その手を誰よりも早く
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さっきまで体育館で繰り広げられた卒業式の騒動を思い出すと、笑っちまう。
あの後職員室に呼び出されて、大迫先生からはゲンコツを、氷室先生からは長ぇ説教をくらった。
俺らが一応神妙なツラ作って聞いてっと、最後には大迫先生が、まぁ、これも青春だぁっ!と、笑っておんなじトコにゲンコツを、氷室先生は口角が僅かに上がったような気ぃした。
こってりしぼられて職員室から出ると、学校に残ってる生徒はもうまばらだった。
「もう、本当にビックリしたんだからー」
美奈子が顔を真っ赤にして抗議してくる。
「悪ぃ」
新名と顔を見合わせる。また笑いがこみあげてきた。
「ププッ、嵐さん、悪ぃなんてぜーんぜん思ってねー顔!」
「おまえもだろ。反省の色無し!」
二人で大爆笑してっと、美奈子もつられて笑い出した。
「美奈子、手」
俺は美奈子の持ってる卒業証書を取って、あいつの左手を掴んだ。
「あっ、ズリィ。姫、お手をどうぞ」
新名も負けじと美奈子の鞄持って、あいつの右手を繋ぐ。
俺が美奈子の左手、新名が美奈子の右手を塞いだ。
「美奈子、両手に花だな」
「嵐さん、オレらが花?!チョーウケる。でもさ、どうせなら王子様っしょ」
「王子ってガラでもねーけどな」
「まぁ、嵐さんはねー」
「なんだと?」
新名の足を軽く蹴ってやると、暴力反対と騒ぎながら笑い転げた。
はば学でこんなふうにバカやんのは、今日が最後なんだな。
手を繋いだまま立ち止まって、三人で校舎を振り返った。
「はば学、卒業したんだな…。な、美奈子」
「いえいえ、美奈子ちゃんは卒業させませーん。てなわけで、卒業証書没収ー」
俺の右手には美奈子の分も握られてる。
それを新名が奪おうとしてきた。
「おっと!この俺から取れるものなら取ってみろ?」
「あーいいですよ。地面に叩きつけられて、泣いても知らねーから」
「おお、言ったな?足腰立たなくしてやる」
「もう、こんなところで大暴れしたら、また職員室戻りだよ」
美奈子が繋いでる俺らの手を、ギュッと強く握った。
「わかった」
「はーい、姫のおっしゃることには逆らいませーん」
「あ、お騒がせトリオだ」
「ド派手にやらかしたな。たいした度胸だ」
「琉夏くん、琥一くん」
桜井兄弟が肩をゆらしながらやってきた。
「不二山は卒業しちまうからともかく、残った新名ぁ、噂のマトんなって大変だぞ」
「いいじゃん。ヒーローだよ。あー、俺も仲間に入れば良かった。実は、手を挙げようかなってウズウズしてた」
「俺が手ぇ抑えつけてたけどな。テメェはこれ以上騒ぎ起こすのやめれ」
琥一が、大きく溜め息ついた。
「美奈子ちゃんはさ、結局どっちを選ぶの?」
琉夏がサラッと放った言葉で、空気がピーンと張り詰められた。
俺と新名は一瞬目が合い、同時に美奈子を見た。
「あ…、それは…」
「俺だな」
「オレでしょ!」
「あの…」
「俺しかいねぇ」
「いんや絶ッ対、オ・レ!」
美奈子は、なぜか琥一の方へ縋るような目をした。
なんであいつ見んだよ。助けを求めるなら俺にしろ。
「いい加減にしやがれ。美奈子、困ってんじゃねぇか」
俺らの間へ琥一が割って入った隙に、弟がスッと美奈子の肩を抱いた。
「決めらんないんだったらさ、俺にしなよ」
「バカルカ!」
「琉夏さん!」
「琉夏!」
三人で、慌てて二人を引き離した。
桜井兄弟の美奈子を見る目がマジだ。
マズい。
まだまだライバルが現れてくんな。やっぱ早ぇうちに何とかしねーと。
卒業しても全然気ぃ抜けねー。
今度は四人で美奈子を取り合ってっと。
「コラァー!まだ騒いでんのかぁー!」
「大迫ちゃんだ」
「逃げろー!」
五人で笑いながら、美奈子を囲むようにして走り出した。
絶対美奈子は俺のものにする。
負けねぇ。
走りながら美奈子の手を、誰よりも早く一番に掴んでやった。
end
20100903
あの後職員室に呼び出されて、大迫先生からはゲンコツを、氷室先生からは長ぇ説教をくらった。
俺らが一応神妙なツラ作って聞いてっと、最後には大迫先生が、まぁ、これも青春だぁっ!と、笑っておんなじトコにゲンコツを、氷室先生は口角が僅かに上がったような気ぃした。
こってりしぼられて職員室から出ると、学校に残ってる生徒はもうまばらだった。
「もう、本当にビックリしたんだからー」
美奈子が顔を真っ赤にして抗議してくる。
「悪ぃ」
新名と顔を見合わせる。また笑いがこみあげてきた。
「ププッ、嵐さん、悪ぃなんてぜーんぜん思ってねー顔!」
「おまえもだろ。反省の色無し!」
二人で大爆笑してっと、美奈子もつられて笑い出した。
「美奈子、手」
俺は美奈子の持ってる卒業証書を取って、あいつの左手を掴んだ。
「あっ、ズリィ。姫、お手をどうぞ」
新名も負けじと美奈子の鞄持って、あいつの右手を繋ぐ。
俺が美奈子の左手、新名が美奈子の右手を塞いだ。
「美奈子、両手に花だな」
「嵐さん、オレらが花?!チョーウケる。でもさ、どうせなら王子様っしょ」
「王子ってガラでもねーけどな」
「まぁ、嵐さんはねー」
「なんだと?」
新名の足を軽く蹴ってやると、暴力反対と騒ぎながら笑い転げた。
はば学でこんなふうにバカやんのは、今日が最後なんだな。
手を繋いだまま立ち止まって、三人で校舎を振り返った。
「はば学、卒業したんだな…。な、美奈子」
「いえいえ、美奈子ちゃんは卒業させませーん。てなわけで、卒業証書没収ー」
俺の右手には美奈子の分も握られてる。
それを新名が奪おうとしてきた。
「おっと!この俺から取れるものなら取ってみろ?」
「あーいいですよ。地面に叩きつけられて、泣いても知らねーから」
「おお、言ったな?足腰立たなくしてやる」
「もう、こんなところで大暴れしたら、また職員室戻りだよ」
美奈子が繋いでる俺らの手を、ギュッと強く握った。
「わかった」
「はーい、姫のおっしゃることには逆らいませーん」
「あ、お騒がせトリオだ」
「ド派手にやらかしたな。たいした度胸だ」
「琉夏くん、琥一くん」
桜井兄弟が肩をゆらしながらやってきた。
「不二山は卒業しちまうからともかく、残った新名ぁ、噂のマトんなって大変だぞ」
「いいじゃん。ヒーローだよ。あー、俺も仲間に入れば良かった。実は、手を挙げようかなってウズウズしてた」
「俺が手ぇ抑えつけてたけどな。テメェはこれ以上騒ぎ起こすのやめれ」
琥一が、大きく溜め息ついた。
「美奈子ちゃんはさ、結局どっちを選ぶの?」
琉夏がサラッと放った言葉で、空気がピーンと張り詰められた。
俺と新名は一瞬目が合い、同時に美奈子を見た。
「あ…、それは…」
「俺だな」
「オレでしょ!」
「あの…」
「俺しかいねぇ」
「いんや絶ッ対、オ・レ!」
美奈子は、なぜか琥一の方へ縋るような目をした。
なんであいつ見んだよ。助けを求めるなら俺にしろ。
「いい加減にしやがれ。美奈子、困ってんじゃねぇか」
俺らの間へ琥一が割って入った隙に、弟がスッと美奈子の肩を抱いた。
「決めらんないんだったらさ、俺にしなよ」
「バカルカ!」
「琉夏さん!」
「琉夏!」
三人で、慌てて二人を引き離した。
桜井兄弟の美奈子を見る目がマジだ。
マズい。
まだまだライバルが現れてくんな。やっぱ早ぇうちに何とかしねーと。
卒業しても全然気ぃ抜けねー。
今度は四人で美奈子を取り合ってっと。
「コラァー!まだ騒いでんのかぁー!」
「大迫ちゃんだ」
「逃げろー!」
五人で笑いながら、美奈子を囲むようにして走り出した。
絶対美奈子は俺のものにする。
負けねぇ。
走りながら美奈子の手を、誰よりも早く一番に掴んでやった。
end
20100903
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