第9章「温泉旅行編」
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「……私はスミエと申します。この地にずっと住んでおりましたが、人間がやって来て邪魔だと言って私を壺に封じたのでございます。」
スミエと名乗った妖怪は、しくしくと涙を流しながら話す。
「人間は嫌いです。どうか名をお返しください。そうすればもう人里に未練はございません。名を返して頂いたらもうこの地より去り、山奥へと消えましょう。どうか……!!」
はらはらと涙を流しながら土下座をして必死に頼み込むスミエに、彩乃は同じ人間として胸が痛んだ。
スミエの言葉が本当なら、彼女はある日突然やって来た人間によって長く住んでいた土地を奪われただけでなく、狭く暗い壺の中に身勝手な理由で封じられてしまったことになる。
――可哀想だと思う。
同じ人間として申し訳ないとも。
けれど、人を守る為に彩乃はスミエをこの地から追い払わなければならなかった。
「……封印された事を恨んで、この旅館の人に迷惑を掛けたりするつもりはない?もしそうならあなたの名を呼んで出ていくように命じることもできる。」
「いいえ夏目様。お望みなら命令されずとも、もうこの館からは出ていきます。」
スミエの言葉に、彩乃はホッと安堵の息をつく。
どうやら友人帳の力で命令するという強行手段は使わなくて済みそうだ。
「……彩乃さん、その妖怪の言葉を信じてもいいのですか?」
「……うん、私は信じたい。リクオ君も先生もいいかな?」
尚も警戒する氷麗に、彩乃は困ったように苦笑する。
そして名を返してもいいかと皆に尋ねる彩乃。
「勝手にしろ。どうせ何を言ってもやるのだろう?」
「僕は、彩乃ちゃんが決めたことなら。」
「……私は反対です。」
「お願い、氷麗ちゃん。」
「……うう~、わかりました。万が一の時は私がリクオ様と彩乃さんを守ります!」
「うん、ありがとう。」
渋々といった氷麗に、彩乃は微笑む。
彩乃が友人帳を鞄から取り出すと、スミエは嬉しそうに表情を緩めた。
「長いこと名を縛ってしまってごめんね。スミエ、あなたに名を返します。」
パラパラパラ
ぱんっ!
「『スミエ』君へ名を返そう。受け取って」
ふっと息を吐いて名を返す彩乃。
まさかその瞬間を名取に見られてしまっていたなんて、彩乃達は気付くことができなかったのだった。
スミエと名乗った妖怪は、しくしくと涙を流しながら話す。
「人間は嫌いです。どうか名をお返しください。そうすればもう人里に未練はございません。名を返して頂いたらもうこの地より去り、山奥へと消えましょう。どうか……!!」
はらはらと涙を流しながら土下座をして必死に頼み込むスミエに、彩乃は同じ人間として胸が痛んだ。
スミエの言葉が本当なら、彼女はある日突然やって来た人間によって長く住んでいた土地を奪われただけでなく、狭く暗い壺の中に身勝手な理由で封じられてしまったことになる。
――可哀想だと思う。
同じ人間として申し訳ないとも。
けれど、人を守る為に彩乃はスミエをこの地から追い払わなければならなかった。
「……封印された事を恨んで、この旅館の人に迷惑を掛けたりするつもりはない?もしそうならあなたの名を呼んで出ていくように命じることもできる。」
「いいえ夏目様。お望みなら命令されずとも、もうこの館からは出ていきます。」
スミエの言葉に、彩乃はホッと安堵の息をつく。
どうやら友人帳の力で命令するという強行手段は使わなくて済みそうだ。
「……彩乃さん、その妖怪の言葉を信じてもいいのですか?」
「……うん、私は信じたい。リクオ君も先生もいいかな?」
尚も警戒する氷麗に、彩乃は困ったように苦笑する。
そして名を返してもいいかと皆に尋ねる彩乃。
「勝手にしろ。どうせ何を言ってもやるのだろう?」
「僕は、彩乃ちゃんが決めたことなら。」
「……私は反対です。」
「お願い、氷麗ちゃん。」
「……うう~、わかりました。万が一の時は私がリクオ様と彩乃さんを守ります!」
「うん、ありがとう。」
渋々といった氷麗に、彩乃は微笑む。
彩乃が友人帳を鞄から取り出すと、スミエは嬉しそうに表情を緩めた。
「長いこと名を縛ってしまってごめんね。スミエ、あなたに名を返します。」
パラパラパラ
ぱんっ!
「『スミエ』君へ名を返そう。受け取って」
ふっと息を吐いて名を返す彩乃。
まさかその瞬間を名取に見られてしまっていたなんて、彩乃達は気付くことができなかったのだった。