親と子
夢小説設定
本棚全体の夢小説設定「悪魔執事と黒い猫」の二次創作の本棚です。
まだまだ少ないですが少しずつ増やしていきます。
不定期更新。
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俺とベリアンが教会に戻ると、丁度ハナマルさんが荷物をまとめ終わったところだった。
「おや?
どうして子どもたちまで荷物をまとめてらっしゃるのですか?」
「なんか…。
こいつらも、この教会を出て、それぞれ一人で生きていくんだとさ。」
子供達はハナマルさんに心配を掛けたくないので、自分の力で生きていくと決めたのだそうだ。
このことをハナマルさんが聞いたのはつい最近で、仕事も住む家も全部決まった後だったという。
「だって、ハナマルに言ったら…。
面倒とかなんだかんだ言いながら…。
きっと俺たちのために色々やってくれるだろうからさ。」
「私たちはそれが嫌だったんです。」
「私たちは自分一人で生きていけるんだって…。
ハナマルに示したかったから。」
「もうこれで心置きなく…。
戦いに集中できるよね、ハナマル。」
ハナマルの声がくぐもる。
「なーんて…。
俺が泣く訳ないだろ。
しんみり別れるより、楽しい方がいいだろ?
でも、まぁ…。
ちょっとは寂しいけどよ…。」
笑顔で送り出すと決めていた子供達だが、寂しさを滲ませたハナマルさんの姿に我慢できなくなったようだ。
子どもたちはハナマルさんの元に駆け寄った。
その子どもたちをハナマルさんの腕が優しく包み込む。
教会の外に出た俺たちは、子どもたちの出発を見送った。
「さてと…。
それじゃあ、主様。」
「は、はい!」
「今日から俺は、あんたの執事になるわけだけど…。
あらためて、よろしく頼むな。」
「よろしくお願いします。」
ハナマルさんは自分には敬語を使わなくていいから、もっと気楽にやっていこうと言う。
名前も呼び捨てでいいと言うので、遠慮なくハナマルと呼ばせてもらうことにした。
それから俺たちは馬車に乗り、屋敷へ戻った。
屋敷に帰りつくと…。
ルカスとテディとミヤジの三人が出迎えてくれた。
テディはついさっきミヤジに出迎えの挨拶の仕方を教わったらしい。
「ん?
なんか見ない顔がいるな。
いつのまにか執事が増えたのか?」
「彼はテディ・ブラウンさん。
新しく悪魔執事の一員に加わっていただける方です。」
二人は同じ部屋の執事としてこれから生活をともにするそうだ。
どちらともなくよろしくと挨拶を交わす。
俺とムーがいつかお部屋にお邪魔したいねと話をしていると…。
ルカスとミヤジがハナマルに声を掛けた。
面識があるとは聞いていたけれど、随分と親しそうに話をしている。
そういえばハナマルの歳はいくつなのだろう。
マイペースだが落ち着いており大人の男性という感じがするし、年齢は二人と近いのかも知れない。
いつまでも立ち話する訳にはいかないと、ベリアンにティータイムにしようと促される。
テディとハナマルには、ミヤジが屋敷や悪魔執事のことについて説明してくれることになった。
そして俺とムーは、ルカスと一緒に食堂へ向かった。
紅茶とお菓子を堪能した俺は、ゆったりくつろいでいた。
ルカスが今日一日の働きについて労いの言葉を掛けてくれる。
…特別何かした訳ではないが、したような気持ちになるから危険だ。
「これで悪魔執事の候補は二人決まったわけだけど…。
聞いた話だと…。
あと一人候補がいるみたいだね。」
ルカスがベリアンに訊ねる。
「はい、そうです。
ただ…。
最後の一人は…。
会いに行くことが難しい場所にいらっしゃいます。」
どういうことだろうか。
ムーが質問をする。
「その彼は、とある牢獄に投獄されていて…。
あと数日後に処刑が決まっている方なのです。
主様もご存じの方ですよ。」
「俺も知ってる人?」
「シノノメ・ユーハンさん。
彼が三人目です。」
飲みかけた紅茶を咽せそうになった。