出会い編
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〝起きろ〟
その一言が、沈みかけていた意識を無理やり引き上げた。
カカシ「……っ……生きてたのか」
かすかに残る気配に導かれるように、ゆっくりと目を開ける。視界に広がったのは、暗く沈んだ森と、降りしきる冷たい雨だった。肌を打つ雨粒の感触に、ようやく現実へと引き戻される。本来なら動くはずのない重たい体は、嘘のように回復していて、その違和感に眉をひそめながらも、ゆっくりと立ち上がった。
そして周囲を見渡すと、戦闘の痕跡の中に、五人分の遺体が転がっているのが目に入る。片付いたのかと、そう判断した次の瞬間、視界の端に映ったものに、思考が一気に引き寄せられる。
カカシ「名前‼︎」
彼女は木にもたれかかるようにして、そのまま意識を失っていた。駆け寄り、すぐに体の状態を確認する。腕に刺さった苦無の傷、そこからじわじわと毒が回っているのが分かった。さらに、雨で冷え切った服が肌に張りつき、体温を奪い続けている。このままでは、毒だけでなく低体温でも危ない。
なぜ俺は助かったのか。
なぜ、敵は倒れているのか。
考えるべきことは、いくらでもある。
だが今は、それよりも。
カカシ「頼むから……恩を返す前に、死ぬんじゃないぞ」
掠れた声でそう呟きながら、その小さな体を支える腕に、無意識に力がこもった。
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ヒルゼン「カカシ、お前が無事に帰還したことを喜ぼう。連れ帰った少女も一命を取り留め、今はぐっすりと眠っておる」
その言葉を聞いた瞬間、胸の奥に絡みついていた緊張が、ようやくほどけた。どうにか、間に合ったらしい。
ヒルゼン「お前もしばらくは休むがよい。報告は後でも構わぬ」
カカシ「……いえ。明日から任務に戻ります。報告も今からで大丈夫です。戻れなかったのはチャクラ切れが原因で……ですが、目を覚ました時には、なぜか回復していまして」
ヒルゼン「ほう……妙な話じゃな。敵は倒され、お前のチャクラは回復していた……雨が止み次第、暗部を向かわせよう」
その判断に安堵しながらも、同時に胸の奥に残る引っかかりは消えない。あの時、意識が落ちる直前に確かに〝声〟を聞いた。現場への同行を願い出ると、火影様は一瞬だけ眉をひそめたが「無理はするなよ」と言って承諾してくれた。確かめる必要があった、あの時聞こえた〝声〟の正体を。
だが、結果は芳しくなかった。倒れていたのは、かつて忍だった者たちが落ちぶれ、山賊となった連中。そして最も重要な、俺を助けた〝何か〟の痕跡は一つとして見つからなかった。まるで、最初から存在しなかったかのように。
木ノ葉へ戻った頃には、名前はすでに目を覚ましていた。火影様との話し合いの末、敵ではないと判断されたものの、一人で元の場所へ返すには危険が大きい。結局、安全が確保されるまでの間、木ノ葉で暮らすことになったらしい。そして、空いていた隣の部屋が彼女に与えられた。遠回しに言えば、身の回りの世話と監視を任されたということだ。
もっとも、そんな命令がなくても最初からそのつもりではあった。あの時、敵の気配に最初に気づいたのは、俺ではなく名前だった。それだけでも十分に引っかかるが、それ以上に気になるのは、戦場に〝第三者の痕跡〟が不自然なほど残っていなかったことだ。
ありえないとは思うが、念のため警戒は続けるべきだろう。そして、どうしても頭から離れない言葉がある。
〝お前に任せたぞ〟
あの時、確かに聞こえた声。
一体、誰が。
そして、何を俺に託したというのか。
