千早
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「いやー、まさか即決とはね…」
「そうですね、わたしも少しびっくりしました。」
「でも、これで晴れて私は如月さんのプロデューサーってわけだ。」
「本当にあっという間でしたね」
「でもまさか、求職中と休職中を間違えるなんてね…」
「す、すみません…。」
千早は苦笑した。
「なんで私を推薦しようと思ったの?」
カオルはこの質問をずっとしようと思っていた。しかし、なかなかする時間が無いのと、思ったより楽しそうな仕事内容だったので特に聞かないであっさり転職してしまった。
「あずささんの名前…最初に出ましたよね。」
「うん。」
「あずささんが売れたのは、プロデューサーがついたからなんじゃないかと思うんです。
もちろんあずささんは元から歌や演技が上手でした。でも、プロデューサーがついたことにより、練習が効率的になったり、いい仕事をまわしてもらえたり…。
なにより精神的な支えが、おっとりしているあずささんを変えたんじゃないかと思ってます。」
なるほど、効率のためなのか…カオルは千早の期待に応えられるか心配なった。
「プロデューサーには、私の歌がどこで活きるか考えてもらって、仕事を回していただければと思います。」
「そうね、如月さんの期待に応えられるよう頑張るよ」
「あの、下の名前で呼んでもらってもいいですか?」
千早は申し訳なさそうな顔をした。
「プロデューサーは歳上ですし、呼び捨てで構いません。あまりこの苗字が好きではなくて…」
「わかった。千早さん…いや、千早。よろしく。」
千早は愛想笑いをすると、席を立った。
「じゃあ、私は自主練に行きます。」
「おお。じゃあ私も着いて行っていい?どんな練習してるのか把握しておきたいし。」
「……いいですよ。」
千早が外に出ると、カオルもあとを着いていった。
筋トレ30分に、ボイストレーニング1時間、ランニングが2時間…。
これはアイドルというより体育会系の部活だ。
筋トレとボイストレーニングは録画をして見ているだけだったが、ランニングはどんなコースを走っているか把握しておきたかったので後ろから走って追いかけることになった。
走り始めてから30分後、カオルは千早の後ろを息を切らしながら走った。
「プロデューサー、もう休んでてください」
千早は心配そうにカオルを見た。
20代後半。運動には適していないパンプスとオフィスカジュアルに身を包んだ彼女は、だれがどう見てもこれ以上走れそうにはなかった。
だが、カオルは必死に食らいつくように汗をダラダラ垂らしながら走っていた。
そのあまりの形相に、千早は吹き出して笑ってしまった。
「? 千早、どうしたの?」
「あまりにも、必死な顔だったから、つい…。」
千早はポケットからハンカチを出し、カオルの汗を丁寧に拭いた。
「プロデューサー…もしよかったら、今度はもっと動きやすい格好で一緒に走りませんか?」
「た、確かに…。じゃあランニングは今回だけパスで。ごめんね。」
カオルは息切れしながら千早のハンカチで汗を拭った。
千早は少し安堵の表情を浮かべると、「あと1時間半後に戻りますね」と言っていなくなってしまった。
(若さというのもあるが、彼女は本当に努力家なんだな…)
カオルは息を整えたら来た道を歩いて戻ることにした。
(いや、2時間ランニング毎日はジャージ着ててもキツイな…)
カオルは、トレーニング用の自転車の購入を決意した。