あなたのものと誓う
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今日も嵐くんと屋上で一緒にお昼ご飯を食べようって約束した。秋になると屋上の風が心地良くて、クラスが離れてしまった私達はそこで落ち合うことにしてるの。ちょっと遅れちゃったな。「腹減った」って言いながら倒れちゃってるかも。
嵐くんと自分の分のお弁当を抱えて、先を急いでいると…。
「嵐の嫁さん」
えっ?
前から歩いてくる知らない男の子に呼び止められた。
私のこと…だよね。
はば学の嫁にしたいナンバーワンって言われてると嵐くんから聞かされたことがあるんだけれど、いつからそんな称号がついてたんだろう。しかも、今は嵐くんのって固有名詞までついちゃって…。
やだ、勝手に顔が赤くなってくる。
「なあ、嵐の嫁さんって!あいつにさ、早めに漫画返せって言っといて。次回せって言って来た奴いるから」
「あ、うん。ごめんなさい」
何故か私が代わりに謝る。
「別に一昨日貸したばっかだから嵐が止めてるわけじゃないんだけど、よろしく!」
「ねぇ、不二山嫁」
次は何回か見たことある男の子から、B4サイズのコピー用紙を2枚渡された。
「これ、不二山に渡しておいて。授業中寝たから、ノートを纏めてコピーしといてって言われたんだけどさ。今ちょうどコピーしてきたから」
「あ、うん、ありがとう」
何故か私がお礼を言う。
「人のノート写すんだったら、コピーくらい自分でやれっての。当たり前のように指図されたから、ついやっちまったよ。人を顎で動かす才能はすげーよな」
「あ、ごめんなさいね」
何故か私がまた代わりに謝る。
「ま、別にいいけど。あいつ何気に世話やけるヤツだよな。頑張ってな、不二山嫁」
私は受け取ったコピー用紙を丁寧に谷折りして左手に持った。
今年はクラスが違うから私には頼んでこなくなったんだけれど、違う人が犠牲になってるわけね。去年までは私のノートを一生懸命写してたんだけれどなあ。コピーするという手抜きに退化しちゃって、しかも人にやらせる。ちょっと注意しなくちゃね。
でも、頼んだ相手が女の子じゃなくてホッとしている。
「不二山くんの奥さん、押忍!」
今度は嵐くんの私設応援団の男の子だ。
「これ、不二山くんに渡しておいて下さい」
パンと飲み物を渡された。
「これ…」
「買って来てって頼まれたので」
パシリに使ってるの?
「あ…、ごめんなさいね」
「いいんです!不二山くんに頼まれるなら喜んで。自分のをついで買いっす。あと、これも」
プリントを手渡された。
「これは…?」
「宿題です」
「ええっ、代わりにやったの」
「押忍!」
「押忍って…、やらなくていいよ。これは嵐くん本人にやらせて」
「困ったな…。でも、奥さんがそう言うならわかりました」
「私からもちゃんと言っておくから」
嵐くんったら…。
それにしても最近どうなってるの?
さっきから嫁だの奥さんだの。私達、付き合ってもいないのに…。なんだか恥ずかしいよ。
「嵐くん」
私が色んなものを抱えて屋上に上がってきたので、ちょっと驚いた顔してる。
「あれ、なんで美奈子が持ってんの」
「渡しておいてって頼まれたの」
「美奈子を使うとは…。俺に直接持って来いって言っとく」
「嵐くん、自分でやれる分はちゃんと自分でやってね。人に頼んでばっかりで…もう」
「全部自分からやるって言い出したから乗っかっただけだ」
反省する気ゼロだなーっ。
「そんなんより、今日の弁当何?」
「えっと、鶏そぼろと唐揚げと…」
話逸らされた。ああ、ここにも乗っかった人間が一人いるけれど…。
「お、うまそー!美奈子の弁当ってガチ美味いよな。おまえの弁当以外食いたくねぇ」
こんなに嬉しそうな顔してそんなこと言われたら、明日も作ってくるねって言っちゃうしかないでしょ。
二段重ねのお弁当を広げ、嵐くん専用お箸も手渡した。
「…あのね、私、嵐くんの嫁さんだの奥さんだのって言われてるんだけど」
「ふーん」
たいして気にもとめず、私の作った卵焼きを頬張り始めた。
「これって、どう思う」
「どうもこうも、別におかしくねーだろ」
「えっ?」
「俺だって、美奈子の旦那とか亭主っていわれる」
「ええっ!」
「そ、そんなこと言われて、あれ?って思わないの」
「別に。言いたい奴には勝手に言わせとけばいーんじゃねぇ」
「あ…、はあ…」
「おまえ、前にしつこくつきまとってくる奴が居て困るって話してたろ」
「うん」
「そいつ、俺と同じクラスだったからさ、美奈子は俺のもんだから手出すなって言っといた」
「えっ」
「大丈夫。教室にはクラスの奴ら沢山居たから証人もいる」
「ええーっ?!」
みんながいるところで俺のもの宣言しちゃったの?!そんな…、そんな…、私、ちゃんと告白されてないよ、嵐くん?
「もうそいつ、おまえに近づいてこねーだろ?」
「そうだけど…」
あ、そうか。単にその子を追い払うためだけに、そんな爆弾発言したのか…。嵐くんならそんな事、出来る…か…。別に私の事をどうこうって訳じゃないよね。みんなも、嫁さんだとか、からかい半分で言ってくるんだ。
「おまえに他に好きな奴が居てて、そんなこと言われたら困るってんなら、その呼び方止めろってみんなに言ってくるけど」
好きな人は…。
嵐くんしかいないよ。
「俺としては、好都合なんだけど。噂が回って俺のもんなったら、余計な男、おまえに寄ってこねーし」
嵐くんをまじまじと見つめてみたけど、表情一つ変えず、今度は唐揚げにかぶりついて、モグモグしている。
「それって、どういう意味?」
「ん。そのまんまの意味」
私は胸の辺りがカーッと熱くなってきた。
綺麗に食べ終えた嵐くんが、紙パックジュースのストローをチューッと吸い込みはじめると、すぐに側面がペコッてへっこんだ。それを片手でクシャッと潰すと、五メートル先のゴミ箱へポンと放り投げた。
「ちょっと寝る」
「あ、うん」
私の太ももに嵐くんは頭を乗せ、静かに目を閉じる。
最近はいつもこれ。
私の太ももを見て、気持ちよさそうだから膝枕してもらっていい?と聞かれ、思わずうんって返事しちゃった。
それから、ずっとこれが習慣になってきて。
「すげー安心する」
嵐くんがボソッと呟いた。
胸の奥から優しいほんわかしたものがジュワッと溢れ出してきた。穏やかな時間が流れて、なんだか幸せ。
嵐くんの前髪をそっと撫でた。
…視線を感じる。
周りに目を向けると、なんだかみんながとっても微笑ましい表情してこっちを見てる。
「不二山くんの嫁さんね」
「あの二人夫婦だよねー」
「絶対結婚するよね」
は、恥ずかしい!
「嵐くん、ちょっと起きて。みんな見てるみたい」
目を閉じている嵐くんに囁いたら、平然と一言。
「気にすんな」
「気にすんなって言われても…」
私が呟くと、嵐くんが目を開けて私を見据えた。
「嫌ならはっきり言え。どっちなんだ」
「え…、嫌じゃないです」
「ん」
嵐くんはまた静かに目を閉じた。
色んなことが嫌じゃない。膝枕することだって、嵐くんの嫁さんって呼ばれることだって。
…嵐くんのものになることも。
さっきその噂が回った方が好都合だって言ってくれたよね。
あはは、何度も噛みしめていると顔がにやけて全身熱い。でも、少し涼しくなってきた秋の空気にはこれくらいがちょうどいいかもしれない。
「嫁さん顔赤い」
「かーわい!」
更に体が熱くなってきた。
…やっぱり、もっともっと寒くなってくれないと、この体、火照りすぎでぶっ倒れるかもしれない。
私の膝枕でスヤスヤ眠っている嵐くんのようなパネェ女の子にならなくちゃ、嫁さん務まらないかも。早く慣れなくちゃ。
無意味に自分のほっぺたを撫でたりさすったりしてみる。
「痒いのか?」
いつの間にか目を開けていた嵐くんが、キョトンとした顔して見つめていた。
「何だか、体がムズムズして痒くなってきたみたい」
まだ顔が赤いはず。取り敢えず笑ってごまかしてみた。
「ふーん、治してやるよ。ちょっと、こっち」
どうやって?
クイクイと、人差し指でこっち来いみたいな仕草をするので顔を近づけると、嵐くんの腕が伸び、私は頭を押さえつけられた。
わっ。
…。
ほっぺたに…、ほっぺたに、嵐くんの唇が触れたよ…!
周囲からどよめきが聞こえてきた。
恥ずかしくて周りが見れない、かといって嵐くんの顔を見るのも恥ずかしすぎる!
「治った?」
治るわけないよ!
顔が熱すぎて爆発する!
「やっぱり正真正銘の夫婦だねー」
「ねー、もうわかったって、ラブラブすぎ」
「嵐くん…」
「これで嫁だな。それ以外は後に取っとく」
嵐くんはニヤリと笑うと、また静かに目を閉じた。
だんだん外野の声が遠く離れていくような気がする。
いつか本当に嵐くんのお嫁さんになれるの…かな。
私の太ももに頭を乗せて目を閉じている嵐くんへ、お嫁さんにしてね、と小さく小さく呟いた。
end
20101030
嵐くんと自分の分のお弁当を抱えて、先を急いでいると…。
「嵐の嫁さん」
えっ?
前から歩いてくる知らない男の子に呼び止められた。
私のこと…だよね。
はば学の嫁にしたいナンバーワンって言われてると嵐くんから聞かされたことがあるんだけれど、いつからそんな称号がついてたんだろう。しかも、今は嵐くんのって固有名詞までついちゃって…。
やだ、勝手に顔が赤くなってくる。
「なあ、嵐の嫁さんって!あいつにさ、早めに漫画返せって言っといて。次回せって言って来た奴いるから」
「あ、うん。ごめんなさい」
何故か私が代わりに謝る。
「別に一昨日貸したばっかだから嵐が止めてるわけじゃないんだけど、よろしく!」
「ねぇ、不二山嫁」
次は何回か見たことある男の子から、B4サイズのコピー用紙を2枚渡された。
「これ、不二山に渡しておいて。授業中寝たから、ノートを纏めてコピーしといてって言われたんだけどさ。今ちょうどコピーしてきたから」
「あ、うん、ありがとう」
何故か私がお礼を言う。
「人のノート写すんだったら、コピーくらい自分でやれっての。当たり前のように指図されたから、ついやっちまったよ。人を顎で動かす才能はすげーよな」
「あ、ごめんなさいね」
何故か私がまた代わりに謝る。
「ま、別にいいけど。あいつ何気に世話やけるヤツだよな。頑張ってな、不二山嫁」
私は受け取ったコピー用紙を丁寧に谷折りして左手に持った。
今年はクラスが違うから私には頼んでこなくなったんだけれど、違う人が犠牲になってるわけね。去年までは私のノートを一生懸命写してたんだけれどなあ。コピーするという手抜きに退化しちゃって、しかも人にやらせる。ちょっと注意しなくちゃね。
でも、頼んだ相手が女の子じゃなくてホッとしている。
「不二山くんの奥さん、押忍!」
今度は嵐くんの私設応援団の男の子だ。
「これ、不二山くんに渡しておいて下さい」
パンと飲み物を渡された。
「これ…」
「買って来てって頼まれたので」
パシリに使ってるの?
「あ…、ごめんなさいね」
「いいんです!不二山くんに頼まれるなら喜んで。自分のをついで買いっす。あと、これも」
プリントを手渡された。
「これは…?」
「宿題です」
「ええっ、代わりにやったの」
「押忍!」
「押忍って…、やらなくていいよ。これは嵐くん本人にやらせて」
「困ったな…。でも、奥さんがそう言うならわかりました」
「私からもちゃんと言っておくから」
嵐くんったら…。
それにしても最近どうなってるの?
さっきから嫁だの奥さんだの。私達、付き合ってもいないのに…。なんだか恥ずかしいよ。
「嵐くん」
私が色んなものを抱えて屋上に上がってきたので、ちょっと驚いた顔してる。
「あれ、なんで美奈子が持ってんの」
「渡しておいてって頼まれたの」
「美奈子を使うとは…。俺に直接持って来いって言っとく」
「嵐くん、自分でやれる分はちゃんと自分でやってね。人に頼んでばっかりで…もう」
「全部自分からやるって言い出したから乗っかっただけだ」
反省する気ゼロだなーっ。
「そんなんより、今日の弁当何?」
「えっと、鶏そぼろと唐揚げと…」
話逸らされた。ああ、ここにも乗っかった人間が一人いるけれど…。
「お、うまそー!美奈子の弁当ってガチ美味いよな。おまえの弁当以外食いたくねぇ」
こんなに嬉しそうな顔してそんなこと言われたら、明日も作ってくるねって言っちゃうしかないでしょ。
二段重ねのお弁当を広げ、嵐くん専用お箸も手渡した。
「…あのね、私、嵐くんの嫁さんだの奥さんだのって言われてるんだけど」
「ふーん」
たいして気にもとめず、私の作った卵焼きを頬張り始めた。
「これって、どう思う」
「どうもこうも、別におかしくねーだろ」
「えっ?」
「俺だって、美奈子の旦那とか亭主っていわれる」
「ええっ!」
「そ、そんなこと言われて、あれ?って思わないの」
「別に。言いたい奴には勝手に言わせとけばいーんじゃねぇ」
「あ…、はあ…」
「おまえ、前にしつこくつきまとってくる奴が居て困るって話してたろ」
「うん」
「そいつ、俺と同じクラスだったからさ、美奈子は俺のもんだから手出すなって言っといた」
「えっ」
「大丈夫。教室にはクラスの奴ら沢山居たから証人もいる」
「ええーっ?!」
みんながいるところで俺のもの宣言しちゃったの?!そんな…、そんな…、私、ちゃんと告白されてないよ、嵐くん?
「もうそいつ、おまえに近づいてこねーだろ?」
「そうだけど…」
あ、そうか。単にその子を追い払うためだけに、そんな爆弾発言したのか…。嵐くんならそんな事、出来る…か…。別に私の事をどうこうって訳じゃないよね。みんなも、嫁さんだとか、からかい半分で言ってくるんだ。
「おまえに他に好きな奴が居てて、そんなこと言われたら困るってんなら、その呼び方止めろってみんなに言ってくるけど」
好きな人は…。
嵐くんしかいないよ。
「俺としては、好都合なんだけど。噂が回って俺のもんなったら、余計な男、おまえに寄ってこねーし」
嵐くんをまじまじと見つめてみたけど、表情一つ変えず、今度は唐揚げにかぶりついて、モグモグしている。
「それって、どういう意味?」
「ん。そのまんまの意味」
私は胸の辺りがカーッと熱くなってきた。
綺麗に食べ終えた嵐くんが、紙パックジュースのストローをチューッと吸い込みはじめると、すぐに側面がペコッてへっこんだ。それを片手でクシャッと潰すと、五メートル先のゴミ箱へポンと放り投げた。
「ちょっと寝る」
「あ、うん」
私の太ももに嵐くんは頭を乗せ、静かに目を閉じる。
最近はいつもこれ。
私の太ももを見て、気持ちよさそうだから膝枕してもらっていい?と聞かれ、思わずうんって返事しちゃった。
それから、ずっとこれが習慣になってきて。
「すげー安心する」
嵐くんがボソッと呟いた。
胸の奥から優しいほんわかしたものがジュワッと溢れ出してきた。穏やかな時間が流れて、なんだか幸せ。
嵐くんの前髪をそっと撫でた。
…視線を感じる。
周りに目を向けると、なんだかみんながとっても微笑ましい表情してこっちを見てる。
「不二山くんの嫁さんね」
「あの二人夫婦だよねー」
「絶対結婚するよね」
は、恥ずかしい!
「嵐くん、ちょっと起きて。みんな見てるみたい」
目を閉じている嵐くんに囁いたら、平然と一言。
「気にすんな」
「気にすんなって言われても…」
私が呟くと、嵐くんが目を開けて私を見据えた。
「嫌ならはっきり言え。どっちなんだ」
「え…、嫌じゃないです」
「ん」
嵐くんはまた静かに目を閉じた。
色んなことが嫌じゃない。膝枕することだって、嵐くんの嫁さんって呼ばれることだって。
…嵐くんのものになることも。
さっきその噂が回った方が好都合だって言ってくれたよね。
あはは、何度も噛みしめていると顔がにやけて全身熱い。でも、少し涼しくなってきた秋の空気にはこれくらいがちょうどいいかもしれない。
「嫁さん顔赤い」
「かーわい!」
更に体が熱くなってきた。
…やっぱり、もっともっと寒くなってくれないと、この体、火照りすぎでぶっ倒れるかもしれない。
私の膝枕でスヤスヤ眠っている嵐くんのようなパネェ女の子にならなくちゃ、嫁さん務まらないかも。早く慣れなくちゃ。
無意味に自分のほっぺたを撫でたりさすったりしてみる。
「痒いのか?」
いつの間にか目を開けていた嵐くんが、キョトンとした顔して見つめていた。
「何だか、体がムズムズして痒くなってきたみたい」
まだ顔が赤いはず。取り敢えず笑ってごまかしてみた。
「ふーん、治してやるよ。ちょっと、こっち」
どうやって?
クイクイと、人差し指でこっち来いみたいな仕草をするので顔を近づけると、嵐くんの腕が伸び、私は頭を押さえつけられた。
わっ。
…。
ほっぺたに…、ほっぺたに、嵐くんの唇が触れたよ…!
周囲からどよめきが聞こえてきた。
恥ずかしくて周りが見れない、かといって嵐くんの顔を見るのも恥ずかしすぎる!
「治った?」
治るわけないよ!
顔が熱すぎて爆発する!
「やっぱり正真正銘の夫婦だねー」
「ねー、もうわかったって、ラブラブすぎ」
「嵐くん…」
「これで嫁だな。それ以外は後に取っとく」
嵐くんはニヤリと笑うと、また静かに目を閉じた。
だんだん外野の声が遠く離れていくような気がする。
いつか本当に嵐くんのお嫁さんになれるの…かな。
私の太ももに頭を乗せて目を閉じている嵐くんへ、お嫁さんにしてね、と小さく小さく呟いた。
end
20101030
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