千早と雪歩
Name
ご利用の端末、あるいはブラウザ設定では夢小説機能をご利用になることができません。
古いスマートフォン端末や、一部ブラウザのプライベートブラウジング機能をご利用の際は、機能に制限が掛かることがございます。
「lapis lazuliのお二人のデビューシングル、Little match girlでした!」
「デビューシングル、良かったら聞いてみてください!」
「6月発売ですぅ!youtuveでfullversionが聴けるので、よかったらそちらでもどうぞ!」
カオルは、lapis lazuliの出演した深夜番組の録画を事務所で確認していた。
外の暗さのせいで、事務所も少し薄暗かった。小鳥さんも含めて、全ての人が帰った後だった。
実はテレビで歌を披露出来たのは雪歩だけでなく千早も初めてだった。だから、2人ともいつも以上に高いポテンシャルで収録に挑めたのではないかと思う。カオルは何度も彼女達の歌を聴いて、惚れ惚れしていた。
今回のテレビ出演の反響は予想していた通り、Twitterや実況板などで少し話題になった程度だった。しかし、いつかは…カオルは期待に胸を膨らませていた。
カオルが部屋の電気とテレビの電源を切って、帰ろうとと自分の席へバックを取りに戻ろうとしたところ、事務所の出入口のドアノブがガチャガチャと鳴った。
「だ、だれ?!」
「あ、あの。プロデューサーですか?」
「千早?」
ドアを隔てていてよくわからなかったが、確かに千早の声が聞こえた。千早がドアを開けると、薄ぼんやりながら千早がこちらを見ているのがわかった。
「ち、千早!今何時だと…」
「すみません!レッスンルームで電気を消して音楽を聴いていたらいつのまにか…」
カオルがスマホで時間を確認すると24時を回っていた。
「とりあえず、ここからでよう」
カオルは急いで荷物をまとめると、千早を連れて外に出た。
「千早は○△で一人暮らしだったよね?終電は…」
千早は今の状況を飲み込めず、困惑しているようだ。
「あと10分で終電だ…千早、今日は」
「か、帰ります!」
走って帰ろうとする千早を、カオルは急いで制止した。
「ま、待って。今日は家に泊まっていきなさい。」
「でも…」
「駅から歩くでしょ。危ないから。」
千早は口ごもっていたが、しばらく経つと申し訳なさそうに頷いた。
「よろしくお願いします。」
ーーーーーーーーーーーーーーー
「ごはん、簡単だけどチャーハンでいい?」
「あ、お腹はあまり空いてなくて…」
「今日お昼しか食べてないでしょ?ちょっとお風呂入って待ってなさい」
カオルは千早の頭を撫でると、タオルと着替えを渡し、お風呂のある部屋を指さした。
千早は言われるがままにシャワーを浴びた。
カオルはチャーハンを作りながら、明日が土曜で良かったと考えていた。よく考えたら千早は高校生だった。
千早はなぜ高校生で一人暮らしなのだろう。詳しい事情は聞いていないが、両親が離婚してから一人暮らしになったらしい。
フライパンからソーセージとごま油のいい匂いがした。遅めの夕食だが、千早には前々からちゃんとしたものを食べて欲しかった。
「あがりました。ありがとうございます。」
そうこう考えているうちに、千早がお風呂から上がった。
「チャーハン、できたよ」
カオルはチャーハンとスプーンを机に並べた。千早はただ呆然とその様子を見ていた。
「どうしたの?」
「あ、いや…。こういうの、久しぶりで」
千早は困った顔をして、机の前でちょこんと座った。
「たくさん食べてね。」
カオルがにっこり微笑むと、千早はまたぼーっとした表情になって、その顔のまま涙を浮かべた。
「すみません。」
「私、お母さんに似てる?」
カオルが笑って見せても、千早は泣くことを止めなかった。
「似てない…です。歳も全然違うじゃないですか」
なにも言わない方がいいのかもしれないと考えて、カオルはなにも言わずにチャーハンを食べた。
千早は涙を流しながらも、チャーハンを少しずつ口に入れた。
カオルがチャーハンを食べ終わる頃には千早の涙は引っ込んでいた。あまり美味しそうには食べてくれてはいなかった。
「千早、チャーハン嫌だった?」
千早は首を横にぶんぶんと振ると「美味しかったです」と言った。
「本当に…ありがとうございます。普段自炊しないので、すごく懐かしい気分になりました。」
その後、千早はポツポツと母親の話をしてくれた。
自分の歌を認めてくれていたこと、最近は顔を合わせると喧嘩ばかりしてしまうこと、離婚する前は美味しいご飯を作って貰っていたこと…
それらを話し終わった頃、千早はチャーハンを食べ終わっていた。
「たまには泊まりに来る?」
「いえ、そういうわけには…」
「私も寂しいし。今度は雪歩も連れてくる?」
「萩原さんは…お家が厳しいんじゃないかしら。」
チャーハンを食べ始めてから、初めて千早が笑ってくれた。カオルも笑みがこぼれた。
「lapis lazuli初お披露目の時、お弟子さんとか来て大変だったもんね」
「じゃあ、今度は私の家に来てください。」
「ご飯作ってくれるの?」
「ご飯は…作れませんが」
千早は照れ笑いをした。カオルは千早の調子が良くなったようで、本当に嬉しかった。
カオルは、2つ重ねた大皿をシンクに置いて、寝る準備をすることにした。
明日も早い。千早も表情が柔らかくなって、少し眠そうだ。
「明日もよろしくね」
カオルがそう言うと、千早はカオルの手を両手で握った。少し恥ずかしそうに「…はい…」と言うと、手を離した。
「デビューシングル、良かったら聞いてみてください!」
「6月発売ですぅ!youtuveでfullversionが聴けるので、よかったらそちらでもどうぞ!」
カオルは、lapis lazuliの出演した深夜番組の録画を事務所で確認していた。
外の暗さのせいで、事務所も少し薄暗かった。小鳥さんも含めて、全ての人が帰った後だった。
実はテレビで歌を披露出来たのは雪歩だけでなく千早も初めてだった。だから、2人ともいつも以上に高いポテンシャルで収録に挑めたのではないかと思う。カオルは何度も彼女達の歌を聴いて、惚れ惚れしていた。
今回のテレビ出演の反響は予想していた通り、Twitterや実況板などで少し話題になった程度だった。しかし、いつかは…カオルは期待に胸を膨らませていた。
カオルが部屋の電気とテレビの電源を切って、帰ろうとと自分の席へバックを取りに戻ろうとしたところ、事務所の出入口のドアノブがガチャガチャと鳴った。
「だ、だれ?!」
「あ、あの。プロデューサーですか?」
「千早?」
ドアを隔てていてよくわからなかったが、確かに千早の声が聞こえた。千早がドアを開けると、薄ぼんやりながら千早がこちらを見ているのがわかった。
「ち、千早!今何時だと…」
「すみません!レッスンルームで電気を消して音楽を聴いていたらいつのまにか…」
カオルがスマホで時間を確認すると24時を回っていた。
「とりあえず、ここからでよう」
カオルは急いで荷物をまとめると、千早を連れて外に出た。
「千早は○△で一人暮らしだったよね?終電は…」
千早は今の状況を飲み込めず、困惑しているようだ。
「あと10分で終電だ…千早、今日は」
「か、帰ります!」
走って帰ろうとする千早を、カオルは急いで制止した。
「ま、待って。今日は家に泊まっていきなさい。」
「でも…」
「駅から歩くでしょ。危ないから。」
千早は口ごもっていたが、しばらく経つと申し訳なさそうに頷いた。
「よろしくお願いします。」
ーーーーーーーーーーーーーーー
「ごはん、簡単だけどチャーハンでいい?」
「あ、お腹はあまり空いてなくて…」
「今日お昼しか食べてないでしょ?ちょっとお風呂入って待ってなさい」
カオルは千早の頭を撫でると、タオルと着替えを渡し、お風呂のある部屋を指さした。
千早は言われるがままにシャワーを浴びた。
カオルはチャーハンを作りながら、明日が土曜で良かったと考えていた。よく考えたら千早は高校生だった。
千早はなぜ高校生で一人暮らしなのだろう。詳しい事情は聞いていないが、両親が離婚してから一人暮らしになったらしい。
フライパンからソーセージとごま油のいい匂いがした。遅めの夕食だが、千早には前々からちゃんとしたものを食べて欲しかった。
「あがりました。ありがとうございます。」
そうこう考えているうちに、千早がお風呂から上がった。
「チャーハン、できたよ」
カオルはチャーハンとスプーンを机に並べた。千早はただ呆然とその様子を見ていた。
「どうしたの?」
「あ、いや…。こういうの、久しぶりで」
千早は困った顔をして、机の前でちょこんと座った。
「たくさん食べてね。」
カオルがにっこり微笑むと、千早はまたぼーっとした表情になって、その顔のまま涙を浮かべた。
「すみません。」
「私、お母さんに似てる?」
カオルが笑って見せても、千早は泣くことを止めなかった。
「似てない…です。歳も全然違うじゃないですか」
なにも言わない方がいいのかもしれないと考えて、カオルはなにも言わずにチャーハンを食べた。
千早は涙を流しながらも、チャーハンを少しずつ口に入れた。
カオルがチャーハンを食べ終わる頃には千早の涙は引っ込んでいた。あまり美味しそうには食べてくれてはいなかった。
「千早、チャーハン嫌だった?」
千早は首を横にぶんぶんと振ると「美味しかったです」と言った。
「本当に…ありがとうございます。普段自炊しないので、すごく懐かしい気分になりました。」
その後、千早はポツポツと母親の話をしてくれた。
自分の歌を認めてくれていたこと、最近は顔を合わせると喧嘩ばかりしてしまうこと、離婚する前は美味しいご飯を作って貰っていたこと…
それらを話し終わった頃、千早はチャーハンを食べ終わっていた。
「たまには泊まりに来る?」
「いえ、そういうわけには…」
「私も寂しいし。今度は雪歩も連れてくる?」
「萩原さんは…お家が厳しいんじゃないかしら。」
チャーハンを食べ始めてから、初めて千早が笑ってくれた。カオルも笑みがこぼれた。
「lapis lazuli初お披露目の時、お弟子さんとか来て大変だったもんね」
「じゃあ、今度は私の家に来てください。」
「ご飯作ってくれるの?」
「ご飯は…作れませんが」
千早は照れ笑いをした。カオルは千早の調子が良くなったようで、本当に嬉しかった。
カオルは、2つ重ねた大皿をシンクに置いて、寝る準備をすることにした。
明日も早い。千早も表情が柔らかくなって、少し眠そうだ。
「明日もよろしくね」
カオルがそう言うと、千早はカオルの手を両手で握った。少し恥ずかしそうに「…はい…」と言うと、手を離した。