寄り道
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夏休み、部活後の自主練中に
クラスメイトの中村に廊下で出会った。
「おう、お疲れ。夏期講習か?」
「お疲れ様、岩泉。当たり」
クマがうっすら見える。
夜更かしもしてんのか?
「岩泉は部活引退伸ばしてるんだもんね」
俺の格好に目線をずらした中村がそう言った。
部活なことが分かったらしい。
「そうだな、春高って知ってるか?」
「知ってるよ。1月にテレビでやる大きい大会」
「あそこに行く予定だ」
中村が笑顔を見せた。
「応援してる」
「ま、今は自主練に付き合ってるだけだけどな」
「部活自体は終わったんだ?」
「ああ。」
中村が小さくため息をついた
「部活とか懐かしい。引退したばかりなのに
もうずっと昔の事みたい。」
「それだけ日常が忙しいんだろ。」
「そうかも…」
気怠そうに答える。
「なあ、ちょっとこっちついて来いよ」
俺は中村の前を歩きだす。
「え、何?」
ちらっと後ろを向くと、
小柄な中村が少し速足で俺の後に着いて来ている。
ゼンマイで動くおもちゃみてえ。
紙パック自販機の前で止まる。
俺に続いて中村も止まった
「足長っ、歩くの早っ」
「お前より背が高いんだ、当然だろ。」
俺は自販機に硬貨を入れ、迷わずボタンを押した。
ピッ、 ボトッ。 ピッ、 ボトッ。
「ほれ、やる」
紙パックを軽く投げる
「わっ、と。あれ、これ…」
「俺は飲むの初めてだけどな」
パッケージには[ぐんぐん牛乳 レモン風味]と書いてある。
「よし、またついて来い。」
今度は少し走る。
今日ぐらい先生には見つかんねえだろ。
「え、岩泉、ちょっと!!」
後ろからする声が廊下に響く。
一度立ち止まって振り向くと、中村は立ち止まったままだ。
「早く来ねえと置いてくぞ」
俺はそこから速足で体育館へ向かった。
「おう、よく頑張ったな」
「私…、元…文化部…なんですけど?」
息を切らして少し鋭い目でを見上げてきた。
「そんなこと知ってるぞ」
俺はニカッと笑って体育館へ入った。
中村は体育館を覗き込みながら一礼して
恐る恐る入ってきた。
コート上には散らばったボールと及川が立っている。
俺は観客席に上がる。
その後に中村も着いて来た。
「喉渇いたろ、飲んでいいぞ」
先ほど買った紙パックジュースに
ストローを差し込むと俺は一気に吸い上げた。
「…思ったより酸っぱいな、コレ」
「これが、癖になるんだよ」
中村は俺の隣に立って柵にもたれた。
「岩泉、なんでこんなこと?」
訳がわからないといった顔で俺を見上げる。
「いいから、『及川ナイッサー』ってでかい声出してみ?」
「ええ?なにそのハラスメント」
表情が呆れ顔に変わる。
「及川ナイッサー」
俺が先にでかい声を出す。
コートの及川が動き出し、スパイクサーブを決める。
「えええ、あんな勢い?やばくない?」
サーブの勢いに驚く中村がおもしれえ。
中村が自分の口の横に手を当てた
「及川君っ、ナイッサー」
及川は一度こっちをチラ見した後、さっきより
勢いよくサーブを叩きこむ。
「うひー。迫力ありすぎ!」
「だろ?」
俺は少し得意げに言った。
「岩泉は、やんないの?」
「見てえのか?」
「見たい!」
直球でくる中村に
少し考えるふりをして
「今度な」
そう言って笑った。
「岩泉、ジュースご馳走様」
「おう」
「あと…、ありがとう」
「今日は風呂入ったら早く寝ろ。じゃあな」
中村は体育館の出口までつくと、
振り返って俺に小さく手を振った。
俺は及川の自主練を止めにコートへ戻った。
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