中忍選抜試験編 前編
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オロチマル「お話は終わったかしら? 泣けるドラマだったわね。でも哀れね、その子が増えたところで何になるの?」
胴体を蛇のように伸ばした女が、舌なめずりをしながらこちらを見下ろす。けれど、不思議と恐怖は感じなかった。心が麻痺しているのか、それとも隣にサスケがいるからだろうか。
サスケ「ほざいてろ。…とは言え、あいつは強ぇぞ」
『大丈夫、私とサスケのコンビ技だよ? 絶対勝てるよ。それと、サスケの写輪眼って…すごく綺麗だね』
サスケ「は? お前、こんな時に……ほんっとアホだな」
『ビクビクして動けないよりマシでしょ。和ませただけ』
サスケ「フッ……確かにな。絶対、しくじんなよ」
『もちろん』
そう言い切ると、私たちは同時にニヤリと笑い、そのまま揃って地を蹴った。交互に仕掛ける攻撃は、最初こそあっさりと躱されたものの、止まることなく連撃を重ねていく。そして、集中が極限に達したその瞬間、周囲の音がすっと消えた。世界がゆっくりと動き出し、サスケの視界が自分の視界と重なるような、不思議な感覚に陥る。
『……見える』
思わず零れたその一言と同時に、タイミングが完璧に噛み合った。二人の連撃が、初めて女の表情を歪ませる。ほんのわずかだが、確実に届き始めていた。
『ハッ……ハッ……』
荒くなる呼吸とともに、体の限界がじわじわと迫ってくる。初めて生死に関わる戦い。とっくに自分のキャパなんて超えていて、肺は焼けるほど苦しい。それでも、止まることは許されない。
サスケ「へばるんじゃねーぞ‼︎」
『……ッ、わかってる‼︎』
オロチマル「いいわ!いいわよ!サスケ君!けど、あなたは邪魔よ‼︎」
その言葉と同時に、一瞬の隙を突かれた。
『しまっ……カハッ‼︎』
気づいた時には首を掴まれていて、そのまま容赦なく木へ叩きつけられる。衝撃が背中を貫き、視界が歪み、色が抜けていった。
オロチマル「ここで、寝てなさい」
冷たい声が遠くに響く。
『……ハッ……っ……』
呼吸がうまくできない。まだ終わってない、そう思うのに、手足は鉛のように重く、言うことをきかない。抗おうとするほど意識は沈んでいく。視界は、ゆっくりと闇に塗りつぶされていき、私はそのまま意識を手放した。
『……ここは』
真っ暗な世界に、夢で見たあの扉が現れた。
私、何してたんだっけ。
ついさっきまでの出来事は、霧のように消えていて、うまく思い出せない。ただ、目の前のそれだけがやけにはっきりと存在していた。
扉の向こうから、赤黒いモヤがじわりと漏れ出す。禍々しい気配に本能的な恐怖が背筋を走り、思わず後ずさる。
〝フフフフ……変わって〟
どこか陽気で、それでいて底知れない声が響いた次の瞬間、バタン、と扉が勢いよく開き、溢れ出した赤黒い渦が一直線にこちらへと迫る。避ける間も逃げ場もないまま、私はその渦に飲み込まれた。
『フフフフ』
意識が現実へと引き戻される中、喉の奥から歪んだ笑いが漏れる。私が笑ったんじゃない。
オロチマル「何かおかしいかし……――ボキッ⁉︎」
蛇の女が私を覗き込んだその瞬間、乾いた音が場の空気を裂いた。何が起きたのか理解するより先に、違和感だけが全身を駆け抜ける。気づけば私の口元は、ゆっくりと弧を描いていた。
