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『うわ、傷、深っ……』
俺の胸元を一瞥して、名前が露骨に顔をしかめる。
『もう少し受け身取ったらどうですか、先輩』
相変わらず容赦のない言い方。何年も会っていなかった相手に向ける態度とは思えない。霧の中で再会してからずっとこんな調子だ。
「……任務中に注文が多いね」
冗談めかして軽く返すが、彼女は肩をすくめるだけだった。
『後回しです。まずはあの子たち』
そう言って、視線はもう第七班に向いている。俺の状態なんて最初から眼中にないらしい。しゃがみ込んでナルトの腕や頬を確認する。
『ナルト君は…うん、問題なし。傷の治りも早いし、治療は要らないですね』
「さっすが俺!」
ナルトが胸を張るが彼女は一切取り合わない。その温度差に、思わず口元が緩みそうになる。
『次、サスケ君、こっちおいで』
呼ばれたサスケは一瞬だけ警戒するように目を細め、それでも素直に近づいた。彼女の手つきは相変わらず少し雑で、けれど的確だった。必要なところだけに触れ、確認が済めばすぐ離す。無駄がなく暗部の医療忍者らしいやり方だった。
戦いは終わった。橋での死闘も再不斬と白の最期も、すでに過去だ。今は里へ戻る前夜。タズナさんの家でそれぞれが最後の休息を取っている、はずだった。畳に腰を下ろしながら、俺の意識はまるで落ち着かなかった。身体中に残る傷よりも、彼女がここにいる。その事実がどうしようもなく気に障っていた。何年も前に失ったはずの存在。書類の上では、すでに死亡扱いされている人間。
それが今、第七班の前に当たり前の顔をして座り、淡々と傷を診て指示を出している。現実感がない。なのに、視界に入るたびに否応なく意識させられ、落ち着かなかった。そんな張りつめた空気を遠慮なく破ったのは、やっぱりというかサクラだった。
「あの!名前さんって、カカシ先生の彼女さんですか⁉︎」
勢いよく身を乗り出す。その瞬間、心臓が一拍遅れて鳴った。まずい。
『……いや……元……かな』
彼女は一瞬だけ言葉を探すように視線を泳がせ、それからさらっと本当のことを口にした。……しまった。まさか、こんな形で本人と鉢合わせるとは思っておらず、口裏を合わせる余裕なんてあるはずもない。サクラがこちらをびしっと指差す。
「やっぱりー! カカシ先生、嘘つくから!」
『……カカシ先輩は、なんて?』
治療の手は止まらない。
問いだけが静かに飛んでくる。
「俺を支えてくれた恩人って」
『……恩人……ねー』
その言葉の後、何とも言えない間が落ちた。彼女はサスケの治療を終え、次にサクラの手を取る。そして、視線だけがこちらに向けられた。細められた目。昔と変わらない逃げ場のない視線。この目を向けられると冗談も言い訳も通じない。無意識に肩がこわばるのを感じていた。
「でもでも!」
空気を読むという概念を知らないサクラが、さらに身を乗り出す。
「すごく特別な人だったんだなーって思いは、伝わってきましたよ!」
……まずい。その言葉が完全に火に油だと、俺だけが理解していた。一瞬の沈黙、彼女の手が止まり空気がわずかに張りつめる。
『…残念、サクラちゃん。カカシ先輩に特別な人はいっぱ…ムグッ!』
そこまでだった。反射的に彼女の背後へ回り、その口を塞ぐ。考えるより先に身体が動いていた。昔からこういう時だけは判断が早い。
「はい、そこまで。治療終わったでしょ。次は俺の番」
有無を言わせない口調のまま、舜身の術を使う。視界が一瞬で切り替わり、場の空気ごと引き剥がした。逃げた、と言われても否定はしない。
「きゃー!? やっぱりそーなの‼︎」
背後から、サクラの甲高い声が追いかけてきた気がした。……気のせいだ。きっと、聞こえなかった。そういうことにしておこう。
