緑一荘の彼女
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今日は木曜日。緑一荘は木曜日が定休日だ。
カオルは夜通し常連客に付き合わされたせいで、起きるのがどうしても遅くなってしまった。
緑一荘を出た時には日は傾き始めていて思わずあくびが出た。
今日はなんとなく商店街へ行こうと決めていた。
特に買うものもないが商店街で新しいものに触れてみたくなったからだ。
口笛を吹いて買い物袋を持つ手をキュッと締めた。
「安いよ安いよ〜!」
「今日はじゃがいもが安いよ!」
商店街は今日も賑わっている。近所に大きな商店街があると気軽に来れていい。
カオルはいつもより上機嫌に街を歩いていた。
そんな時目の端に路地が見えた。たまには新しいお店も開拓してみようと思い、大通りから離れて知らない道を探索してみた。そんな矢先の出来事だった。
前から大きな背格好の男がカオルにぶつかってきた。
カオルの身体は男の逞しい腕に当たって弾気かれた。明らかに向こうから斜行してぶつかってきたのは明白だった。
「いたっ」
「おい、痛てぇじゃねぇか」
男はドスの効いた声でカオルを怒鳴りつけた。
カオルは助けを求めようと周りを見回してみたが、いつのまにか人通りの少ない通りに来ていたようだ。周りに人がいないことに気が付いて急に不安になってしまった。
「あ、あなたからぶつかってきたと思うんですが…」
このままではお金を取られてしまう…カオルは震えながら抵抗した。
「あぁ?姉ちゃん威勢がいいじゃねぇか」
男はカオルが虚勢をはりながら縮こまっているのを見てニヤリと笑った。
「な、なによ…」
「…よくみたら結構いい身体してんじゃねぇか。ここで会ったのも何かの縁だ。ちょっと付き合えよ」
男はカオルの手首を掴んだ。
「おい、なにしてんだ」
遠くから他の男の声がした。
カオルは、よかった、と心から神に感謝した。男は舌打ちをして、声のする方を見た。
「「え?…あ、赤木さん?!」」
男とカオル、同時に声が出た。
「え…!知り合いなんすか」
男はカオルの手をとっさに離した。カオルは男の態度の変わりように驚いた。
「…なんだ、そういうことか」
赤木はだるそうに頭をかくと、カオルの頭をポンポンと撫でた。カオルは、あまりの安心感に赤木にギュッと抱きついた。
「…まあ、そういうことだ。」
「す、すみません!赤木さんの女だったとは知らずに…。随分地味な女だったもんですから。」
「あ?」
赤木はさらに不機嫌そうだ。
「失礼します!」
「ツイてねぇなぁ」とぼやきながら男はどこかへと消えてしまった。
赤木はこの男とどういった関係なのだろう。カオルはなにも分からなかったが、赤木にまた会えたことが嬉しかった。
「赤木さん、ありがとうございます!」
「あのなぁ…夕方にこんな所1人で歩くんじゃねぇぞ」
赤木は機嫌が悪そうだった。今カオルのいる通りの奥にはラブホテルの看板がいくつも光っていた。
「あれ?!いつの間にこんな場所に…。」
赤木は大きなため息をついた。
「大通りまで送る。」
「赤木さん!あの…また今度ウチの雀荘に来てくれますか?」
「今度というか、今から行く予定だったよ」
「あ……今日定休日なんです。」
「はぁ、俺までツイてねぇなぁ」
あの天下の赤木が己の不運を嘆く瞬間を見れるとは。カオルはクスクス笑った。
「そういえば天さんって赤木さんの知り合いですか?」
「ああ…懐かしいな」
「天さんは私の麻雀の師匠なんです。」
「ほー…あいつが…。もしかしてあいつの3人目の嫁さんか?」
「なわけないでしょ!父が知り合いなんですよ!」
赤木は「だよな」と笑った。
「カオルー!あれ?!赤木じゃねぇか!」
「あ、噂をすれば天さんですよ」
天は大きな足でのっしのっしと走ってきて、赤木を抱擁した。
「かぁー!!久しぶりじゃねぇの!」
「ちょ、天さん!やめましょうよ!」
「………。」
赤木の顔は嫌悪を通り越してほんのり青ざめていた。
◆◇◆◇◆◇◆◇
天と赤木はカオルを緑一荘まで送り届け解散しようとしたが、カオルは「そういえば2人にお話したいことがあるんです」と言って緑一荘に招き入れた。
「え、お前この前話してた麻雀の面子、赤木に頼もうとしてたの?」
「だ、だって昨日井川さんに聞いたら赤木さんと知り合いだって言ってたから…!」
「ククク…まあ、俺はいいよ」
「いや…なんというか…さすがに俺らのレベルまでは求めてないっていうか…」
天は汗を垂らしている。
「なんだ天。負けるの怖いんだろ。」
赤木は冗談っぽく笑った。
「ば、バカ言わないでくれ!俺はカオルの今後を心配してだなぁ…」
「あ、そういえばここに井川さん呼べば揃いますね。」
「おう、呼べ呼べ」赤木はソファに腰掛けて足を組んでタバコをふかした。
天の心配をよそに、カオルは井川ひろゆきに電話をかけた。
「来てくれるみたいです!準備しますね」
「はぁ…今日はノーレートで頼むぜ。」
「おう、さすがにこのメンツで勝つ自信はねぇや」
赤木の軽口に天は苦笑いをした。
「言ってらぁ…」
カオルは夜通し常連客に付き合わされたせいで、起きるのがどうしても遅くなってしまった。
緑一荘を出た時には日は傾き始めていて思わずあくびが出た。
今日はなんとなく商店街へ行こうと決めていた。
特に買うものもないが商店街で新しいものに触れてみたくなったからだ。
口笛を吹いて買い物袋を持つ手をキュッと締めた。
「安いよ安いよ〜!」
「今日はじゃがいもが安いよ!」
商店街は今日も賑わっている。近所に大きな商店街があると気軽に来れていい。
カオルはいつもより上機嫌に街を歩いていた。
そんな時目の端に路地が見えた。たまには新しいお店も開拓してみようと思い、大通りから離れて知らない道を探索してみた。そんな矢先の出来事だった。
前から大きな背格好の男がカオルにぶつかってきた。
カオルの身体は男の逞しい腕に当たって弾気かれた。明らかに向こうから斜行してぶつかってきたのは明白だった。
「いたっ」
「おい、痛てぇじゃねぇか」
男はドスの効いた声でカオルを怒鳴りつけた。
カオルは助けを求めようと周りを見回してみたが、いつのまにか人通りの少ない通りに来ていたようだ。周りに人がいないことに気が付いて急に不安になってしまった。
「あ、あなたからぶつかってきたと思うんですが…」
このままではお金を取られてしまう…カオルは震えながら抵抗した。
「あぁ?姉ちゃん威勢がいいじゃねぇか」
男はカオルが虚勢をはりながら縮こまっているのを見てニヤリと笑った。
「な、なによ…」
「…よくみたら結構いい身体してんじゃねぇか。ここで会ったのも何かの縁だ。ちょっと付き合えよ」
男はカオルの手首を掴んだ。
「おい、なにしてんだ」
遠くから他の男の声がした。
カオルは、よかった、と心から神に感謝した。男は舌打ちをして、声のする方を見た。
「「え?…あ、赤木さん?!」」
男とカオル、同時に声が出た。
「え…!知り合いなんすか」
男はカオルの手をとっさに離した。カオルは男の態度の変わりように驚いた。
「…なんだ、そういうことか」
赤木はだるそうに頭をかくと、カオルの頭をポンポンと撫でた。カオルは、あまりの安心感に赤木にギュッと抱きついた。
「…まあ、そういうことだ。」
「す、すみません!赤木さんの女だったとは知らずに…。随分地味な女だったもんですから。」
「あ?」
赤木はさらに不機嫌そうだ。
「失礼します!」
「ツイてねぇなぁ」とぼやきながら男はどこかへと消えてしまった。
赤木はこの男とどういった関係なのだろう。カオルはなにも分からなかったが、赤木にまた会えたことが嬉しかった。
「赤木さん、ありがとうございます!」
「あのなぁ…夕方にこんな所1人で歩くんじゃねぇぞ」
赤木は機嫌が悪そうだった。今カオルのいる通りの奥にはラブホテルの看板がいくつも光っていた。
「あれ?!いつの間にこんな場所に…。」
赤木は大きなため息をついた。
「大通りまで送る。」
「赤木さん!あの…また今度ウチの雀荘に来てくれますか?」
「今度というか、今から行く予定だったよ」
「あ……今日定休日なんです。」
「はぁ、俺までツイてねぇなぁ」
あの天下の赤木が己の不運を嘆く瞬間を見れるとは。カオルはクスクス笑った。
「そういえば天さんって赤木さんの知り合いですか?」
「ああ…懐かしいな」
「天さんは私の麻雀の師匠なんです。」
「ほー…あいつが…。もしかしてあいつの3人目の嫁さんか?」
「なわけないでしょ!父が知り合いなんですよ!」
赤木は「だよな」と笑った。
「カオルー!あれ?!赤木じゃねぇか!」
「あ、噂をすれば天さんですよ」
天は大きな足でのっしのっしと走ってきて、赤木を抱擁した。
「かぁー!!久しぶりじゃねぇの!」
「ちょ、天さん!やめましょうよ!」
「………。」
赤木の顔は嫌悪を通り越してほんのり青ざめていた。
◆◇◆◇◆◇◆◇
天と赤木はカオルを緑一荘まで送り届け解散しようとしたが、カオルは「そういえば2人にお話したいことがあるんです」と言って緑一荘に招き入れた。
「え、お前この前話してた麻雀の面子、赤木に頼もうとしてたの?」
「だ、だって昨日井川さんに聞いたら赤木さんと知り合いだって言ってたから…!」
「ククク…まあ、俺はいいよ」
「いや…なんというか…さすがに俺らのレベルまでは求めてないっていうか…」
天は汗を垂らしている。
「なんだ天。負けるの怖いんだろ。」
赤木は冗談っぽく笑った。
「ば、バカ言わないでくれ!俺はカオルの今後を心配してだなぁ…」
「あ、そういえばここに井川さん呼べば揃いますね。」
「おう、呼べ呼べ」赤木はソファに腰掛けて足を組んでタバコをふかした。
天の心配をよそに、カオルは井川ひろゆきに電話をかけた。
「来てくれるみたいです!準備しますね」
「はぁ…今日はノーレートで頼むぜ。」
「おう、さすがにこのメンツで勝つ自信はねぇや」
赤木の軽口に天は苦笑いをした。
「言ってらぁ…」