親と子
夢小説設定
本棚全体の夢小説設定「悪魔執事と黒い猫」の二次創作の本棚です。
まだまだ少ないですが少しずつ増やしていきます。
不定期更新。
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歩いていくハナマルさんの姿が見えなくなった。
すると、ベリアンはお墓の前に立ち…。
静かに黙祷をささげる。
そしてベリアンは目を開けると、こちらに向き直り微笑んだ。
「主様。
ハナマルさんと会ってみていかがでしたか?」
「うん、特に問題はないんじゃないかな?
今までにいなかったタイプの人だね。
……彼も、辛い思いをしているんだね。」
「はい…。
ただ、これは私が彼の話を聞いた上での推測ですが…。
ハナマルさんは五年前の天使襲撃より、さらに前にも…。
なにか辛い出来事を経験されたのではないかと思っています。」
ハナマルさんがあの教会に来たのは約10年程前で、森で倒れているところをシスターさんが発見した。
発見された当時ハナマルさんはボロボロで、身体のいたるところに怪我を負っていたという。
特に足の怪我は酷く、長時間歩き続けたことによる損傷が大きかったのだそうだ。
「おそらくですが…。
彼は遠い東の大地から…。
歩いてここまで来たんだと思います。」
ハナマルさんにも事情を聞いてみたが、上手くはぐらかされてしまったらしい。
彼のような気さくな人が隠そうとするのだから、余程話したくないことなのだろうとベリアンは言った。
「五年前…。
天使の襲撃によって子どもたちを失ったとき…。
彼はひどく取り乱していました。
『また守れなかった』
『次こそは絶対に守ると誓ったのに』…と。
彼は何度も地面に頭をぶつけ…。
私たちも止めるのに必死でした。」
(そういえばさっきも…。)
ハナマルさんの言葉を思い出す。
天使だけじゃなく、自分自身も許せないのだと言っていたハナマルさんのことを。
ベリアンが言ったように、過去にも同じことを経験して自分を責めているようなニュアンスだった。
また守れなかった、とも。
「さっきも同じようなことを言ってた。」
それは恐らく、ハナマルさんにとって大切な人達を失う出来事だったのだろう。
「彼が今こうして立ち上がれているのは…。
幸いにも天使の襲撃から生き残った四人の子どもたちがいたからです。
あの子たちがいなかったら…。
彼は今頃どうなっていたか…。」
約束の五年…。
それはもしかしたら、平静を保って天使と戦う為に、ハナマルさん自身が必要な期間だったのかもしれない。
「主様〜!ベリアンさ〜ん!
どこですか〜?」
ムーが俺達を呼ぶ声が聞こえてきた。
明るい声のトーンに救われる。
ハナマルさんはもう教会に帰っているらしい。
思ったより長く話し込んでしまっていた。
ムーは執事の仲間が増えることを純粋に嬉しく思っているようだ。
ハナマルさんは他の執事達とは面識がある為、自分も早く仲良くなりたいと笑顔を浮かべている。
それから俺たちは、丘を後にして教会へ戻った。