ネズユウ 一覧
Name
ご利用の端末、あるいはブラウザ設定では夢小説機能をご利用になることができません。
古いスマートフォン端末や、一部ブラウザのプライベートブラウジング機能をご利用の際は、機能に制限が掛かることがございます。
今日はあくタイプのポケモンについての雑誌の取材をネズさんと受けた。
ネズさんはいつも通りロックな見た目に丁寧な言葉遣いだ。私も、ネズさんに合わせていつもよりロックな服で来た。
取材が終わったところで、写真を撮ってもらうことになった。
「もっと寄ってくださーい」
カメラマンが指示を出す。私はネズさんに近寄るのがどうしても恥ずかしかった。
「ユウリさん表情固いですよー」
「一旦休憩入ります!」
私の顔が汗ばみ始めてしまったため、休憩に入った。メイクさんが粉をはたきにくる。
隣ではネズさんも粉をはたかれていた。
「ネズさん汗かくの珍しいですね」
私が声をかけるとネズさんは照れ笑いをした。
「ユウリこそ」
返す言葉がなく、二人の間に沈黙が流れた。
「撮影始めまーす」
どこからか声がかかると、ワラワラとスタッフが私たちを取り囲む。真っ白な照明が光り、目を眩ませるが必死に目をこじ開ける。
そして必死に笑顔を作ったが、カメラマンは「まだ表情固いんだよなー」と言って頭をかいた。
「別に笑顔じゃなくていいんじゃないですか」
横でネズさんが呟いた。ネズさんの方を見ると彼は特に笑顔を作らず、いつもの気だるげな表情をしていた。
「まあ確かに、ユウリさんはクールなイメージもあるし、無理に笑顔じゃなくていいんですよねー」
カメラマンはそう言いながらカシャカシャと連写を続けていた。ただ、リーグ運営の人(私のマネージャーのような人)は「女の子だし、できたら可愛い感じに撮りたいんですけどねー」と、困った様子を見せていた。
「可愛いじゃないですか、彼女」
ネズさんは私の肩に手を置いて、ポンポンと叩いた。
「えっ!」
私はよろけて、あわあわとした。なにか言おうとしても、なにも言葉が出てこない。
「クールなイメージ…かなぁ…」
カメラマンの言葉で、スタッフ全員が笑い出した。つられて私もケラケラ笑うと、ネズさんはすかさず身体を寄せて、カメラに向けて指を指すポーズをした。
それをカメラマンは逃さずシャッターに収めた。
「ほら、いい笑顔してますよ」
ネズさんは出来上がりの写真を見てニヤリと笑った。確かに、いい写真だ。自分の写真うつりの良さに自分で驚いた。
「あれって、わざとやったんですか?」
正直、「彼女、可愛いじゃないですか」は本気であって欲しい、そう期待をこめてネズさんの顔を覗いた。
「ま、まあ………いや………えっと……」
ネズさんは言葉を濁して、控え室に行ってしまった。「どっちだったんだろう」と思いながらも、私も控え室に戻ることにした。
控え室にはお高めのクッキーが缶に入って置いてあった。差し入れかな、と思い缶を手に取ると、缶の置いてあった場所に「お疲れ様です ネズ」と書かれたメッセージカードがあるのを見つけた。相変わらず見た目に反して律儀でマメな人だ。お礼を伝えにネズさんの控え室に行くことにした。
控え室のドアをノックすると、中からネズさんがボソボソとなにかを喋っているのが聞こえたが、「どうぞ」の声は無かった。
何度かノックをして声をかけたが、ネズさんは同じ調子だ。私は大きめに「入りますよ」と言ってドアを開けた。
目に飛び込んできたのは、控え室の椅子に座って音楽を聞いているネズさんだった。手に写真のようなものを持っている。ライブの練習中だろうか。こちらに気づく様子はない。
私はネズさんの背後から写真を覗き込んだ。
「え……」
私の写真?
場所は恐らくスパイクタウンで、ネズさんのジムチャレンジに挑んでいる時の私だった。
「ネズさん…」
「わっ!!!!びっくりしたぁっ!!!!!」
距離が近すぎたのか、ネズさんは椅子から転げ落ちてスマホロトムを落としてしまったが、床に落ちる直前に、スマホロトムは浮き上がり、またネズさんの手に納まった。
床には私の写真だけが落ちた。
よく見ると机の上のクリアファイルにも私の写真が数枚挟まっていた。リーグカードの写真や、誰かと話している時の写真など、いろいろな場面がおさめられていた。
「あ、あ…………」
ネズさんは言葉が出ないようだ。しかし言葉が出ないのは私も同じだった。
落ちた写真を拾おうと手を伸ばすと、ネズさんはハッとして私より先に写真を取った。
「写真……私の?」
ネズさんは終始困ったという顔をしている。
「あなたの曲を……作ろうと思ってるんです」
ネズさんはスマホロトムからイヤホンを抜いた。スマホロトムからは、爆音のギターとドラム、ベースが流れた。
ネズさんらしい曲調だ。
しかし、肝心のネズさんのボーカルが無かった。
さっきぼそぼそとなにかを言っていたのは歌詞を考えている時の独り言らしい。
「……私の曲?」
「いえ、あの、あなたの名前は出しません」
ネズさんはスマホロトムの音を消した。
またしばらく沈黙が流れた。
「…どんな曲なんですか?」
空気に耐えられず、私は聞いてみた。
ネズさんはしばらく黙っていたが、意を決したように立ち上がり、こちらを見た。
「今度のライブ、見に来てください。」
それだけ言うと、そそくさと控え室を出ていってしまった。バックも持っていったということは、恐らく帰ったのだろう。
「あ、お菓子のお礼…」
あまりの展開にお礼をすっかり忘れていた。今度のライブでなにかお返しを持っていこう。私ももう帰ることにした。
----------------------------------------------------
ライブ当日。
私はなんとなく早く着いてポケモン達と遊んでライブの時間まで待っていた。私の緊張に気がついたサーナイトは不安そうにしている。
「珍しいお客さんやね」
後ろから聞き覚えのある声がした。
「マリィ、来てたの?」
「まあね、今日は兄貴の晴れ舞台やけん」
「マリィさん!ダメですよ!」
エール団の1人が割って入ってきた。
マリィは一瞬「え?」という顔をしたが、なにかを察したようだ。
「じ、じゃあ用事があるからこれで。今日はジムチャレンジも休みにしとるけん。」
マリィはそれだけ言うと、ライブ会場の方に走っていってしまった。
割り込んだエール団の1人も、その後を走った。
「…そろそろ行こうかな」
私はポケモン達をボールにしまって、ライブ会場に向かった。
ライブがこれから始まるというのに、いやに静かだ。
エール団、もといスパイクタウンの住人1人も見当たらない。物販ももぬけの殻だ。マリィもどこかに行ってしまったようだ。
ミキサーの場所には唯一1人エール団が居たが、ヘッドホンをしているため話しかけられそうもない。
「あれ、本当に今日…?」
ライブの日程を確認しようとポケットに手を入れた時、会場が真っ暗になった。スポットライトがステージに降り注ぎ、ネズさんがいつものようにスタンドマイクをもって立っていた。
「あー………今日は来てくれてありがとう。
見ての通りあなたの為のライブです。
楽しんでいってください。
………恥ずかしいので、例の新曲披露します。」
ネズさんは一呼吸置くと、目をかっひらいた。ライブの時のいつもの表情だ。
今、あなたのために歌うよ
あなたへの気持ちをぶつけるよ
聞いてくれ、これしか方法はないんだ
ジムチャレンジで俺は完敗だった
それからあなたに勝ちたくて、たくさん努力した
こっそり練習も見に行った
いつも愛想笑いしてるあなたは生き生きとした笑顔を見せていた
俺のライブに前に1度来てくれた時
その時もそうだ 素敵な笑顔
俺はその時からあなたが好きだ
ラブソングなんか作るつもりもなかったのに
この有り様だ
最強のガラルチャンピオン
挑むやつは大勢いる
恋愛もポケモンも、ライバルばかりだ
遊びに行きたい ライブ以外でもあなたを笑顔にできる男になりたい
そのために俺を愛してくれ
俺も君を愛すから
ネズさんのシャウトが終わり、曲が終わった。
私は、どんな反応をすべきなのか最後まで分からなかった。ネズさんと付き合いたい、その思いをどう伝えればいいか分からなかったが……
「ネ……ネズさーーーーん!!!」
私は声を必死に張り上げた。
気がついたら叫んでいた。
ネズさんは一瞬驚いたが、マイクを私に渡した。
「一生!!!!幸せに!!!……し、してください!!!!!」
キーーンとハウリングがこだまする。
ネズさんは私を抱きしめた。ナイスシャウト、と言って私の頭を撫でた。後ろの方から歓声が聞こえた。
「私も、ネズさんのこと好きだったんですよ………初めてライブを見た時から」
ネズさんは安らいだ顔を見せた。私たちは抱き合ったまま、しばらくこのままでいた。
ネズさんはいつも通りロックな見た目に丁寧な言葉遣いだ。私も、ネズさんに合わせていつもよりロックな服で来た。
取材が終わったところで、写真を撮ってもらうことになった。
「もっと寄ってくださーい」
カメラマンが指示を出す。私はネズさんに近寄るのがどうしても恥ずかしかった。
「ユウリさん表情固いですよー」
「一旦休憩入ります!」
私の顔が汗ばみ始めてしまったため、休憩に入った。メイクさんが粉をはたきにくる。
隣ではネズさんも粉をはたかれていた。
「ネズさん汗かくの珍しいですね」
私が声をかけるとネズさんは照れ笑いをした。
「ユウリこそ」
返す言葉がなく、二人の間に沈黙が流れた。
「撮影始めまーす」
どこからか声がかかると、ワラワラとスタッフが私たちを取り囲む。真っ白な照明が光り、目を眩ませるが必死に目をこじ開ける。
そして必死に笑顔を作ったが、カメラマンは「まだ表情固いんだよなー」と言って頭をかいた。
「別に笑顔じゃなくていいんじゃないですか」
横でネズさんが呟いた。ネズさんの方を見ると彼は特に笑顔を作らず、いつもの気だるげな表情をしていた。
「まあ確かに、ユウリさんはクールなイメージもあるし、無理に笑顔じゃなくていいんですよねー」
カメラマンはそう言いながらカシャカシャと連写を続けていた。ただ、リーグ運営の人(私のマネージャーのような人)は「女の子だし、できたら可愛い感じに撮りたいんですけどねー」と、困った様子を見せていた。
「可愛いじゃないですか、彼女」
ネズさんは私の肩に手を置いて、ポンポンと叩いた。
「えっ!」
私はよろけて、あわあわとした。なにか言おうとしても、なにも言葉が出てこない。
「クールなイメージ…かなぁ…」
カメラマンの言葉で、スタッフ全員が笑い出した。つられて私もケラケラ笑うと、ネズさんはすかさず身体を寄せて、カメラに向けて指を指すポーズをした。
それをカメラマンは逃さずシャッターに収めた。
「ほら、いい笑顔してますよ」
ネズさんは出来上がりの写真を見てニヤリと笑った。確かに、いい写真だ。自分の写真うつりの良さに自分で驚いた。
「あれって、わざとやったんですか?」
正直、「彼女、可愛いじゃないですか」は本気であって欲しい、そう期待をこめてネズさんの顔を覗いた。
「ま、まあ………いや………えっと……」
ネズさんは言葉を濁して、控え室に行ってしまった。「どっちだったんだろう」と思いながらも、私も控え室に戻ることにした。
控え室にはお高めのクッキーが缶に入って置いてあった。差し入れかな、と思い缶を手に取ると、缶の置いてあった場所に「お疲れ様です ネズ」と書かれたメッセージカードがあるのを見つけた。相変わらず見た目に反して律儀でマメな人だ。お礼を伝えにネズさんの控え室に行くことにした。
控え室のドアをノックすると、中からネズさんがボソボソとなにかを喋っているのが聞こえたが、「どうぞ」の声は無かった。
何度かノックをして声をかけたが、ネズさんは同じ調子だ。私は大きめに「入りますよ」と言ってドアを開けた。
目に飛び込んできたのは、控え室の椅子に座って音楽を聞いているネズさんだった。手に写真のようなものを持っている。ライブの練習中だろうか。こちらに気づく様子はない。
私はネズさんの背後から写真を覗き込んだ。
「え……」
私の写真?
場所は恐らくスパイクタウンで、ネズさんのジムチャレンジに挑んでいる時の私だった。
「ネズさん…」
「わっ!!!!びっくりしたぁっ!!!!!」
距離が近すぎたのか、ネズさんは椅子から転げ落ちてスマホロトムを落としてしまったが、床に落ちる直前に、スマホロトムは浮き上がり、またネズさんの手に納まった。
床には私の写真だけが落ちた。
よく見ると机の上のクリアファイルにも私の写真が数枚挟まっていた。リーグカードの写真や、誰かと話している時の写真など、いろいろな場面がおさめられていた。
「あ、あ…………」
ネズさんは言葉が出ないようだ。しかし言葉が出ないのは私も同じだった。
落ちた写真を拾おうと手を伸ばすと、ネズさんはハッとして私より先に写真を取った。
「写真……私の?」
ネズさんは終始困ったという顔をしている。
「あなたの曲を……作ろうと思ってるんです」
ネズさんはスマホロトムからイヤホンを抜いた。スマホロトムからは、爆音のギターとドラム、ベースが流れた。
ネズさんらしい曲調だ。
しかし、肝心のネズさんのボーカルが無かった。
さっきぼそぼそとなにかを言っていたのは歌詞を考えている時の独り言らしい。
「……私の曲?」
「いえ、あの、あなたの名前は出しません」
ネズさんはスマホロトムの音を消した。
またしばらく沈黙が流れた。
「…どんな曲なんですか?」
空気に耐えられず、私は聞いてみた。
ネズさんはしばらく黙っていたが、意を決したように立ち上がり、こちらを見た。
「今度のライブ、見に来てください。」
それだけ言うと、そそくさと控え室を出ていってしまった。バックも持っていったということは、恐らく帰ったのだろう。
「あ、お菓子のお礼…」
あまりの展開にお礼をすっかり忘れていた。今度のライブでなにかお返しを持っていこう。私ももう帰ることにした。
----------------------------------------------------
ライブ当日。
私はなんとなく早く着いてポケモン達と遊んでライブの時間まで待っていた。私の緊張に気がついたサーナイトは不安そうにしている。
「珍しいお客さんやね」
後ろから聞き覚えのある声がした。
「マリィ、来てたの?」
「まあね、今日は兄貴の晴れ舞台やけん」
「マリィさん!ダメですよ!」
エール団の1人が割って入ってきた。
マリィは一瞬「え?」という顔をしたが、なにかを察したようだ。
「じ、じゃあ用事があるからこれで。今日はジムチャレンジも休みにしとるけん。」
マリィはそれだけ言うと、ライブ会場の方に走っていってしまった。
割り込んだエール団の1人も、その後を走った。
「…そろそろ行こうかな」
私はポケモン達をボールにしまって、ライブ会場に向かった。
ライブがこれから始まるというのに、いやに静かだ。
エール団、もといスパイクタウンの住人1人も見当たらない。物販ももぬけの殻だ。マリィもどこかに行ってしまったようだ。
ミキサーの場所には唯一1人エール団が居たが、ヘッドホンをしているため話しかけられそうもない。
「あれ、本当に今日…?」
ライブの日程を確認しようとポケットに手を入れた時、会場が真っ暗になった。スポットライトがステージに降り注ぎ、ネズさんがいつものようにスタンドマイクをもって立っていた。
「あー………今日は来てくれてありがとう。
見ての通りあなたの為のライブです。
楽しんでいってください。
………恥ずかしいので、例の新曲披露します。」
ネズさんは一呼吸置くと、目をかっひらいた。ライブの時のいつもの表情だ。
今、あなたのために歌うよ
あなたへの気持ちをぶつけるよ
聞いてくれ、これしか方法はないんだ
ジムチャレンジで俺は完敗だった
それからあなたに勝ちたくて、たくさん努力した
こっそり練習も見に行った
いつも愛想笑いしてるあなたは生き生きとした笑顔を見せていた
俺のライブに前に1度来てくれた時
その時もそうだ 素敵な笑顔
俺はその時からあなたが好きだ
ラブソングなんか作るつもりもなかったのに
この有り様だ
最強のガラルチャンピオン
挑むやつは大勢いる
恋愛もポケモンも、ライバルばかりだ
遊びに行きたい ライブ以外でもあなたを笑顔にできる男になりたい
そのために俺を愛してくれ
俺も君を愛すから
ネズさんのシャウトが終わり、曲が終わった。
私は、どんな反応をすべきなのか最後まで分からなかった。ネズさんと付き合いたい、その思いをどう伝えればいいか分からなかったが……
「ネ……ネズさーーーーん!!!」
私は声を必死に張り上げた。
気がついたら叫んでいた。
ネズさんは一瞬驚いたが、マイクを私に渡した。
「一生!!!!幸せに!!!……し、してください!!!!!」
キーーンとハウリングがこだまする。
ネズさんは私を抱きしめた。ナイスシャウト、と言って私の頭を撫でた。後ろの方から歓声が聞こえた。
「私も、ネズさんのこと好きだったんですよ………初めてライブを見た時から」
ネズさんは安らいだ顔を見せた。私たちは抱き合ったまま、しばらくこのままでいた。