遙かなる再会の章
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サイ「名前さん、大丈夫ですか」
布に包まれた彼女を見下ろすと、覗いた肌に思わず視線が止まった。いくつも残る赤い痕はサスケがつけたものだとすぐに分かる。胸の奥がわずかにざわついた。
不快だ。
理由は分からないが、あまり見ていて気分のいいものではない。そう思いながらも彼女の体を確認する。外傷はないがチャクラの消耗に加え、この状態だ。精神的な負担も大きいはず。そう判断していたけど。
『まさか、あなたに助けられるとは思わなかった』
弱々しい声だったけれど、意識ははっきりしているし、不思議といつも通りのようにも思えた。
サイ「……あなたに興味が出てきたので、今は死なれては困るんですよ」
いつものように微笑む。だが彼女は少し驚いた顔をしたあとフフッ、と小さく笑った。
『ナルトと仲良くなったんだね。いい顔してる』
サイ「……今はナルト君は関係ないのでは?」
そう返しながらも、胸の奥にわずかな違和感が残った。さっきの言葉を、わざわざ否定する必要なんてなかったはずなのに、どこかで切り離そうとしている。
「興味」そう口にしたはずなのに、妙にしっくりこない。それだけじゃない、もっと別の何かが胸の奥に引っかかっている。形にならないそれに、意味を見出そうとした、その時だった。
サクラ「名前!大丈夫!?今、私が――」
サクラさんがこちらへ駆け寄ろうとしたその瞬間、彼女はぐっと布を強く掴み引き寄せ、咄嗟に肌を隠した。そしてそのまま体をこちらへ寄せ、僕の胸に逃げるように埋まった。
サイ「……」
明らかに不自然な動きに、目を細める。
『大丈夫!怪我もしてないし……これくらいなら、自分でできるから私より、ナルトや隊長を見てあげて』
声は少し強張っている。そして、小さく付け足した。
『……大丈夫、ね』
ただの言葉じゃない。サクラさんもそれに気づいたのだろう、伸ばしかけた手がわずかに止まった。空気がわずかに張り詰め、僕は腕の中の体温を感じながらその意味を探ろうとした。
サクラ「たくっ、しょうがないわね……なんて言うと思った!ほら、さっさと見せなさい!」
ズカズカと、遠慮なくこちらへ歩み寄ってくる。その表情は医療忍者のそれではなく、もっと別の何かだった。
『サ、サクラ……』
サイ「……」
腕の中の彼女を見ると、顔は青ざめ、わずかに強張っている。逃げたいのは明らかだが、まともに動ける状態じゃなく逃げ場はない。その姿を見て、普段見せない弱々しい彼女に、クスッと笑みがこぼれた。咄嗟に、彼女の体を抱え直してサクラさんから遠ざける。
『……っ⁉︎』
サクラ「ちょっと、サイ!何してるのよ!」
サイ「まあまあ、サクラさん。彼女もこう言ってますし。ヤマト隊長も怪我をしている。まずはそちらを優先してあげてください」
サクラ「なんでそんなに、名前の肩を持つのよサイ!」
サイ「肩を持つ……」
一度、言葉を繰り返し、腕の中の彼女へちらりと視線を落とす。自分でも自分の行動に驚いていた。まさか助け舟を出してしまうとは。だから思った事を素直に言葉に変える。
サイ「そうですね。僕は彼女に興味が出ました。そこへ、こんなに無防備な格好で自分から僕に身を預けている。男として、こんな嬉しい機会はそうないですからね……堪能しないと」
ニコリと微笑むと、一瞬空気が止まった。
サクラ「はぁあああああ⁉︎」
ナルト「お、おいサイ……お前それ……」
ヤマト「……はぁ」
サクラさんはみるみる顔を赤く染め、後ろでナルト君の顔が青ざめ、ヤマト隊長は大きくため息をつき、こめかみを押さえた。
『サイ…なんでも素直に言えばいいってわけじゃないよ』
サイ「……?」
そんな反応を受け、わずかに首を傾げる。そんなに、おかしな事を言っただろうか。
サクラ「たくっ、なんなのあんたは!ヤマト隊長とナルトが終わったら名前の番だからね。私に遠慮なんてするんじゃないわよ」
そう言い捨てると、勢いよく身を翻す。足音が少し離れていく。
サイ「……これでよかったんですよね」
『ありがとう……助かった。まあ、逃げられそうにはないけど』
サイ「……何故、こんな事を?」
純粋な疑問だった。彼女は一瞬だけ目を伏せ、そしてぽつりと零した。
『……サクラは、サスケの事が好きだからこんな姿、見られたくなかった。けど、サクラの事甘く見てたみたい、怒られちゃった』
サイ「……」
視線を落とすと、わずかに布を握る指に力がこもっていた。理解できない。彼女の隠したがる理由が。あれはサスケが勝手にしたもので、彼女の意思ではない。本来なら隠す必要などないはずだ。
腕の中で彼女はわずかに体を縮こまらせる。守ろうとしていたのだろうか。こんなことをされてもなお、自分ではなくサクラさんの気持ちを。理解はできないけど、それでもその選択は間違いではないのかもしれない。
彼女のその強さはどこから来るのだろうか。強さからくる自信、それだけではない。もっと奥に何かがある気がした。
サイ「……そういうもの、なんですか」
誰に向けるでもなく、ぽつりと呟く。答えは返ってこないけれど、胸の奥に残る違和感だけが静かに形を変え始めていた。
