奪還
夢小説設定
本棚全体の夢小説設定「悪魔執事と黒い猫」の二次創作の本棚です。
まだまだ少ないですが少しずつ増やしていきます。
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「あの…。
俺からも発言いいでしょうか。」
それは偵察隊の副隊長であるテディの声だった。
テディも現場にいた数少ない目撃者として発言を許可された。
証言台に向かう途中、彼は力なく膝をついた。
初めて会ったときの、元気な青年の姿はそこになく…。
見るからに憔悴しきっているようだ。
家族同然だと言っていた仲間を、目の前で失ったのだから無理もない…。
逆の立場だったらと思うと…。
古の塔からの帰り道も、俺と悪魔執事は掛けるべき言葉が見付からないまま、生き残った三人を見守るように並んで歩いたのだった。
テディは隊長と同じことを見聞きしたとしながらも、ハウレスが知能天使と手を組んでいたとは思えないと証言した。
「悪魔執事の皆さんは、本気で知能天使を捕まえようとしていました。
本当に人間を引き渡す取引をしていたなら…。
そんな芝居をうつ必要はないはずです。」
テディ…。
こんな大変なときに、俺達の為に証言をしてくれるなんて。
「ハウレスくんが仲間を欺くために、あえて芝居をうったのでは?」
知能天使と『取引』したことを仲間に秘密にする為、ハウレスが敢えて茶番を演じた可能性もあるとフィンレイ様が言う。
あの3週間に及ぶ血の滲むような訓練を見ている者なら、そんなことは有り得ないと胸を張って言える。
妹に似た少女のことも、演技だったとは到底思えない。
しかし、他の貴族達はフィンレイ様の考えがしっくりくるようだ。
「ま、待ってください…。
ハウレスさんは、そんなことをするような人じゃ…。」
「副隊長…。
なぜ貴様はそうまでして、悪魔執事の肩を持とうとする?
ま、まさか…。
貴様もハウレスと手を組んで、天使と何か『取引』を…!」
貴族のその言葉を聞いた瞬間、テディの表情が変わった。
「俺が…天使と取引…?
ふざけたこと言わないでください…!
みんなは俺にとって、家族同然だったんです。
それなのに…。
あいつらを…。
目の前で殺されて…。」
そう言ってテディは泣き崩れた。
貴族に失礼な発言をしたのは正常な精神状態ではない為だとする隊長のフォローは、テディの発言から正確さと信用を失わせた。