アオイがキタカミへ旅立った次の日。

ペパーは自分の部屋に貼られたパルデアの地図をぼんやり眺めた。
秘伝スパイス集めをする前、正直言えばアオイのことは嫌いであった。

しかし、旅を進めていくにつれてアオイへの友情が芽生えたのだ。
今では数少ない親友（ダチ）の1人だ。
きっと彼女もそう思ってくれているだろう。
ペパーは誇らしげに隣にいるマフィティフを撫でた。すっかり元気なったマフィティフは餌の催促をした。

「なんか元気なくない？」
ネモからそう言われたのはアオイが旅立ってから1週間後のことだ。
ポケモン勝負のことしか考えていないあのネモが心配するくらいだ。相当疲れた顔を見せてしまっているのだろう。
きっと最近忙しくて寝れていないから疲れが出てしまっていたのだ。勉強もポケモンも親友（ダチ）達には置いていかれっぱなしで示しがつかないからせめて勉強はと思い最近頑張っている。
しかし、今日こそは睡眠をとろう。次の日は休日にしたし自然に起きれるまで眠り続けよう。
夜のまだ早い時間だったがペパーはベッドに入りぎゅっと目を閉じた。

「…………。」
あれから何時間経っただろう。
脳裏に以前見た夢がピッタリ張り付いている。
いくら忘れようとしても呪いのように消えることがない。
不安だ。
アオイは自分を置いていってしまうのではないか。
自分だけを置いていってしまうのではないか。
そう思うと息が苦しくなる。
アオイが自分を捨てるなどある訳が無いのに。

もう一人ぼっちの日々には戻れない。
マフィティフさえいれば、と思ってアオイには強引にスパイス集めを手伝わせた。しかし、マフィティフと同じくらいにアオイは大切な人になった。
あの頃の態度を反省していない訳ではない。
アオイには謝ったし、彼女はなにも気にしていないと言っていた。
眠れないことにイライラしてペパーは頭を掻きむしる。
「ぐぅ……ぐぅ………」
足元からマフィティフのいびきが聞こえた。
「…お前は寝れていいな」
ふっと笑ってマフィティフを撫でた。

（もう少し頑張って寝てみるか！）
ペパーは意を決して目を閉じた。
あの日の悪夢に打ち勝てるように。