第12章「月分祭編」
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不月神の伸ばした手が彩乃に触れようとした瞬間、二人の間に一陣の風が吹いた。
ゴオッ!
「!、先生!」
彩乃を守るように目の前に現れたのは本来の姿に戻った斑だった。
斑は彩乃を背後に庇うように前に出ると、不月神に向かって低く唸る。
『流石に私も神に牙を剥けば祟られかねんからな……』
そう言っていたニャンコ先生の言葉が脳裏をよぎる。
「……っ、先生、駄目!」
「獣、不敬である。」
「ニャンコ先生!!」
神に牙を剥けば祟られると言っていた先生が、自分の為に不月神に牙を剥けようとしている。
それを感じ取った彩乃はなんとか先生を鎮めようと必死に名を呼んだ。
その時、突然彩乃の肩を誰かが後ろに引っ張った。
「!、名取さん!」
「彩乃、これを。彩乃ならこの封印が解けるだろうと先生が……」
「これは……」
そう言って名取が彩乃に手渡したのは拳ほどの小さな石ころだった。
だけどそれに触れた瞬間、石から確かに生きている者の鼓動を感じた。
(――石!!これに豊月神が……お願い、豊月神。目を覚まして――!)
ドクン、ドクン……
ピキッ
カッ!!!
彩乃は石を両手で握り締めて必死に石に語りかけた。
ありったけの霊力を石に流し込んで、どうか目覚めて欲しいと願った。
微かに石にヒビが入ると音がしたかと思えば、それは辺りを包み込む程目映い光を放って砕け散った。
「あっ……」
その瞬間、彩乃は気を失った。
――人?お祭りだ……
ああそうか……これは……豊月神の記憶……?
それとも夢かな……
彩乃の目の前には多くの人が集まり、楽しそうに皆笑い合っていた。
豊月神と不月神の姿に扮した人が戦い、それを周りの人達が応援している。
――思ったよりも人が少ない。小さな祭りだ……
ああ、でも――……なんて温かいんだろう……
彩乃が目の前に広がる祭りの光景に魅入っていると、いつの間にか隣には本物の豊月神が立っていた。
「世話をかけたな人の子よ。」
「……」
「何故、そんな顔をする。」
「――いえ。」
「――敏い子だ。そうだよ。私にはもう力が殆どない。あんな封印も解けぬ程だ。祭りに勝ったところで、山や森を守る力など……もうとっくに無くなっていたのだ。」
「ならばもう……祭りは終いか?」
「不月神……」
「……ああ、終いだ。」
「……そうか……」
豊月神の言葉に、不月神はどこか残念そうに呟くと、空を見上げた。
「ならばもう、我等はこの山を訪れる理由はない。――ここで朽ちるのも勝手だが……ともに行かぬか。」
「――参りましょう豊月様。」
「我等が、きっとお守り致します。参りましょう……」
不月神の言葉に賛同するように、白笠達が次々と豊月神の元に集まる。
「夏目様、ありがとうございました。」
世界が暗く包まれる瞬間、白笠達がそう言った気がした。
「――んっ」
「彩乃!良かった。気が付いたか!」
「名取さん、花開院さんも……」
「急に動くな。ゆっくり起き上がった方がいい。」
「豊月神達は……」
(光……?)
彩乃がぼんやりとした頭で起き上がると、視界の隅に小さな光が見えた。
「ああ、封印が解けた豊月神と駆け付けた白笠達が不月神や妖達の怒りを鎮めたのだ。」
「柊……」
「そしてこの祭りが最後であることと、この地を旅立つと告げて……ほら、見てみろ。」
「先生……わあっ!」
ニャンコ先生に言われて空を見上げると、そこには沢山の光が空へと昇り、何処かへと飛んで行くところだった。
「豊月神一行と、不月神一行の光だ。」
「――綺麗ですね。あれはどっちの神だろう」
沢山の光の中に、二つだけ先頭を切るように飛んで行く光がある。
「――何だか不思議……」
「うん?」
対立して見えていた二つの一行は、今は同じ色に光ながら遠い遠い同じ空へと消えていった。
ゴオッ!
「!、先生!」
彩乃を守るように目の前に現れたのは本来の姿に戻った斑だった。
斑は彩乃を背後に庇うように前に出ると、不月神に向かって低く唸る。
『流石に私も神に牙を剥けば祟られかねんからな……』
そう言っていたニャンコ先生の言葉が脳裏をよぎる。
「……っ、先生、駄目!」
「獣、不敬である。」
「ニャンコ先生!!」
神に牙を剥けば祟られると言っていた先生が、自分の為に不月神に牙を剥けようとしている。
それを感じ取った彩乃はなんとか先生を鎮めようと必死に名を呼んだ。
その時、突然彩乃の肩を誰かが後ろに引っ張った。
「!、名取さん!」
「彩乃、これを。彩乃ならこの封印が解けるだろうと先生が……」
「これは……」
そう言って名取が彩乃に手渡したのは拳ほどの小さな石ころだった。
だけどそれに触れた瞬間、石から確かに生きている者の鼓動を感じた。
(――石!!これに豊月神が……お願い、豊月神。目を覚まして――!)
ドクン、ドクン……
ピキッ
カッ!!!
彩乃は石を両手で握り締めて必死に石に語りかけた。
ありったけの霊力を石に流し込んで、どうか目覚めて欲しいと願った。
微かに石にヒビが入ると音がしたかと思えば、それは辺りを包み込む程目映い光を放って砕け散った。
「あっ……」
その瞬間、彩乃は気を失った。
――人?お祭りだ……
ああそうか……これは……豊月神の記憶……?
それとも夢かな……
彩乃の目の前には多くの人が集まり、楽しそうに皆笑い合っていた。
豊月神と不月神の姿に扮した人が戦い、それを周りの人達が応援している。
――思ったよりも人が少ない。小さな祭りだ……
ああ、でも――……なんて温かいんだろう……
彩乃が目の前に広がる祭りの光景に魅入っていると、いつの間にか隣には本物の豊月神が立っていた。
「世話をかけたな人の子よ。」
「……」
「何故、そんな顔をする。」
「――いえ。」
「――敏い子だ。そうだよ。私にはもう力が殆どない。あんな封印も解けぬ程だ。祭りに勝ったところで、山や森を守る力など……もうとっくに無くなっていたのだ。」
「ならばもう……祭りは終いか?」
「不月神……」
「……ああ、終いだ。」
「……そうか……」
豊月神の言葉に、不月神はどこか残念そうに呟くと、空を見上げた。
「ならばもう、我等はこの山を訪れる理由はない。――ここで朽ちるのも勝手だが……ともに行かぬか。」
「――参りましょう豊月様。」
「我等が、きっとお守り致します。参りましょう……」
不月神の言葉に賛同するように、白笠達が次々と豊月神の元に集まる。
「夏目様、ありがとうございました。」
世界が暗く包まれる瞬間、白笠達がそう言った気がした。
「――んっ」
「彩乃!良かった。気が付いたか!」
「名取さん、花開院さんも……」
「急に動くな。ゆっくり起き上がった方がいい。」
「豊月神達は……」
(光……?)
彩乃がぼんやりとした頭で起き上がると、視界の隅に小さな光が見えた。
「ああ、封印が解けた豊月神と駆け付けた白笠達が不月神や妖達の怒りを鎮めたのだ。」
「柊……」
「そしてこの祭りが最後であることと、この地を旅立つと告げて……ほら、見てみろ。」
「先生……わあっ!」
ニャンコ先生に言われて空を見上げると、そこには沢山の光が空へと昇り、何処かへと飛んで行くところだった。
「豊月神一行と、不月神一行の光だ。」
「――綺麗ですね。あれはどっちの神だろう」
沢山の光の中に、二つだけ先頭を切るように飛んで行く光がある。
「――何だか不思議……」
「うん?」
対立して見えていた二つの一行は、今は同じ色に光ながら遠い遠い同じ空へと消えていった。