第13章「林間学校編」
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6月になり、制服も衣替えを始める。
梅雨入りするじめじめとした時期だが、彩乃達は今日、林間学校で遠野に来ていた。
「えー、では皆それぞれのポイント場所に行ってスタンプを貰ってくるように。一番最初に到着した班には賞品が出るから頑張れよー!」
「「はーい!」」
(……スタンプラリーか……)
担任の先生からスタンプラリーの説明を受けたクラスメイト達は元気よく返事をする。
遠野にある宿泊施設に到着して早々、初日の予定であったスタンプラリーは始まった。
彩乃は多軌や田沼、北本、西村と同じ班になり、リーダーを北本とした班で遠野を回ることになった。
「今日は晴れてよかったなぁ~。」
「だなぁ~、スタンプラリーで雨とかダリィし。」
北本と西村がそんな話をしているのを彩乃は後ろをついて歩きながらぼんやりと聞いていた。
(……遠野かあ~……昔、小学四年生位の頃にちょっとだけ住んでたなぁ。おじさんとおばさんは確かこの近くに住んでるんだっけ……会わないといいけど……)
正直言って、あの頃のことはあまり思い出したくない。
お世話になった人達には悪いが、あまり遠野にはいい思い出がなかった。
「夏目、どうした?顔色悪いぞ?」
「体調良くないの?」
「ううん、大丈夫だよ。ありがとう二人共。」
ぼんやりとしていた彩乃を心配そうに声をかけてきた田沼と多軌に、彩乃は慌てて笑顔を作る。
「夏目さん大丈夫?具合悪くなったらすぐに言ってよ?」
「あんまり無理するなよ?」
「うん。ありがとう西村君、北本君。」
(皆本当に優しいなぁ~……)
自分には勿体無いくらいの優しい友人達に恵まれて、彩乃は自然と笑顔になる。
「――さて、最初のポイントはどこから回る?」
「こっから一番近い所でいいんじゃね?」
「そうね。その方が効率もいいし。」
「じゃあ。そこからはこのルートで行かないか?」
「うん、それなら短時間で回れそうだね。」
「――人の子か……」
「!?」
彩乃達がどうやってルートを回ろうかと話し合っていると、突然彩乃は背筋にぞくりと寒気を感じた。
不意に自分達以外の者の声がして、彩乃が振り返るそこには大きな顔の一つ目の妖怪が立っていた。
「っ!なっ!?」
「?、どうしたの彩乃ちゃん?」
(何でこんな時に妖が――……!!)
彩乃が何もない場所を見て驚いているのを不思議そうに首を傾げる多軌。
まさか西村達がいる前で妖怪の存在を田沼と多軌に教えるわけにもいかず、彩乃は焦った。
「人の子……旨そう……オレが見えるのか?」
「……っ!」
そうこうしている間に妖怪はこちらに近付いてくる。
彩乃は皆を巻き込む訳にはいかないと、その場から離れることにした。
「――ごめん、やっぱり体調が良くないから先に宿泊施設に戻ってるね!」
「えっ!?夏目!?」
「彩乃ちゃん!?」
「夏目さん!?」
(――ごめん皆!)
彩乃は踵を返すと一目散に駆け出した。
すると一つ目の妖怪は彩乃にだけ興味があるのか、彩乃の狙い通り後を追ってきた。
(そうだ。こっちに来い!皆から離れなきゃ!!)
「ま~て~人の子~~!!」
「こっちに来なさい!!そう簡単には捕まらないんだから!!」
彩乃は必死に逃げた。
後ろから迫ってくる大きな一つ目の妖怪をなんとかまこうとがむしゃらに走った。
(……っ、しつこい。近くに神社があればうまくまけるのに……!!)
なんとかして逃げ切ろうと神社を探すが、そう簡単には見つからなかった。
――ぶっちん
「――えっ!?」
彩乃ががむしゃらに走っていると、突然目の前が一瞬暗くなった。
何か糸のようなものが切れる音がしたかと思えば、急に辺りの景色ががらりと変わったのだ。
自分はさっきまで道路を走っていた筈なのに、いつの間にか森にいた。
あまりにも突然のことに呆然とする彩乃。
いつの間にか後ろを追い掛けていた一つ目の妖怪も消えている。
「……どうなってるの……」
突然の出来事に彩乃はただその場に立ち尽くしてしまうのだった。
梅雨入りするじめじめとした時期だが、彩乃達は今日、林間学校で遠野に来ていた。
「えー、では皆それぞれのポイント場所に行ってスタンプを貰ってくるように。一番最初に到着した班には賞品が出るから頑張れよー!」
「「はーい!」」
(……スタンプラリーか……)
担任の先生からスタンプラリーの説明を受けたクラスメイト達は元気よく返事をする。
遠野にある宿泊施設に到着して早々、初日の予定であったスタンプラリーは始まった。
彩乃は多軌や田沼、北本、西村と同じ班になり、リーダーを北本とした班で遠野を回ることになった。
「今日は晴れてよかったなぁ~。」
「だなぁ~、スタンプラリーで雨とかダリィし。」
北本と西村がそんな話をしているのを彩乃は後ろをついて歩きながらぼんやりと聞いていた。
(……遠野かあ~……昔、小学四年生位の頃にちょっとだけ住んでたなぁ。おじさんとおばさんは確かこの近くに住んでるんだっけ……会わないといいけど……)
正直言って、あの頃のことはあまり思い出したくない。
お世話になった人達には悪いが、あまり遠野にはいい思い出がなかった。
「夏目、どうした?顔色悪いぞ?」
「体調良くないの?」
「ううん、大丈夫だよ。ありがとう二人共。」
ぼんやりとしていた彩乃を心配そうに声をかけてきた田沼と多軌に、彩乃は慌てて笑顔を作る。
「夏目さん大丈夫?具合悪くなったらすぐに言ってよ?」
「あんまり無理するなよ?」
「うん。ありがとう西村君、北本君。」
(皆本当に優しいなぁ~……)
自分には勿体無いくらいの優しい友人達に恵まれて、彩乃は自然と笑顔になる。
「――さて、最初のポイントはどこから回る?」
「こっから一番近い所でいいんじゃね?」
「そうね。その方が効率もいいし。」
「じゃあ。そこからはこのルートで行かないか?」
「うん、それなら短時間で回れそうだね。」
「――人の子か……」
「!?」
彩乃達がどうやってルートを回ろうかと話し合っていると、突然彩乃は背筋にぞくりと寒気を感じた。
不意に自分達以外の者の声がして、彩乃が振り返るそこには大きな顔の一つ目の妖怪が立っていた。
「っ!なっ!?」
「?、どうしたの彩乃ちゃん?」
(何でこんな時に妖が――……!!)
彩乃が何もない場所を見て驚いているのを不思議そうに首を傾げる多軌。
まさか西村達がいる前で妖怪の存在を田沼と多軌に教えるわけにもいかず、彩乃は焦った。
「人の子……旨そう……オレが見えるのか?」
「……っ!」
そうこうしている間に妖怪はこちらに近付いてくる。
彩乃は皆を巻き込む訳にはいかないと、その場から離れることにした。
「――ごめん、やっぱり体調が良くないから先に宿泊施設に戻ってるね!」
「えっ!?夏目!?」
「彩乃ちゃん!?」
「夏目さん!?」
(――ごめん皆!)
彩乃は踵を返すと一目散に駆け出した。
すると一つ目の妖怪は彩乃にだけ興味があるのか、彩乃の狙い通り後を追ってきた。
(そうだ。こっちに来い!皆から離れなきゃ!!)
「ま~て~人の子~~!!」
「こっちに来なさい!!そう簡単には捕まらないんだから!!」
彩乃は必死に逃げた。
後ろから迫ってくる大きな一つ目の妖怪をなんとかまこうとがむしゃらに走った。
(……っ、しつこい。近くに神社があればうまくまけるのに……!!)
なんとかして逃げ切ろうと神社を探すが、そう簡単には見つからなかった。
――ぶっちん
「――えっ!?」
彩乃ががむしゃらに走っていると、突然目の前が一瞬暗くなった。
何か糸のようなものが切れる音がしたかと思えば、急に辺りの景色ががらりと変わったのだ。
自分はさっきまで道路を走っていた筈なのに、いつの間にか森にいた。
あまりにも突然のことに呆然とする彩乃。
いつの間にか後ろを追い掛けていた一つ目の妖怪も消えている。
「……どうなってるの……」
突然の出来事に彩乃はただその場に立ち尽くしてしまうのだった。