長靴の行方
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「それ、長靴っすか?」
ツルツルした素材の靴が雨をはじいていた。
空はどんよりと暗く、パラパラと小さく降る音がする。
「そう、おしゃれ長靴」
ふたつ上の先輩の隣を歩く。
先輩と2,3歩は俺の一歩。
「金田一君も長靴履けばいいのに」
「そんなおしゃれででかい長靴ないっすよ」
俺のサイズの長靴を考えると
鮮魚屋がはいてるようなモノしか浮かばない。
「でも、普通のスニーカーだと
水たまりとか大変じゃない?」
「まあ、濡れないように気を付けるしかないっすね」
実際男子生徒は誰も長靴なんて履いてない。
それは大きさの問題もあるが
おしゃれじゃないからだろう。
男子高校生のプライドもある。
「わかった、私が先に歩いて、
金田一君の歩ける所探してあげるよ」
先輩は面倒見がよくて優しい。
「ありがとうございます!」
俺は元気よく返事する。
先輩は自ら水たまりに入る
「中村先輩?」
「深さを調べています」
梅雨に負けないような笑顔を見せる。
ここだけ太陽が見えるようだ。
なんていうのは恥ずかしけど。
それぐらい先輩は明るい。
「大丈夫っすよ。一応、水たまりは跨げます」
「あっ、背が高き者の余裕。ずるい」
小さなことに一喜一憂する先輩。
部活中はテキパキとドリンク配ったり、
試合は大声で応援してくれたり。
何事も全力で取り組む先輩を尊敬する人も多い。
3年の先輩も気を許してるのが分かる。
車が横を通るたび、
水たまりが小さく揺れる。
道路側を歩く先輩を後ろからゆっくり追いかける。
「先輩、道路側は危ないから俺が歩きます」
場所をちょっと変わるだけだ。
先輩は小さいから車から見えにくいかもしれない。
ぴくっ、と先輩が止まる。
俺を振り向くと口を尖らせて言う
「金田一君って、天然のたらしじゃない?」
「え?」
聞き間違いじゃないよな?
「…たらしすか?違うと思いますけど」
「ふーん…誰にでも優しいんだ。」
先輩が何を言いたいかわからないけど、
追いついた所で並んでゆっくり歩く。
「後ろから刺されても知らないんだから」
「えぇ、なんでですか?」
「自分で考えてくださ~い」
傘をたたんだ先輩が俺の傘に入ってきて
石鹸の香りがふわとした。
「うわっ」
近っ。
「道が狭いから傘ふたつ並んでたら邪魔でしょ?」
「それはそうですけど…」
一列に歩けば問題ないよな?と思ったけど。
俺が先に横を歩いたんだ。
責任は持たないと。
「ちゃんとエスコートしてね」
「は、はぁ…」
エスコートってなにするんだ?
とりあえず、先輩が濡れないように傘を傾けた。
家に帰ってから母親が首をかしげる
「あんたなんで右肩だけ濡れてるの?」
その時初めて、自分が濡れていたことに気づいた。
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