あなたの笑顔を
夢小説設定
本棚全体の夢小説設定「悪魔執事と黒い猫」の二次創作の本棚です。
まだまだ少ないですが少しずつ増やしていきます。
不定期更新。
ご利用の端末、あるいはブラウザ設定では夢小説機能をご利用になることができません。
古いスマートフォン端末や、一部ブラウザのプライベートブラウジング機能をご利用の際は、機能に制限が掛かることがございます。
「すごく美味しかったよ、ハウレス。
本当にありがとう。」
「いえ…。
主様に喜んでいただけて、俺も嬉しいです。
実を言うと少し不安だったのですが…。
美味しそうに食べる姿を見て、安心しました。」
ハウレスが本当に嬉しそうに笑う。
今みたいにニッコリと微笑む表情も、最近見る機会が増えたように感じる。
肩の力が抜けたことと関係しているのだろうか。
何れにせよ、こうやって悪魔化から脱出できた喜びを分かち合えるのは、とても嬉しいことだ。
「俺もさ、ハウレスには皆を頼れなんて言ったけど…。
主として俺が頑張らなきゃって、どこかで思ってた。」
苦い記憶が蘇る。
処刑だと言ってハウレスが連れて行かれたとき、俺も絶望しかけていた。
貴族に、この世界に。
そして俺自身に…。
「元の世界に戻れば俺は平凡な成人男性で、どちらかと言うと地味でパッとしない生活を送ってる…。
そんな俺がこっちの世界に来て主になったからと言って、何かできる訳じゃなかったんだよね。」
「主様…。」
「でも、今はそれでも良いと思ってる。
俺には俺ができることしかできないし…。
できることを精一杯やるしかないんだよね。
それに悪魔執事の皆が傍に居てくれるから…。
俺一人ではできないことも、できると思えるんだ。
俺にできないことは、皆を頼れば良い。
ベリアンが言ってくれたように…。」
あの時はハウレスを救う為に皆で知恵を絞って、貴族が統治する監獄へ潜入することを選んだのだ。
貴族と対立しかねない方法で、一人を切り捨てるではなく皆の同意の元に実行に移した。
改めてすごいことだと実感する。
「……俺も根気詰めたりせず、皆を頼ろうと思います。
しかし主様に関することだけは、妥協できません。
今まで以上に、俺が主様を守りたいという思いは強くなっています。
それは天使や貴族から守るのはもちろんですが、怪我をさせないとかそういう意味だけではなくて…。
笑っていて欲しいんです。
さっき俺が作ったサンドイッチを食べてくれたときのような、主様の笑顔を守りたいと思うんです。」
「ハウレス…、ありがとう。
……俺に笑顔でいて欲しいならさ、ハウレスも元気でいなきゃダメだよ。」
「フッ…。本当にそうですね。」
主様は優しいですからと、ハウレスが続ける。
照れ臭さを隠す為にバナナジュースに口をつけると、細かく砕けた氷が口の中に入ってきて清涼感を生んだ。
知能天使のことを考えると不安がない訳ではないけれど、新しく悪魔執事になる仲間もいるし、きっと皆となら乗り越えられる。
ジュースのお代わりがあると言うハウレスの誘惑に負けて、俺はコンサバトリーに長居するのだった。