。」
彩乃はもう誰にも頼ることができないと悟ると、何処かへ向かって歩き出した。
それをイタクはぼんやりとした頭で考える。
(……何処に向かってるんだ?まあどうせ、俺を捨てに行く気なんだろうな。所詮人間なんて自分が一番大事だ。)
イタクは人間が嫌いだ。
弱いくせに傲慢で自分勝手で、その上たかだか80年程度しか生きられないくせに妖怪に楯突こうとするから面倒だ。
イタクがそんなことを思っていると、彩乃は小さな神社の中に入っていった。
誰もいない小さな稲荷神社の中に入ると、掃除が行き届いていないのかかなり埃っぽい臭いがした。
彩乃は神社のお賽銭箱の置かれた階段に座ると、そっとイタクの体を床に置いた。
「……イタチさん……ごめんね。」
彩乃はそっとイタクの頭を撫でると、小さな声で謝った。
「ごめんね。ごめんね。……何もできなくて、ごめんね……」
「……」
何度も何度も謝りながら、彩乃は泣いていた。
顔をくしゃりと歪めて、ポロポロと止めどなく溢れてくる涙を拭うこともせずにただイタクの体を撫で続けた。
やがて彩乃は泣き疲れたのかそのまま寝てしまい、気付けば夜になっていた。
夜になったことでイタクの妖力は増し、いつの間にかイタクは鼬の姿から少年の姿へと戻っていた。
「……馬鹿な奴……」
ちっぽけな鼬一匹なんて放っておけばいいのに、相手が妖怪とも知れないで鼬一匹の為に必死になって、死にかけた命のために涙を流した。
途中で見捨てて捨て置くことだってできたのに、それをしないで最後まで側にいてくれた。
イタクは人間は嫌いだが、この少女のことだけは放っておけなくなっていた。
だって、こんなにも心が温かいのだから……
この少女が手当てをしてくれなければ、きっとイタクは夜まで保つことはできなかっただろう。
イタクはこの小さな命に救われたのだ。
「……ありがとうな……」
イタクはぽつりとそう言うと、眠る彩乃を起こさないようにそっと横抱きした。
そして、二人は月明かりの下から姿を消した。
******
「彩乃ちゃーん!もう怒らないから出てきなさーい!」
「彩乃ちゃーん!!」
イタクが彩乃を連れて先程の家に戻ると、中年の男女が誰かを探していた。
(……こいつを探しているのか?)
先程少女を家から追い出した女も、今は必死になって誰かを探している。
きっと、「彩乃」というのはこの少女の名前で、暗くなったので流石に心配して探し始めたのだろう。
「――連れてきて正解だったな。」
イタクは彩乃をそっと家の近くの塀の壁に寄りかからせるように座らせると、優しく彩乃の頭を撫でてやった。
きっと、ここに置いておけばすぐにあの二人が見つけるだろう。
「……じゃあな、彩乃。」
イタクはそっと彩乃の頭を一撫ですると、今度こそ本当に闇の中へと姿を消したのであった。