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あ、晴れ間が覗いてきた。
白い雲から柔らかい光が射しこむと、海面が照らされキラキラ反射する。
風が切るように冷たいけれど、遊覧船から眺める海はゆったり流れていて心地良いな。
隣には、久しぶりに会う旬平くん。
卒業式が終わった後、旬平くんから告白されて、私達のお付き合いが始まった。
あの時の情景が鮮やかによみがえり、まだ昨日の出来事のように感じてしまう。
もうそれは去年のことなんだよね。
月日が経つのは意外と早いなあ。
今年は旬平くんと初詣で合格祈願するつもりだったのに、私が風邪をひいてしまったせいでドタキャン。
はあー、ちゃんと体調管理出来ていなかった自分が情けない。
やっと今日、センター試験を終えた旬平くんに会えた。
しばらく電話とメールだけだったから、隣に彼を感じると嬉しいやら照れくさいやら。
船首から海を眺めたくて、外は寒いからヤダとゴネる旬平くんをデッキへ引っ張り出した。
寒いからか、デッキに居るのは私達だけ。
一緒に海を眺める旬平くんをそっと窺った。
あれだけ寒いとイヤがっていたハズなのに。柵へ肘をつきながら、穏やかな表情で心地良い揺れに身をゆだねている何気ない姿は、私をいきなり緊張させる。
改めて旬平くんが、とんでもなくカッコイイんじゃないかと思ってきた。
以前からカッコ良かったんだよ。
人目を引く華やかな容姿。
それを纏うのは、流行をおさえた服装と軽妙な会話。
でも、どこか年下の可愛い男の子感が拭えなかった。
けれど。
私が卒業してから会う新名くんは、一段と大人びていた。
柔道部主将という責任感が、彼の横顔を男らしく変貌させていったと思う。
なんだか眩しいな。
卒業してから不安だった。
私は一流大に進学して、同じ時間を過ごせない日が圧倒的に増えた。
日に日に男らしくなっていく旬平くんの周りだって気になるし、彼自身三年生にもなると、受験、バイト、部活と忙しい。
それでも全てをソツなくこなし、マメに連絡してくれて、時間を作り会ってくれる。
それは努力あってのこと。
煌めくような輝きを放つ目の下には、うっすらクマがにじんでいた。
「大変だね。受験勉強とか」
「何がー?オレにかかるとチョロいんだって!」
努力することを惜しまない。
けれど、それをさとられるのは、やはりあまり好きじゃないみたいで、何でもないフリをしてくる。
私には、おどけながら快活に笑う。
「何、慰めてくれんの?」
「慰めて欲しい?」
「欲しい~。にゃでにゃでして~」
彼の緩んだ表情に思わず笑ってしまう。
けれど、すぐさま表情が固く引き締まった。
「なーんて。遠慮する」
そうやんわり拒否しながら、こちらへ軽い流し目をしてくるので、ドキッとした。
デッキへ出たのは、船首で海を眺めたいっていう理由があった。
でも、理由はまだあって。
久しぶりに会った旬平くんは、男の色気が感じられ、なんだか気恥ずかしくなっちゃったの。
その火照った気持ちを、外気の冷たい風に当たればクールダウン出来るかな、なんて思ったんだけれど、そう簡単にはいかなかった。
付き合ってるのに、私ったら何緊張しているんだろう。
でも、久しぶりなんだもん。
ちょっと見ない間に、男の子って変わっていくんだな…。
また照れくさくなって海へ視線を向けると、耳元に熱い息がかかった。
ビクッとして、思わず耳を押さえたくなる。
「その代わりさ、寒いから手ぇ繋いでいい?」
少しつり上がったキラキラした瞳が真っ直ぐ注がれると、眩しくて思わず目を瞑りたくなってしまう。
「うん、いいよ」
目を瞑るのは勿体無いので、繋ぐ手を見つめた。
旬平くんの長い指が、私の指に絡まっていくさまを眺めていると、ちょっぴり恥ずかしい。
「すぐさー、手ぇだけじゃ足りなくなるっての」
その言葉をうけるように顔を上げた瞬間、私の目の前は真っ暗になった。
革製品の匂いと男性用トワレの香りが、顔全体をふわりと覆ってきて、くすぐったい。
包まれてるのは香りだけじゃない。
旬平くんの逞しくてしなやかな体にまで覆われている。男の人を感じてクラクラしてしまう。
女の私からは発せられない香りに包まれて、体が熱くなってきた。
「美奈子ちゃんの体あったけー」
「旬平くんもあったかいよ」
「俺が中坊ん時さ、美奈子ちゃんをこーやって抱き締めたよな」
「うふふ、あったね」
「あん時はすぐ離れたけど、もう離さねーから」
「旬平くん…」
革ジャケットを着た彼の体に、心まですっぽり覆われる。
胸の奥まであったかい。
ずっとこのまま遊覧船で揺られていたいなあと、キラキラ輝く水面を視界に入れながら静かに目を閉じた。
end
20110119
白い雲から柔らかい光が射しこむと、海面が照らされキラキラ反射する。
風が切るように冷たいけれど、遊覧船から眺める海はゆったり流れていて心地良いな。
隣には、久しぶりに会う旬平くん。
卒業式が終わった後、旬平くんから告白されて、私達のお付き合いが始まった。
あの時の情景が鮮やかによみがえり、まだ昨日の出来事のように感じてしまう。
もうそれは去年のことなんだよね。
月日が経つのは意外と早いなあ。
今年は旬平くんと初詣で合格祈願するつもりだったのに、私が風邪をひいてしまったせいでドタキャン。
はあー、ちゃんと体調管理出来ていなかった自分が情けない。
やっと今日、センター試験を終えた旬平くんに会えた。
しばらく電話とメールだけだったから、隣に彼を感じると嬉しいやら照れくさいやら。
船首から海を眺めたくて、外は寒いからヤダとゴネる旬平くんをデッキへ引っ張り出した。
寒いからか、デッキに居るのは私達だけ。
一緒に海を眺める旬平くんをそっと窺った。
あれだけ寒いとイヤがっていたハズなのに。柵へ肘をつきながら、穏やかな表情で心地良い揺れに身をゆだねている何気ない姿は、私をいきなり緊張させる。
改めて旬平くんが、とんでもなくカッコイイんじゃないかと思ってきた。
以前からカッコ良かったんだよ。
人目を引く華やかな容姿。
それを纏うのは、流行をおさえた服装と軽妙な会話。
でも、どこか年下の可愛い男の子感が拭えなかった。
けれど。
私が卒業してから会う新名くんは、一段と大人びていた。
柔道部主将という責任感が、彼の横顔を男らしく変貌させていったと思う。
なんだか眩しいな。
卒業してから不安だった。
私は一流大に進学して、同じ時間を過ごせない日が圧倒的に増えた。
日に日に男らしくなっていく旬平くんの周りだって気になるし、彼自身三年生にもなると、受験、バイト、部活と忙しい。
それでも全てをソツなくこなし、マメに連絡してくれて、時間を作り会ってくれる。
それは努力あってのこと。
煌めくような輝きを放つ目の下には、うっすらクマがにじんでいた。
「大変だね。受験勉強とか」
「何がー?オレにかかるとチョロいんだって!」
努力することを惜しまない。
けれど、それをさとられるのは、やはりあまり好きじゃないみたいで、何でもないフリをしてくる。
私には、おどけながら快活に笑う。
「何、慰めてくれんの?」
「慰めて欲しい?」
「欲しい~。にゃでにゃでして~」
彼の緩んだ表情に思わず笑ってしまう。
けれど、すぐさま表情が固く引き締まった。
「なーんて。遠慮する」
そうやんわり拒否しながら、こちらへ軽い流し目をしてくるので、ドキッとした。
デッキへ出たのは、船首で海を眺めたいっていう理由があった。
でも、理由はまだあって。
久しぶりに会った旬平くんは、男の色気が感じられ、なんだか気恥ずかしくなっちゃったの。
その火照った気持ちを、外気の冷たい風に当たればクールダウン出来るかな、なんて思ったんだけれど、そう簡単にはいかなかった。
付き合ってるのに、私ったら何緊張しているんだろう。
でも、久しぶりなんだもん。
ちょっと見ない間に、男の子って変わっていくんだな…。
また照れくさくなって海へ視線を向けると、耳元に熱い息がかかった。
ビクッとして、思わず耳を押さえたくなる。
「その代わりさ、寒いから手ぇ繋いでいい?」
少しつり上がったキラキラした瞳が真っ直ぐ注がれると、眩しくて思わず目を瞑りたくなってしまう。
「うん、いいよ」
目を瞑るのは勿体無いので、繋ぐ手を見つめた。
旬平くんの長い指が、私の指に絡まっていくさまを眺めていると、ちょっぴり恥ずかしい。
「すぐさー、手ぇだけじゃ足りなくなるっての」
その言葉をうけるように顔を上げた瞬間、私の目の前は真っ暗になった。
革製品の匂いと男性用トワレの香りが、顔全体をふわりと覆ってきて、くすぐったい。
包まれてるのは香りだけじゃない。
旬平くんの逞しくてしなやかな体にまで覆われている。男の人を感じてクラクラしてしまう。
女の私からは発せられない香りに包まれて、体が熱くなってきた。
「美奈子ちゃんの体あったけー」
「旬平くんもあったかいよ」
「俺が中坊ん時さ、美奈子ちゃんをこーやって抱き締めたよな」
「うふふ、あったね」
「あん時はすぐ離れたけど、もう離さねーから」
「旬平くん…」
革ジャケットを着た彼の体に、心まですっぽり覆われる。
胸の奥まであったかい。
ずっとこのまま遊覧船で揺られていたいなあと、キラキラ輝く水面を視界に入れながら静かに目を閉じた。
end
20110119
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