遙かなる再会の章
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カカシ「世が荒れる…それは予言か何かと捉えていいんですか」
『いや、私の勘だ』
カカシ「………」
あまりにもあっさり返された答えに、言葉が続かない。そのまま沈黙が落ちた。腕を組み、にこりと笑うその顔に一瞬見惚れそうになりながらも、同時に片方の肩ががくりと落ちるのを止められない。
もう、どこから突っ込めばいいのか分からなかった。この人の話すことは本気なのか冗談なのか。その境界があまりにも曖昧すぎる。
『そう落ち込むな。お前はこれから色んな意味で苦労するからな。この子にも振り回されるだろう』
どこか愉しむような声音に、思わず小さくため息が漏れた。そのままバシバシと肩を叩かれれば、もう何か言い返す気力すら湧いてこない。
カカシ「落ち込む要素しかないんですけど。それに、それも〝私の勘〟なんですよね」
半ば呆れを滲ませて返した、その直後だった。
『……ハッハッハッ! やっぱりお前は面白い。自来也とは違った良さを持っているな』
愉快そうに笑いながら身を乗り出した。
『名前はなんて言うんだ。聞いてやる』
そう言ったかと思えば不意に顎を掴まれる。反応するより早く距離がぐっと縮まり、互いの吐息がかかるほどの近さまで引き寄せられた。視界いっぱいに映る名前の瞳。その奥には、どこか情けない顔をした自分の姿が、はっきりと映っていた。
カカシ「……はたけ カカシ」
『カカシか……覚えておこう』
短く名乗ると、名前は満足そうに微笑んだ。顎を掴んでいた手がすっと離れる。ようやく解放された。そう思ったとき、今度は片方の手が後頭部へ回され、ぐいと首を傾けられる。何をするつもりだ、と考える暇もなかった。次の瞬間、首筋に鋭い衝撃が走った。
カカシ「いっ……っ……何するんですか」
遅れて、それが噛まれたのだと気づいた。咄嗟にその腕を振り払い距離を取る。わずかに乱れた呼吸を整えながら、マスクを元の位置へ戻した。そしてじろりと睨みつけると、当の本人は愉快そうに笑っている。
『フフッ。サクモと違って、からかいがいのあるやつだ』
悪びれる様子など欠片もない。
『得体の知れない相手に対抗しないお前が悪い。カカシ、お前Mだろう』
カカシ「いやいや、生粋のSですけど」
反射的に言い返してから、しまった、と内心で思う。もう少し丁寧に返すべきだったかもしれない。だが、どうやらその心配は必要なかったらしい。彼女はニヤリと笑っただけで、それ以上は何も言い返してこない。その代わりに。
『……それと、自来也に会ったら伝えておいてくれ。〝一人で深追いはするな〟と』
何気ない調子で告げられたその言葉に、わずかに眉を寄せる。本当に、この会話のテンポが掴めない。言葉のキャッチボールというより、彼女が話したいことを話したい時に投げてくるだけだ。こちらの反応など気にも留めていないように見える。
カカシ「それも、何かの勘ですか」
『…………そうだな』
返ってきた声は、ほんのわずかに弱かった。本当に一瞬だけ、引っかかるような違和感。気のせいだと言われればそれまでの些細な変化。けれど、さっきまで余裕を崩さなかった存在にしては、不自然なほど小さな揺らぎだった。
まるで、勘ではなく何かを知っている者の口ぶりのように。
『で、イザナミさんから何か情報は聞けましたか? ……ていうか、カカシ先生なんか老けました? 一気に疲れが出たように見えますけど』
俺の返事など気にも留めず、『またな』とだけ言い残して去っていったイザナミ。次に目を開けた時には術はすでに解けており、目の前には名前がいた。どうやら意識は完全に戻っているらしい。
カカシ「……名前、覚えてないのか?」
『そうですね。イザナミさんの判断で、私の意識を残したままにするか決められるので。今の会話は、自来也さんとのやり取りしか聞き取れてないです』
カカシ「随分都合のいいことで」
軽く肩をすくめながら返す。だが内心では、むしろその方が良かったのかもしれないと思っていた。あれだけ好き勝手に振り回されている自分の姿を、教え子に見られるのはあまり気分のいいものではない。
それに、自分の身体で何をしていたのかを名前自身が知ってしまえば、間違いなく後で気まずくなる。首筋を無意識にさすりながら、さっきのやり取りを思い出す。いや、気まずくなるのは俺も同じか。
カカシ「まぁ、聞きたい情報は聞けなかったけど、少しだけ得たものはあるから。よしとしたところかな」
『へー、彼女からそんなに情報を得たんですね。あの人に気に入られたんですね、カカシ先生』
カカシ「まー……うん、そうだね」
曖昧に返しながら内心で小さく息をつく。多分、気に入られてはいるのだろう。完全に、いじり相手として。あまり深く関わりたい相手ではないが、名前と一緒にいる以上あの存在と無縁でいるのは難しいだろう。避けられないなら付き合うしかない。そう結論づけて、ゆっくりと空を見上げた。
面倒事の匂いしかしないな。
その予感だけは、不思議と外れる気がしなかった。
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