奪還
夢小説設定
本棚全体の夢小説設定「悪魔執事と黒い猫」の二次創作の本棚です。
まだまだ少ないですが少しずつ増やしていきます。
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審問会が終わってから、しばらく後…。
俺は屋敷の自室に一人で籠っていた。
あの状況で俺だけでも屋敷に戻れるようにしてくれたルカスには、…感謝している。
フィンレイ様を含む大貴族達と密室で交渉した結果、俺の処分は『収監』から『自宅軟禁』に変わったのだった。
俺にとっては、実質的に今までの生活とあまり変わらない。
しかし疲れ切ってしまった俺は、自発的に『自室軟禁』の状態を作っていた。
新たな知能天使の出現、囚われてしまったハウレスに降り掛かるかもしれない最悪の結末。
こんなときこそ、しっかりしないといけないのに…。
皆と一緒に、ハウレスを救う方法を考えないといけないのに。
今はもう、何も考えたくなかった。
2階から1階へと降りる階段近くの廊下で、ベリアンとミヤジは鉢合わせた。
ベリアンは食堂へ、ミヤジも楽器の練習部屋から地下の執事部屋へと戻るところだった。
気持ちを落ち着かせるには楽器を弾くのが一番だ。
空の食器を乗せたトレイを見てミヤジが口を開く。
ハウレスが投獄されてから既に一日が経っており、二度目の夜を迎えていた。
「ベリアン。主様のところに行っていたのかい?」
「はい。…主様は昨日から一人で部屋に籠りきりです。
睡眠どころかお食事もろくに取られていないようで、ロノくんが心配しており…。
先程スープだけでもと、何とか飲んでいただきました。」
「主様の世界は平和だと言っていたからね…。
処刑と聞いただけでも、相当ショックだっただろう。」
「はい…。
主様は社交場が苦手だと仰っていたのに、こちらの世界に来てからずっと頑張ってくれていましたから…。
気持ちが途切れてしまったのでしょうね。」
「ふむ…。しかし、そうなると他の心配も必要になってくるね。」
「『他の心配』と言いますと…?」
ミヤジが言い淀む。
ベリアンとてその意味が分からない訳ではなかった。
大切な主がこのまま部屋から出て来ることなく、知らぬ間に元の世界に戻って帰って来ないのではないかと…。
可能性としては有り得る事だ。
しかしミヤジははっきり口にはせず、何でもないと言って先に階段を降りて行った。
ベリアンもそのことについては何も言わず穏やかな表情で見送った。
主を信じたい気持ちは、二人とも同じなのだ。