千早
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「…またですか。」
「ごめん、千早。」
今月入って3度目の落選通知を彼女に知らせると、どんよりとした空気が流れた。
ダンスの講師を呼んで2週間経つ。千早はダンスを今まで練習していなかったためまだ踊りなれていない感じではあったが、毎日キレがよくなっているのをカオルは実感していた。
千早は講師を呼ぶ直前までダンスレッスンに抵抗していたが、歌の表現力と今後の可能性が広がると説得したら案外あっさりと受け入れてくれた。
「なにがいけなかったんでしょうか…」
千早はくっ、と言って悔しそうな顔をした。
「うーん…そうねぇ」
実は千早が落ちた原因はなんとなく察しがついていた。
おそらく、愛想が良くないからなのだろう。
千早はオーディション中、パフォーマンスはほぼ完璧におこなえているが、審査員達の質問には基本的に「ええ」とか「はい、そうですね」しか答えていなかった。話を広げることはおろか、笑顔で答えることも必要ないことだと思っているのだろう。
だから、パフォーマンスで劣るアイドル達に席を取られてしまうのではないかとカオルは推測していた。
しかし、それを言ったら千早はどんな反応をするか、怖くてなかなか言い出せなかった。
アイドルを辞めると言われたら元も子もない。
「ねぇ、千早。もしよかったら今週末ライブを見に行かない?」
「ライブ…ですか?」
「うん。今朝、社長にライブのチケットを1枚もらったの。急だけど、今日の夜から行っておいで。実際に売れてる大物アーティストのパフォーマンスを見たらなにか勉強になるんじゃない?」
「なるほど…ありがとうございます。行ってきます。」
これで千早が気付けるかどうかは微妙だったが、なにもしないよりはマシだと思った。カオルは社長にお礼のメールを入れた。
次の月曜日…。
「どうだった?」
「勉強になりました」
千早の表情は明るかった。自分より格上のアーティストに触れてもしっかり吸収しようとするのが彼女のいいところだ。
「うん…具体的には?」
「そうですね、やはりロングトーンの伸びが…」
千早は少し考えてそう答えた。
なんとなくその答えは予想がついていたが、それも千早らしいと思った。
「MCとかは?」
「MCですか…?確かに歌のイメージよりずっと気さくでよく笑う方でしたが。あの、私は…。」
千早は怪訝そうな顔をした。自分がこれから何を言われるのかなんとなく察しがついているようだ。
「私は、千早のMC聞いてみたい。歌を聴く人も、MCを聞いたら自然と歌に入って来れると思う。」
千早はなにかを考えているようだったが、最後には納得してくれたみたいだった。
「わかってくれた?」
「もしかして、オーディションの落ちた原因をそれとなく知らせようとしてくれてました?」
千早は首を傾げた。さすがに質問が不自然すぎたからバレてしまった。
「え?!ど、どーだろうねぇ、あはは…」
「……プロデューサーって、めんどくさい人ですね」
千早はふふっと笑うと、伸びをした。
次のオーディションは明日。今の千早なら、きっと…。
明日の対策を、これから千早と練ってみることにする。
「ごめん、千早。」
今月入って3度目の落選通知を彼女に知らせると、どんよりとした空気が流れた。
ダンスの講師を呼んで2週間経つ。千早はダンスを今まで練習していなかったためまだ踊りなれていない感じではあったが、毎日キレがよくなっているのをカオルは実感していた。
千早は講師を呼ぶ直前までダンスレッスンに抵抗していたが、歌の表現力と今後の可能性が広がると説得したら案外あっさりと受け入れてくれた。
「なにがいけなかったんでしょうか…」
千早はくっ、と言って悔しそうな顔をした。
「うーん…そうねぇ」
実は千早が落ちた原因はなんとなく察しがついていた。
おそらく、愛想が良くないからなのだろう。
千早はオーディション中、パフォーマンスはほぼ完璧におこなえているが、審査員達の質問には基本的に「ええ」とか「はい、そうですね」しか答えていなかった。話を広げることはおろか、笑顔で答えることも必要ないことだと思っているのだろう。
だから、パフォーマンスで劣るアイドル達に席を取られてしまうのではないかとカオルは推測していた。
しかし、それを言ったら千早はどんな反応をするか、怖くてなかなか言い出せなかった。
アイドルを辞めると言われたら元も子もない。
「ねぇ、千早。もしよかったら今週末ライブを見に行かない?」
「ライブ…ですか?」
「うん。今朝、社長にライブのチケットを1枚もらったの。急だけど、今日の夜から行っておいで。実際に売れてる大物アーティストのパフォーマンスを見たらなにか勉強になるんじゃない?」
「なるほど…ありがとうございます。行ってきます。」
これで千早が気付けるかどうかは微妙だったが、なにもしないよりはマシだと思った。カオルは社長にお礼のメールを入れた。
次の月曜日…。
「どうだった?」
「勉強になりました」
千早の表情は明るかった。自分より格上のアーティストに触れてもしっかり吸収しようとするのが彼女のいいところだ。
「うん…具体的には?」
「そうですね、やはりロングトーンの伸びが…」
千早は少し考えてそう答えた。
なんとなくその答えは予想がついていたが、それも千早らしいと思った。
「MCとかは?」
「MCですか…?確かに歌のイメージよりずっと気さくでよく笑う方でしたが。あの、私は…。」
千早は怪訝そうな顔をした。自分がこれから何を言われるのかなんとなく察しがついているようだ。
「私は、千早のMC聞いてみたい。歌を聴く人も、MCを聞いたら自然と歌に入って来れると思う。」
千早はなにかを考えているようだったが、最後には納得してくれたみたいだった。
「わかってくれた?」
「もしかして、オーディションの落ちた原因をそれとなく知らせようとしてくれてました?」
千早は首を傾げた。さすがに質問が不自然すぎたからバレてしまった。
「え?!ど、どーだろうねぇ、あはは…」
「……プロデューサーって、めんどくさい人ですね」
千早はふふっと笑うと、伸びをした。
次のオーディションは明日。今の千早なら、きっと…。
明日の対策を、これから千早と練ってみることにする。