緑一荘の彼女
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木曜の夕方から始めた麻雀であったが、もう夜中の1時をまわっていた。
「ま、こんなもんでいいだろ…。2人ともありがとうな。」
半荘がちょうど終わったタイミングで天は伸びをした。
「楽しかったです。正直、カオルさんの実力はまだまだだと思いますが…」
カオルはすべての半荘で4位だった。ひろゆきの正論にカオルは言葉を詰まらせた。
「ま、俺らに勝てるなら代打ちやった方が儲かるだろうな!」
「とにかく合格だ、合格。ここは低レートだし酔っ払いしかいねぇ。ひろや赤木が来てるのが不思議でしかたねぇや。」
「僕は会社がこの雀荘のそばなんです。」
「俺は…まあ偶然かな」
カオルはひろゆきがいつも平日にきている理由がようやくわかった。終電を逃す時間になってしまうので住む場所が近い人が来ることが多いが、いつもアルコールを飲まないので車で帰っているのだろう。
「よし、解散!」
「赤木さん、近くに車停めてあるので送りますよ」
「なんでぇ、俺は乗せてかねぇのかい」
「天さんは近所ですよね?!歩いて帰れるでしょ!」
「ああ…悪いが俺はカオルさんと話があるんでな。」
赤木はカオルの手をぎゅっと握った。急に手を握られてカオルは顔を真っ赤にした。
「え!こんな地味な女に…」
ひろゆきさんはナチュラルに失礼なんだよなと思ったが、一応常連なので黙っておくことにした。
「前から気になってたが、やっぱり赤木…カオルと?」
「なんもねぇよ、ほら、さっさと帰れ。」
天とひろゆきは怪訝な顔をしながら緑一荘を後にした。
「…赤木さん、話って?」
「いやさ…今度飲みにでも行きてぇなと思って。」
「えっ?!そ、それだけですか?」
それだけなら、4人揃ってる時に言ってもよかったのでは…そう言いかけた時、赤木が頬を染めていることに気がついた。
「や、すまん…。20も離れたジジイから言われても困るよな」
「そんなことないです!それはもちろん、ぜひ飲みに行きたいです。」
「そうか…。それだけ聞きたかったんだ。じゃあ、帰るよ。」
赤木がドアを少し開けると大雨が吹き付けた。
「さっきまで晴れてたのに…。」
「はぁ…ツイてねぇなぁ」
赤木は肩を落とした。本日二回目のセリフだ。
「ひろゆきさん、電話で呼びましょうか?そんなに遠くに行ってないだろうし…」
「いや、いい…。歩いて帰るよ。」
「そんな!終電も終わってますよ?」
「いや、大丈夫だ…」
カオルは赤木の手を引っ張って止めようとした。が、その手が異常に熱いことに気がついた。
「あ、熱っ?!とにかく、一旦座ってください!」
カオルは体温計を赤木に渡し、毛布を膝にかけさせた。体温がわかるまでの間、最近の食事や生活ぶりを聞いた。
「完全に風邪ですね。」
38.5℃。常人なら何時間も座って麻雀など到底できない体温だ。さっきの会話で頬を染めていたように見えたのも風邪が悪化したからに違いない。
「風邪ねぇ。これがそうなのかい。」
「知らなかったんですか…。とにかく今日は仮眠室のベッドで寝てください。これからお粥作るのでそれ食べて、余った風邪薬もあるので飲んで、さっさと寝ましょう。」
「いや、俺は…」
「今から電話してひろゆきさんに教えますよ。」
「それだけは勘弁してくれ…」
ひろゆきが聞けば天と戻ってきて騒がしくなるだろう。赤木はとにかく寝たかった。
「さ、とにかく1度着替えてくださいね。天さんの寝巻き持ってきますから。」
「なんだ、天もよく泊まるのか。」
「ええ、うちのオーナーなので。夜勤もたまにやってもらってます。」
「ふーん…。」
「おかゆ美味しかった、ありがとう」
「じゃあ、後は寝るだけですね」
「そうだな…。ありがたく寝させてもらうよ。…それにしても随分手際がいいんだな」
「そんなことないですよ、親がよくそうしてくれてたんです。」
「なるほどなぁ…いい親御さんだったんだな。」
「そうかもしれませんね…。」
◆◇◆◇◆◇◆◇
赤木はベッドに横たわって遠い目をした。
「なあ、天にはなにもされてないか?」
「なにもないですよ?」
「そうか…それならいいんだ。」
赤木は目を閉じて、すぐに寝息をたてた。
カオルは赤木の寝顔をしばらく見ていた。
朝になったらいなくなっていそうだなぁとか、張り紙をしておけば朝ごはんくらいは一緒に食べてくれるかなぁとか、ぼんやりと色々なことを考えてみた。
しかし、赤木は縛られるのが嫌いなんだろうと結論づけて、なにもせずに寝ることにした。
「ま、こんなもんでいいだろ…。2人ともありがとうな。」
半荘がちょうど終わったタイミングで天は伸びをした。
「楽しかったです。正直、カオルさんの実力はまだまだだと思いますが…」
カオルはすべての半荘で4位だった。ひろゆきの正論にカオルは言葉を詰まらせた。
「ま、俺らに勝てるなら代打ちやった方が儲かるだろうな!」
「とにかく合格だ、合格。ここは低レートだし酔っ払いしかいねぇ。ひろや赤木が来てるのが不思議でしかたねぇや。」
「僕は会社がこの雀荘のそばなんです。」
「俺は…まあ偶然かな」
カオルはひろゆきがいつも平日にきている理由がようやくわかった。終電を逃す時間になってしまうので住む場所が近い人が来ることが多いが、いつもアルコールを飲まないので車で帰っているのだろう。
「よし、解散!」
「赤木さん、近くに車停めてあるので送りますよ」
「なんでぇ、俺は乗せてかねぇのかい」
「天さんは近所ですよね?!歩いて帰れるでしょ!」
「ああ…悪いが俺はカオルさんと話があるんでな。」
赤木はカオルの手をぎゅっと握った。急に手を握られてカオルは顔を真っ赤にした。
「え!こんな地味な女に…」
ひろゆきさんはナチュラルに失礼なんだよなと思ったが、一応常連なので黙っておくことにした。
「前から気になってたが、やっぱり赤木…カオルと?」
「なんもねぇよ、ほら、さっさと帰れ。」
天とひろゆきは怪訝な顔をしながら緑一荘を後にした。
「…赤木さん、話って?」
「いやさ…今度飲みにでも行きてぇなと思って。」
「えっ?!そ、それだけですか?」
それだけなら、4人揃ってる時に言ってもよかったのでは…そう言いかけた時、赤木が頬を染めていることに気がついた。
「や、すまん…。20も離れたジジイから言われても困るよな」
「そんなことないです!それはもちろん、ぜひ飲みに行きたいです。」
「そうか…。それだけ聞きたかったんだ。じゃあ、帰るよ。」
赤木がドアを少し開けると大雨が吹き付けた。
「さっきまで晴れてたのに…。」
「はぁ…ツイてねぇなぁ」
赤木は肩を落とした。本日二回目のセリフだ。
「ひろゆきさん、電話で呼びましょうか?そんなに遠くに行ってないだろうし…」
「いや、いい…。歩いて帰るよ。」
「そんな!終電も終わってますよ?」
「いや、大丈夫だ…」
カオルは赤木の手を引っ張って止めようとした。が、その手が異常に熱いことに気がついた。
「あ、熱っ?!とにかく、一旦座ってください!」
カオルは体温計を赤木に渡し、毛布を膝にかけさせた。体温がわかるまでの間、最近の食事や生活ぶりを聞いた。
「完全に風邪ですね。」
38.5℃。常人なら何時間も座って麻雀など到底できない体温だ。さっきの会話で頬を染めていたように見えたのも風邪が悪化したからに違いない。
「風邪ねぇ。これがそうなのかい。」
「知らなかったんですか…。とにかく今日は仮眠室のベッドで寝てください。これからお粥作るのでそれ食べて、余った風邪薬もあるので飲んで、さっさと寝ましょう。」
「いや、俺は…」
「今から電話してひろゆきさんに教えますよ。」
「それだけは勘弁してくれ…」
ひろゆきが聞けば天と戻ってきて騒がしくなるだろう。赤木はとにかく寝たかった。
「さ、とにかく1度着替えてくださいね。天さんの寝巻き持ってきますから。」
「なんだ、天もよく泊まるのか。」
「ええ、うちのオーナーなので。夜勤もたまにやってもらってます。」
「ふーん…。」
「おかゆ美味しかった、ありがとう」
「じゃあ、後は寝るだけですね」
「そうだな…。ありがたく寝させてもらうよ。…それにしても随分手際がいいんだな」
「そんなことないですよ、親がよくそうしてくれてたんです。」
「なるほどなぁ…いい親御さんだったんだな。」
「そうかもしれませんね…。」
◆◇◆◇◆◇◆◇
赤木はベッドに横たわって遠い目をした。
「なあ、天にはなにもされてないか?」
「なにもないですよ?」
「そうか…それならいいんだ。」
赤木は目を閉じて、すぐに寝息をたてた。
カオルは赤木の寝顔をしばらく見ていた。
朝になったらいなくなっていそうだなぁとか、張り紙をしておけば朝ごはんくらいは一緒に食べてくれるかなぁとか、ぼんやりと色々なことを考えてみた。
しかし、赤木は縛られるのが嫌いなんだろうと結論づけて、なにもせずに寝ることにした。