第12章「月分祭編」
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「はあはあ」
彩乃は走った。
くたくたに疲れきった体に鞭打ってひたすら走り、途中で何度か足がもつれて転んだりもした。
そのせいで履いていた下駄は脱げ、彩乃は裸足になっても構わず走り続けた。
白笠達がせっかく綺麗に着飾ってくれた美しい着物はもう泥だらけで、ボロボロになりながらも彩乃は足を止めることはしなかった。
(――急げ、急げ……!)
一方その頃、会場の原っぱでは多くの妖達が集まり、神の到着を今か今かと待っていた。
「――さて、どちらが先にお着きになるか……」
「言い伝えでは不月神が勝てばこの山が枯れるのだろう?恐ろしきことだ。」
「むう……しかしきっと大丈夫だ。何と言っても今まで豊月神が負けたことはないのだからな。」
「――それはそうだが……」
「!、おい来たぞ!」
「来た!どっちだ……」
「――牡丹の冠……豊月神だ!」
「……やった……やったぞ!豊月様だ……!」
必死に走ってやって来た豊月神の姿に妖達は歓喜の声を上げる。
しかし、それはすぐに戸惑いへと変わり、妖達はざわつく。
泥だらけの着物に汚れた裸足。
荒い呼吸をしながら必死に走るその姿はとても神とは呼べぬものだった。
「……豊月様の様子が変だぞ。」
「ああ、ボロボロではないか……」
「あれではまるで……」
戸惑う妖達の視線を受けながら、彩乃は会場の中央まで走ると足を止めて呼吸を整えた。
「この豊月が先に戻ったぞ!」
「では、獣を。」
「ここに!」
彩乃は審判の妖の前に獣を封印した壺を見せると、蓋を開けて獣を解き放った。
しゅるり
「グォォォオ!!」
「おお、まさしく!勝者、豊月神!!」
ごろーんごろーん
豊月神の勝利を告げると、会場にいた多くの妖達が歓喜の声を上げて喜んだ。
祭りの終了を知らせる大鈴の音を聞いて、黒衣達はがっくりと膝を折り、白笠達は安堵の息を漏らした。
「――やった。」
(やった。これで……)
彩乃が安堵の息をつくと、急に歓喜の声を上げて騒いでいた妖達がしんと黙り込んだ。
「あっ……不月神様……」
「!」
彩乃の側にはいつの間にか不月神がおり、じっと彩乃を見つめていた。
「……お前……豊月ではないな。」
「っ!」
ヒュッ!
「きゃっ!」
不月神は神力で風を操ると、彩乃の被っていた面を吹き飛ばした。
豊月神の面が外れ、彩乃の顔が露になる。
「……何だ……!?」
「……あれは……人の子?」
「何!?」
「人の子!?人の子が我々を騙していたのか!?」
「――豊月はどうした。気紛れに担ぎ上げ、放り出した上、よもやあれを祓ったのではなかろうな。」
「……」
「答えよ――!」
静かで淡々とした口調なのに、不月神からは確かに怒りの感情が伝わってきた。
威圧的な視線を受けながらも、彩乃は不月神から目を逸らさなかった。
黙り込んでしまった彩乃に不月がゆっくりと手を伸ばした。
彩乃は走った。
くたくたに疲れきった体に鞭打ってひたすら走り、途中で何度か足がもつれて転んだりもした。
そのせいで履いていた下駄は脱げ、彩乃は裸足になっても構わず走り続けた。
白笠達がせっかく綺麗に着飾ってくれた美しい着物はもう泥だらけで、ボロボロになりながらも彩乃は足を止めることはしなかった。
(――急げ、急げ……!)
一方その頃、会場の原っぱでは多くの妖達が集まり、神の到着を今か今かと待っていた。
「――さて、どちらが先にお着きになるか……」
「言い伝えでは不月神が勝てばこの山が枯れるのだろう?恐ろしきことだ。」
「むう……しかしきっと大丈夫だ。何と言っても今まで豊月神が負けたことはないのだからな。」
「――それはそうだが……」
「!、おい来たぞ!」
「来た!どっちだ……」
「――牡丹の冠……豊月神だ!」
「……やった……やったぞ!豊月様だ……!」
必死に走ってやって来た豊月神の姿に妖達は歓喜の声を上げる。
しかし、それはすぐに戸惑いへと変わり、妖達はざわつく。
泥だらけの着物に汚れた裸足。
荒い呼吸をしながら必死に走るその姿はとても神とは呼べぬものだった。
「……豊月様の様子が変だぞ。」
「ああ、ボロボロではないか……」
「あれではまるで……」
戸惑う妖達の視線を受けながら、彩乃は会場の中央まで走ると足を止めて呼吸を整えた。
「この豊月が先に戻ったぞ!」
「では、獣を。」
「ここに!」
彩乃は審判の妖の前に獣を封印した壺を見せると、蓋を開けて獣を解き放った。
しゅるり
「グォォォオ!!」
「おお、まさしく!勝者、豊月神!!」
ごろーんごろーん
豊月神の勝利を告げると、会場にいた多くの妖達が歓喜の声を上げて喜んだ。
祭りの終了を知らせる大鈴の音を聞いて、黒衣達はがっくりと膝を折り、白笠達は安堵の息を漏らした。
「――やった。」
(やった。これで……)
彩乃が安堵の息をつくと、急に歓喜の声を上げて騒いでいた妖達がしんと黙り込んだ。
「あっ……不月神様……」
「!」
彩乃の側にはいつの間にか不月神がおり、じっと彩乃を見つめていた。
「……お前……豊月ではないな。」
「っ!」
ヒュッ!
「きゃっ!」
不月神は神力で風を操ると、彩乃の被っていた面を吹き飛ばした。
豊月神の面が外れ、彩乃の顔が露になる。
「……何だ……!?」
「……あれは……人の子?」
「何!?」
「人の子!?人の子が我々を騙していたのか!?」
「――豊月はどうした。気紛れに担ぎ上げ、放り出した上、よもやあれを祓ったのではなかろうな。」
「……」
「答えよ――!」
静かで淡々とした口調なのに、不月神からは確かに怒りの感情が伝わってきた。
威圧的な視線を受けながらも、彩乃は不月神から目を逸らさなかった。
黙り込んでしまった彩乃に不月がゆっくりと手を伸ばした。