逢坂紘夢
紘夢くんと#name#ちゃんがデートする話
「ねえ、あの人かっこよくない?1人かな?」
某ターミナル駅の待ち合わせスポット前。耳障りな雑踏の中で逢坂紘夢は文庫本を読みながら彼女を待っていた。待ち合わせは12時からなのだが、かれこれ2時間前から待っている。
いくら#name#の動向を盗聴などでチェックしているとはいえ、準備前の様子を見るのはマナー違反だし、なにより楽しみが減ってしまう。だからあえて2時間前からこうして待っているのだ。
今は11:30。まだ余裕はあるが待ち合わせまでもう少しだ。
「あのー、お兄さん。さっきからここにいますけど暇なんですか?」
「私、1時間前にも通ったんですけどいましたよね?」
20代前半に見える女性2人が目の前で止まった。まったくもって耳障りだ。#name#ちゃんに目撃されたらどうする気だ。即刻消えて欲しい。
「…。人を待ってますので…。」
「えー、だって、1時間前から待ってるんですよね?」
「絶対すっぽかされてるじゃん」
「………いえ、早く着いて待ってるだけなので。何か問題でも?」
「そ、そうですか」
「いこいこ」
女性2人は紘夢の面倒くさそうなオーラに気圧されて逃げるように去っていった。
「お、に、い、さん?」
「?!」
去っていった女性2人を見届けて間もなく、死角から肩をつつかれた。
「#name#ちゃん?!」
「紘夢くんもすみにおけないねぇ」
#name#はいたずらっぽくにやけた。
「み、見てたの?!」
「うん、助けてあげられなくてごめんね?」
「い、いや…僕は大丈夫…だけど…」
「なんか午前中に予定でもあったの?」
「そういうわけではないけど、なんとなく早く着いちゃったんだ。」
「そっか。私もなんか早く着いちゃったんだ。」
紘夢は時計を確認した。約束の25分前だ。
「あれ?今日の服…見たことないやつだね?」
「そう?紘夢くんと遊ぶのこれで2回目だからまだ見せてない服たくさんあるけど…」
「あ、いや…ええと…。なんとなくおろしたてなのかな?と思ったんだ。」
「うん!変じゃない?」
#name#はその場でちまちま歩いて回って見せた。
少しスカートの丈が短いのが気になったが、彼女の趣味に口を出す気は無いので口をつぐんだ。恐らく最近お気に入りのブランドをネットで買っているのだろう。
「とってもかわいいよ。じゃあ少し早いけど行こうか。」
「よっしゃー!」
#name#は元気よく腕を上げると、我に返って恥ずかしそうに笑った。
中学生の頃の彼女は女子生徒とばかり仲良くしていて、その中でも活発な方だったらしい。たまに彼女のそういった一面をみると、彼女の過去と繋がれたみたいで嬉しくなる。
「混んでるから手を繋ごうか。」
「え…手繋ぐの?」
「…ごめん。まだ知り合って2ヶ月なのに…失礼だったね?」
「い、いや!なんか手まで繋いじゃうとカップルみたいに見えちゃうかなーって思っただけ!」
「僕は気にしないよ?」
紘夢は震える手で#name#の手を恐る恐る握った。
「ああ…小さいな…」
「紘夢くんの手は大きいね?」
耐えきれなくて手を繋いでしまったが、本当に良かったのだろうか?いつもよりうわずった声が出てしまう。
ーーーーーーーーーーーー
「ご飯、ご馳走してもらっちゃってごめんね?それにお揃いのシャーペンも買って貰っちゃって…」
「全然大丈夫だよ。」
彼女が気になっている店や物は全てリサーチ済みだ。
欲しいものを買うために夏休みにアルバイトをするか迷っていると女友達に電話で話しているようだったから、今回はそれを阻止するための買い物でもあった。
今は彼女が以前いいねしていたカフェのパンケーキを食べている。
「正直、最初は趣味合わないかなぁなんて思ってたんだけど、紘夢くんも好きだったんだね?」
#name#はお揃いのシャーペンを嬉しそうに眺めた。彼女の好きなサンネックスのキャラが描かれている。本当はまたぬいぐるみをプレゼントしようと思ったが、あまりぬいぐるみは買わない主義らしい。
「うん。実は僕も好きなんだ。ほら、かわいいでしょ?」
紘夢はスマホのロック画面を見せた。ロック画面の空白の部分に小さくキャラが座っているデザインだ。男性が使ってても自然に見えるデザインを探すのに苦労したが、元々好きだったとアピールするにはこれしかないと思った。
「えー!かわいい!意外すぎるよー!」
#name#は目をきらきらさせている。
「良かったらこれもお揃いにする?」
「あ…ごめんね。今友達とお揃いにしてて…」
#name#はロック画面を見せた。
どこかの桜の写真だ。建物は写っていない。
「今年の桜…かな?」
実は以前から桜の写真を使っていたのは把握していたのだが、もう6月だからそろそろ変える頃だろうと思い提案したのだ。
「うん。入学式の時に斗真と撮ったの。」
「ああ…如月ね。」
「幼稚園から一緒なんだけどね。中学の時はあんまり話してなかったんだけど、同じ高校行くって知ってからまた遊ぶようになったんだ。」
「…そう。どこの桜?」
「藤城高の!横に並べると繋がって見えるように斗真が加工してくれたんだ。」
紘夢は机の下で爪を立てた。太ももにギリギリと爪が食い込む。
「それいいね。いつかいい写真が撮れたら僕とお揃いにしようよ。」
「じゃあ次は景色がいい所に遊びに行こうか!」
「楽しみだな」
如月の悔しがる顔が目に浮かぶ。来月は大きな公園に遊びに行こうと思った。
「ねえ、あの人かっこよくない?1人かな?」
某ターミナル駅の待ち合わせスポット前。耳障りな雑踏の中で逢坂紘夢は文庫本を読みながら彼女を待っていた。待ち合わせは12時からなのだが、かれこれ2時間前から待っている。
いくら#name#の動向を盗聴などでチェックしているとはいえ、準備前の様子を見るのはマナー違反だし、なにより楽しみが減ってしまう。だからあえて2時間前からこうして待っているのだ。
今は11:30。まだ余裕はあるが待ち合わせまでもう少しだ。
「あのー、お兄さん。さっきからここにいますけど暇なんですか?」
「私、1時間前にも通ったんですけどいましたよね?」
20代前半に見える女性2人が目の前で止まった。まったくもって耳障りだ。#name#ちゃんに目撃されたらどうする気だ。即刻消えて欲しい。
「…。人を待ってますので…。」
「えー、だって、1時間前から待ってるんですよね?」
「絶対すっぽかされてるじゃん」
「………いえ、早く着いて待ってるだけなので。何か問題でも?」
「そ、そうですか」
「いこいこ」
女性2人は紘夢の面倒くさそうなオーラに気圧されて逃げるように去っていった。
「お、に、い、さん?」
「?!」
去っていった女性2人を見届けて間もなく、死角から肩をつつかれた。
「#name#ちゃん?!」
「紘夢くんもすみにおけないねぇ」
#name#はいたずらっぽくにやけた。
「み、見てたの?!」
「うん、助けてあげられなくてごめんね?」
「い、いや…僕は大丈夫…だけど…」
「なんか午前中に予定でもあったの?」
「そういうわけではないけど、なんとなく早く着いちゃったんだ。」
「そっか。私もなんか早く着いちゃったんだ。」
紘夢は時計を確認した。約束の25分前だ。
「あれ?今日の服…見たことないやつだね?」
「そう?紘夢くんと遊ぶのこれで2回目だからまだ見せてない服たくさんあるけど…」
「あ、いや…ええと…。なんとなくおろしたてなのかな?と思ったんだ。」
「うん!変じゃない?」
#name#はその場でちまちま歩いて回って見せた。
少しスカートの丈が短いのが気になったが、彼女の趣味に口を出す気は無いので口をつぐんだ。恐らく最近お気に入りのブランドをネットで買っているのだろう。
「とってもかわいいよ。じゃあ少し早いけど行こうか。」
「よっしゃー!」
#name#は元気よく腕を上げると、我に返って恥ずかしそうに笑った。
中学生の頃の彼女は女子生徒とばかり仲良くしていて、その中でも活発な方だったらしい。たまに彼女のそういった一面をみると、彼女の過去と繋がれたみたいで嬉しくなる。
「混んでるから手を繋ごうか。」
「え…手繋ぐの?」
「…ごめん。まだ知り合って2ヶ月なのに…失礼だったね?」
「い、いや!なんか手まで繋いじゃうとカップルみたいに見えちゃうかなーって思っただけ!」
「僕は気にしないよ?」
紘夢は震える手で#name#の手を恐る恐る握った。
「ああ…小さいな…」
「紘夢くんの手は大きいね?」
耐えきれなくて手を繋いでしまったが、本当に良かったのだろうか?いつもよりうわずった声が出てしまう。
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「ご飯、ご馳走してもらっちゃってごめんね?それにお揃いのシャーペンも買って貰っちゃって…」
「全然大丈夫だよ。」
彼女が気になっている店や物は全てリサーチ済みだ。
欲しいものを買うために夏休みにアルバイトをするか迷っていると女友達に電話で話しているようだったから、今回はそれを阻止するための買い物でもあった。
今は彼女が以前いいねしていたカフェのパンケーキを食べている。
「正直、最初は趣味合わないかなぁなんて思ってたんだけど、紘夢くんも好きだったんだね?」
#name#はお揃いのシャーペンを嬉しそうに眺めた。彼女の好きなサンネックスのキャラが描かれている。本当はまたぬいぐるみをプレゼントしようと思ったが、あまりぬいぐるみは買わない主義らしい。
「うん。実は僕も好きなんだ。ほら、かわいいでしょ?」
紘夢はスマホのロック画面を見せた。ロック画面の空白の部分に小さくキャラが座っているデザインだ。男性が使ってても自然に見えるデザインを探すのに苦労したが、元々好きだったとアピールするにはこれしかないと思った。
「えー!かわいい!意外すぎるよー!」
#name#は目をきらきらさせている。
「良かったらこれもお揃いにする?」
「あ…ごめんね。今友達とお揃いにしてて…」
#name#はロック画面を見せた。
どこかの桜の写真だ。建物は写っていない。
「今年の桜…かな?」
実は以前から桜の写真を使っていたのは把握していたのだが、もう6月だからそろそろ変える頃だろうと思い提案したのだ。
「うん。入学式の時に斗真と撮ったの。」
「ああ…如月ね。」
「幼稚園から一緒なんだけどね。中学の時はあんまり話してなかったんだけど、同じ高校行くって知ってからまた遊ぶようになったんだ。」
「…そう。どこの桜?」
「藤城高の!横に並べると繋がって見えるように斗真が加工してくれたんだ。」
紘夢は机の下で爪を立てた。太ももにギリギリと爪が食い込む。
「それいいね。いつかいい写真が撮れたら僕とお揃いにしようよ。」
「じゃあ次は景色がいい所に遊びに行こうか!」
「楽しみだな」
如月の悔しがる顔が目に浮かぶ。来月は大きな公園に遊びに行こうと思った。