中忍選抜試験
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サスケが呼ぶ声、伸ばす腕は私には届かなかった。みんなどうか無事でいて___
飛ばされた勢いが弱まったのを確認し、目の前にある木を掴んだが、吸着するほどのチャクラはなく、そのまま地面まで落ちた。人の気配を感じ見上げると、砂隠れと雨隠れが向かい合っていて、今にも戦いが始まりそうな様子だった。みんなの心配どころではなさそうだ。
カンクロー「次から次へと…」
ガアラ「関係ない、目があった奴は皆殺しだ」
一次試験の会場に入ったとき妙に気になった子がそこにいた。赤毛に額の〝愛〟という文字を認識するより先に、彼の冷淡な瞳の中に助けを求めるものを感じたのが印象的で、忘れられなかった。この試験で出会うことがあれば話してみたいと思っていたけど、そんな雰囲気ではなさそうだ。
雨隠れ「小僧、相手は選んだ方がいいぜ。死ぬぜお前ら」
ガアラ「御託はいい、さっさと始めよう雨隠れのおじさん」
お互い睨み合い、私など眼中になさそう。
微かに感じる緊張感、あの茂みに隠れている子達もどうにかしてあげたいけれど、自分もこの現状を乗り越えられるのか…。
視線を送り、1人の女の子と目が合ったのと同時、雨隠れの忍びが動いた。男が仕込み傘を天に投げると、そこから出てきた無数の千本が砂の忍を襲い土埃が舞った。瞬間、私は影分身を出し彼らに逃げるよう言った。
ガアラ「千本の雨か…俺は血の雨を見せてやろう」
雨隠れ「くっ……動け…ない」
ガアラ「砂縛柩・砂瀑送葬‼︎」
土煙が消え、様子を伺う。千本は我愛羅に当たるどころか彼には傷一つなく、砂が雨隠れを拘束していた。彼が自身の手を握ると拘束している砂が大圧力で男を押しつぶし、肉も骨も粉みじんにすり潰され、飛び散った血が雨のように降った。
赤い____。
トクン
降ってくる血の雨がスルーモーションのように見えた。
『…⁉︎……今‼︎』
一瞬出遅れた。すかさず影分身を茂みに隠れる彼らの前に出現させて逃げるよう促し、距離が離れたのを確認し術を解く。
カンクロー「あいつバカじゃん」
ガアラ「そんなに死にたかったのか」
『もう勝負はついてる、これ以上無駄な戦いはしなくていいでしょ』
不思議と彼をほかっておくことができなかった。背後で2人の雨隠れが砂に拘束され苦しんでいる。勝てる策なんてない、考えるより先に身体が動いていしまった。
ガアラ「そいつらはお前に関係ないやつだろ、なぜ守る」
『関係ないよ。けどあなたにこれ以上、人を殺させたくない』
ガアラ「俺にだと?」
『あなた気づいてる?人を殺めるときあなたはとても悲しそうな目をしてる』
ガアラ「訳のわからないことを……お前は初めて見た時から気に食わなかった。それが今わかった、お前のその目だ。そのお人好しそうな目が俺を苛立たせる。…俺に殺させたくないと言ったな、じゃあ守ってみろ」
そう言った瞬間、砂が私を襲う。
捕まればおしまい。さっきの光景が脳裏に浮かび四方八方と現れる砂から逃げ回ることしかできなかった。残ったことを後悔したが、諦める方が後から目覚めが悪い。
横目で雨隠れを拘束する砂を見ると彼らはまだ無事だった。同時に砂を操るのは不可能なのかもしれない…….。
ガアラ「よそ見とは余裕だな」
『ガッ⁉︎………ハッ…ハッ…ハッ』
一瞬の隙をつかれ攻撃をくらい、両手でガードするも威力に負け飛ばされた。腕はズキズキと痛み、額の傷口の血が頬をつたう。肋骨も衝撃で折れたのか呼吸をするだけで痛みを感じた。
ガアラ「こんなものか…興醒めだな」
『っ⁉︎やめてぇぇぇえ‼︎』
彼が腕を上げたのが目に入り叫んだが、彼は手を閉じた。後ろで何かが潰される音とともに血の雨が私を赤く染めた。心を落ち着かせようとしても、蒸せかえる血の臭いに鼓動はどんどん速くなり呼吸も乱れる。
赤い………赤い……赤い……
『だめ……そんなの……』
ガアラ「弱ければ死ぬ、次はお前だ」
赤い……血…赤……赤い
赤、赤、赤、赤、赤
『私は…………あ、なた……けたい』
〝私はあなたを助けたい〟言葉にはならなかった。彼の光のない目が、飽きたとでも言うように、さらに深く深く落ちていく。今の私じゃ彼の心に届かない。
バタンと扉が開く音が私の奥底で聞こえた後、意識が何かと入れ替わった様な感覚を覚えた。そこからのことはよく覚えていない。ただ無性にウキウキした楽しい気分になったのを覚えている。
『真っ赤だね〜〜』
私は一体どうしたのだろう。