遙かなる再会の章
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甘い。
甘い、甘い、甘い。
こいつはどこも甘い。
足りない。
こんなものじゃ、空白の三年は埋まらない。
全然、足りない。
欲しい。もっと。
もっと、確かめたい。
『……っ……サスケ……も、やめっ』
掠れた声が耳に届く。拒絶のはずなのに、その弱さが逆に神経を逆撫でする。抵抗しようとする手も、薬のせいで力が入っていない。胸元に押し当てられた手首を掴み、そのままベッドへ縫い付ける。顔を寄せると、彼女の呼吸がわずかに乱れた。三年ぶりに触れる肌は記憶よりもずっと柔らかくて、熱を持っていた。その感触が余計に欲を掻き立てる。
二の腕へ唇を落とす。軽く触れるだけの口づけのあと、そのままゆっくりと感触をなぞるように触れていくと、ぴくりと小さく体が震えた。こんなものじゃ足りない。吸い上げるように強く口づけると、白い肌に赤い痕が浮かび上がった。
唇を離し指でなぞれば、そこだけがわずかに熱を帯びていた。もう、いくつ目か分からない。それでも、まだ足りなかった。あの日、離れてからの三年間、積み重なった想いは、もう綺麗な形をしていなかった。欲望も、執着も、飢えも、すべてが混ざり合ってぐちゃぐちゃになっている。まるで本能みたいに、考えるより先、俺はまた彼女へと手を伸ばしていた。
『……サス……ケ……おねがい……もう……』
力のない視線がまっすぐに俺を捉える。昔と変わらない、青く澄んだ瞳。それを見た瞬間、背筋にぞくりとした震えが走った。喉が渇く。ゴクリと唾を飲み込みながら、その視線を逸らさずに見返すと、ゆっくりと口角が上がる。
サスケ「名前、まだへばるなよ。時間はたっぷりある」
名前の膝を割り、その間に体を滑り込ませさらに距離を詰めると、彼女の逃げ場は完全になくなった。密着した体越しに、彼女の温かく湿った体温がじわりと意識を侵食していく。その温もりが確かなものだと実感するたび、胸の奥で何かが膨れ上がっていくのを感じた。
もう、俺は弱くない。あの時とは違い、こいつを手に入れられるだけの力を俺は手に入れた。誰にも邪魔はさせない、こいつは俺のものだ。そう思いながら、さらに体重をかけようとしたその瞬間だった。不意に体が何かに拘束され、動きが止まる。舌打ちしたい衝動を押さえ込みながら、ゆっくりと背後の男に声をかけた。
サスケ「……なんのようだ」
サイ「そこまでにしてくれますか。彼女のそんな姿は、何故か見たくないんだ」
抑揚のない声だが、その言葉にはわずかな拒絶が滲んでいる。
サスケ「こいつは俺の女だ。邪魔をするな」
自然と声が低くなり、空気が一瞬で冷えた。それでも、目の前の男はまるで気にした様子もなく静かに言葉を続ける。
サイ「それはできかねますね」
サスケ「殺されたいのか」
サイ「あと、もう一つ。僕にはやるべきことができました。僕は君を木ノ葉へ連れて帰る。彼が必死に手繰り寄せようとしている、君とのつながりを……守ってみたいんだ」
一瞬、沈黙が落ちた。何もかもがくだらない。目の前に名前がいるのに、触れることすら許されない。邪魔をされた苛立ちが、胸の奥でじわじわと煮え立っていく。視線だけをサイへと向けた。
サスケ「……くだらない」
その一言と同時に、押し殺していた感情が爆ぜた。ドンッ、と轟音が響き地面が弾け飛ぶ。俺は名前を抱き上げたまま一気に跳躍した。洞窟を突き破り、光の差す地上へと躍り出る。薄暗い空間とは違う容赦のない太陽の光が、彼女を照らし出した瞬間、今まで見えていなかった細部までが鮮明に浮かび上がる。白い髪。三年前よりも大人びた顔立ち。血色のいい肌。そして、その肌に残る独占欲の痣。
次から次へと懐かしい顔が視界に入るが、今はそんなものどうでもよかった。早く手に入れたい。そう思うのに、やはりこいつは簡単には落ちてくれない。
『……っ‼︎』
サスケ「⁉︎」
腕の中にいた名前の体から突然チャクラが溢れ出した。それはただの放出じゃない。まるで熱を帯びたような性質を持ち、皮膚を焼くように触れてくる。思わず手が緩んだのは、ほんの一瞬。けど彼女にはそれで十分だった。名前がその隙を見逃すはずがなく、腕の中からするりと体が抜けていく。指先をすり抜ける、その感触だけを残して。
逃がすかよ。
低く、押し殺した声が喉の奥で零れた。
