新局面
夢小説設定
本棚全体の夢小説設定「悪魔執事と黒い猫」の二次創作の本棚です。
まだまだ少ないですが少しずつ増やしていきます。
不定期更新。
ご利用の端末、あるいはブラウザ設定では夢小説機能をご利用になることができません。
古いスマートフォン端末や、一部ブラウザのプライベートブラウジング機能をご利用の際は、機能に制限が掛かることがございます。
「もぉ…。
大げさに言い過ぎ!
ただ、採寸しているだけでしょ!」
フルーレの喝が飛ぶ。
俺も悪ノリしちゃったけどラトの迫力が凄かったのは本当だ。
「あれ?主様。少しお痩せになりましたね。
ちゃんと食事していますか?」
筋トレの成果かな?
身体を動かすことは食事を見直すきっかけになり、あっちの世界で食事するときもバランスを考えてメニューを選ぶようになった。
プロテイン買っちゃったし。
次の遠征先である7番の古の塔は、北西の山脈地帯にあり標高も高い。
防寒に優れた服が必要だ。
しかも今度の知能天使の調査は何が起こるか分からない為、動きやすい服でなければならない。
自分なら絶対に作れるはずだと言うフルーレは、素材を何にしようか考えながらとても楽しそうだ。
「フルーレは今幸せ?」
「今はすごく幸せですよ!
大事な人の服を考えるなんて、最高の時間です。」
はっきり訊き過ぎたことを後悔した。
執事達は皆、何かしらの絶望を経験している筈だが、普段はそんな素振りを絶対に見せない。
「フルーレの元気が出てよかったです。
昨日は夜、ベッドで泣いていましたから。」
ラトの言葉に、勝手にバラすなとフルーレが慌てる。
悲しい夢を見て昔を思い出したのだと言うフルーレは、大したことないから心配しないでくれと俺に言った。
いつも通り明るく振る舞ってはいるが…、やはりフルーレも過去に色々とあるようだ。
主様…と、ラトが俺の袖を小さく引っ張る。
ラトに他意がないのは知っているけれど、あざと可愛い。
「私にはフルーレと同じ質問をしないのですか?」
少し驚いたけれど、それはそうか…。
公平性を欠いていたと反省する。
俺が改めてラトに訊ねると、予想もしない回答が返ってきた。
「正直…。
『幸せ』というものがよく分かりません。」
ラトは生まれてからそういうものを実感する機会が乏しかったのだと言う。
何と言ったらいいのか…、言葉に詰まる。
フルーレがそれなら何故わざわざ質問させたのか訊くと、自分にも興味を持って欲しかったからだとラトは言った。
これも俺としては意外な回答だった。
ラトがミヤジやフルーレを慕っていることは知っていたが、他の者にはあまり興味を抱かないと思っていたのだ。
しかし興味を持って欲しいということは、少なからず俺にも興味を持っているということだ。
採寸が無事に終わり、俺は地下の執事室を後にした。