絆
夢小説設定
本棚全体の夢小説設定「悪魔執事と黒い猫」の二次創作の本棚です。
まだまだ少ないですが少しずつ増やしていきます。
不定期更新。
ご利用の端末、あるいはブラウザ設定では夢小説機能をご利用になることができません。
古いスマートフォン端末や、一部ブラウザのプライベートブラウジング機能をご利用の際は、機能に制限が掛かることがございます。
「主様…。
おい、主様…。」
大丈夫かとボスキに声を掛けられる。
どうやら二人には俺がボーッとしているように映っていたらしい。
黒猫の声もハウレスの記憶も、二人には見えていなかった。
フェネスが言う。
「な、なんだろうあれ…。
黒いモヤみたいなものがまとわりついて…。」
「俺は…また守れなかった。
主様を死なせてしまった…。
俺のせいで…。
貴族なんて…滅んだ方がいい。
あいつらは俺の大切なものを奪っていく…。
絶対に許さない…。」
ハウレスを取り巻く黒いモヤが再び強くなった。
「だけど…。
『主様を死なせた』って…どういう意味?
聞き間違いじゃないよね?」
「『また守れなかった』ってことは…。
何かしらの理由で、主様が死んだと誤解して…。
妹のトリシアの死と重ねたんだろう。」
ハウレスの言葉を聞く限り、『一人残らず消す』と言っていた対象は貴族のようだ。
理由は分からないが、ハウレスは俺が貴族の所為で殺されたと勘違いしている可能性が高い。
それがトリシアさんの死と重なって、ハウレスの絶望を誘発してしまったんだ…。
「ハウレス!
ねぇ、ハウレス!」
「おい、聞こえてんのか!
ハウレス!」
(二人の声が届いていない…。)
「そうだ…。
主様の声ならどうだ?」
ハウレスは俺が死んだと思い込んでいる為、声が届けばハウレスの目を覚まさせるのに効果的だろう。
戦っているときは悪魔の力に乗っ取られて気が付かなかったが、今はハウレスの心の中だ。
今なら声が届くかもしれないと、ボスキが言った。
「わかった…やってみる…。」
俺は黒いモヤに覆われたハウレスの前に立つと、大きな声で呼びかけた。
「ハウレス…!
ハウレス!俺はここだよ!」
「この…声…。
主…様…?」
やった!!声が届いた!
「そんな…どうして主様が…。」
「ハウレスを助けに来たんだよ!」
「助けに…?」
「そうだよ、ハウレス!
俺たちもいる!」
「フェネス…。
それにボスキまで…。
いや…。
そもそもどうして主様が…。
主様は貴族に殺されたはずじゃ…。」
「俺は生きてるよ!」
「誰に吹き込まれたか知らねぇが…。
主様はこのとおり無事だ!
だから、さっさと正気にもどれ!」
「………。
そう…。
だったのか…。
良かった…。
主様が無事で…。
本当に良かった…。」
ハウレスの頬に涙が伝う。
こんなに俺のことを想ってくれていたと知って、俺まで泣いてしまいそうだ…。
何にせよ、正気を失っていたハウレスに俺達の声が届いたのだ。
俺を死んだと思い込んでいた誤解も解け、これでハウレスの悪魔化を止めることができる。
そう思っていた…。