初夏の眠気
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「休憩15分なー」
額から落ちる汗を腕を上げ、Tシャツの袖で拭った。
ストレッチするやつ、談笑するやつ、
モップ掛けするやつがいる。
体育館はいつも以上に踏ん張りがききにくい。
蒸し暑く、外からは雨の音が聞こえた。
「岩ちゃん、英語の参考書、借りたいんだけど、ダメ?」
「マジか」
参考書は教室のロッカーの中だ。
「お前、自分の早く買い直せよ」
俺はそう言って教室に戻ることになった。
バレーシューズの音が廊下に響き渡る。
人のいない校舎を歩くなんて普段ではありえねえ。
雨の音は体育館より強く響いて聞こえていた。
3-5と表示された教室、
見慣れない時間帯の慣れた教室を確認すると
勢いよく扉を開ける。
机にうつぶせの生徒が視界に入った。
中村だ。
自分のロッカーには向かわずに声をかけた
「お疲れ、お前何してんだ」
中村の席に近づいていく。
声をかけたにも関わらず、中村は返事もしない。
「中村?」
机の前まで近づいて気づく
規則的に背中が小さく上下している。
首は窓側に向けられ中村は動かない。
窓側の方から顔を覗き込んでみると
目は閉じられ、小さく口が開いている。
マジかよ。
「中村?寝てんのか?」
さっきより小声で呼びかける。
教室に俺の声だけが響く。
中村は動かないままだ。
手で口元を覆う。
でも視線は中村の寝顔から目を逸らせない。
だれてる姿を見たことはねえ。
いつも背筋を伸ばして黒板を見てる。
学級委員でいつもてきぱきしてる。
幼く見えんな。
っていうか眼鏡外した顔見たことねえかも。
まつ毛、目頭の眼鏡の痕、薄く開いた唇…。
急にビクッとして一歩後ろに下がり、
目線は窓を向ける。
女子の寝顔なんてまじまじ見ちゃいけねえだろ。
教室後ろのロッカーまでゆっくりと移動して参考書を取り出すと、
その位置から大きく咳ばらいをして声を出した。
「中村、お疲れ」
肩がピクッと動いて、上半身がゆっくりと持ち上がる。
少し遠めにそれを見つめる。
左右に首を振った中村が眼鏡をかけて振り返った。
「…岩泉くん?」
「おう、お疲れ。寝てたのか?」
「…ちょっと記憶ないかも」
いつもとは違うやんわりした口調で俺の返事に応える。
「こんなとこで寝るな。風邪ひくぞ。あと…」
俺は教室の出口につま先を向けて軽く振り返る
「あぶねえぞ。じゃあな」
前に向き直ると中村の顔も見ずに教室を出た。
なにが「あぶねえぞ」だ。あぶねえのは俺じゃねえか。
休憩時間も残り少ない。
参考書を抱えながら俺は体育館へ急いだ。
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