親と子
夢小説設定
本棚全体の夢小説設定「悪魔執事と黒い猫」の二次創作の本棚です。
まだまだ少ないですが少しずつ増やしていきます。
不定期更新。
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俺はハナマルさんに連れられて、森を歩いていた。
その道中、ハナマルさんは俺にいろいろと質問をしてきた。
ハナマルさんの方から話を振ってくれるのは有り難い。
質問に答えている間に、いつの間にか俺が他の世界から来ていることも話してしまっていた。
ハナマルさんが聞き上手なのか…。
それとも俺が誤魔化すということに慣れていないからだろうか。
「色々聞かせてくれてありがとな。
でもさぁ。
主様…。
あんたは、もうちょい危機感持った方がいいんじゃない?」
「え?」
「初対面の俺に、そんな色々教えちゃっていいの?」
「そ、それは…。」
確かに俺がハナマルさんについて知っていることと言えば、新しい悪魔執事の候補者だということ…。
後は森の中の教会で子供達と生活していることや、先程の自己紹介の内容をなんとなく覚えているくらいだ。
「世の中には心の汚い人間が多いからな〜。
まぁ、次からは気をつけなよ。
世の中、良い奴らばかりじゃないんだからさ。」
さらっと放った彼の言葉には、妙な重みがあった。
まるで世の中の黒い部分を知っているかのような…。
森を抜けると、そこは小さな丘だった。
辺りを見渡すと、すぐにあるものが目に入った。
丘の上には、多くのお墓が建てられていた。
大事な用事というのはお墓参りのことだったのだとハナマルさんが言う。
「いったいこのお墓は誰の…。」
「ここにある墓は…。
全部、俺の子のものだ。」
子供と言っても、血は繋がっていないのだとハナマルさんは言った。
このお墓は教会で暮らしていた子供のもので…。
五年前、ハナマルさんが外出していたときに教会に天使が現れて、子供達を襲ったのだそうだ。
(こんなにたくさん…。)
「俺は、五年前のあの日…。
天使に復讐を誓ったんだよ。
俺は天使が許せない…。
そして、それと同じくらい…。
自分自身も許せないんだ。
もう二度と…。
あんな悲劇は繰り返さないって誓ったのに…。
また…俺は守れなかった。」
「ハナマルさん…(また?)。」
「俺は、すべての天使を一人残らず消す。
これは俺の復讐と償いだ。
そのために俺は悪魔執事になる。」
主様にはちゃんと話しておきたかったのだと、ハナマルさんは言った。
胸が痛い…。
テディのときと同じだ。
天使に家族や守るべき相手を殺されて、復讐を誓っている。
悪魔執事になれる条件が「絶望を経験していること」なのだから、悪魔執事になる皆がそのような感情を抱いていることは、よく考えたら自然なことだけれど。
その憎しみを仇である天使にぶつけることが、彼らの生きる支えになるのだとしたら…。
こんなに悲しいことはない。
そしてそんな彼らの気持ちを知っていて、悪魔執事になってくれと言うのだから。
せめて悪魔執事として生きる彼らにも、彼らなりの幸せを感じて欲しいと願う。
ザッ…ザッ…ザッ…
「やはりここにいらしたんですね。
ハナマルさん。」
「ベリアン…。」