遙かなる再会の章
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『どうして……』
言いかけた瞬間、胸の奥がざわついた。それでも、そのまま言葉を飲み込むことができなかった。
『イタチはどうして、サスケに本当のことを話さないの』
禁句だったと分かっていながら口にしてしまった。しまったと思ったけれど、一度出てしまった言葉はもう戻らない。案の定、彼の表情がわずかに曇る。
イタチ「……その話はしない約束だろう」
静かな声だった。怒っているわけではないけど、それ以上踏み込むなと言っているのは分かる。
『そうだけど…兄弟なのに、このままなんて悲しいよ』
それが本音だった。サスケもイタチも、二人とも私にとって大切な人だったからだ。サスケは彼を殺すために木ノ葉を抜け、大蛇丸のもとへ行った。それで本当にいいのだろうかと考えてしまい、自然と言葉が続かなくなる。やがて少しの沈黙が落ち、その間を埋めるように風が静かに木々を揺らした。彼の気配がゆっくりと近づいてくるのを感じ、顔を上げると、そこには少しだけ困ったように笑うイタチがいた。
イタチ「そんな顔をするな。それに今はその時じゃないんだ」
穏やかな声だったが、その言葉には確かな意思が感じられた。
『じゃあ、いつ……⁉︎』
思わず身を乗り出したその瞬間、額にトンと柔らかな感触が触れる。驚いて顔を上げると、指を伸ばした彼が静かにこちらを見ていた。
イタチ「大丈夫。あいつのことは、お前と同じくらい愛している」
その言葉に胸がぎゅっと締めつけられた。サスケを想う気持ちはきっと誰よりも強いはずなのに、それでも二人は今、刃を向け合う場所にいるのだと改めて思い知らされる。その現実の重さに、私はそれ以上何も言えなかった。ただ一つだけ胸の奥で強く思う。いつか必ず、二人の時間を取り戻したいと。
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『……ン』
懐かしい匂いがふと鼻をかすめ、それが知っているものだと気づいたのに、どこか違う違和感が残った。そう思った瞬間、まるで蛇が体に絡みついているような不快な感覚が背筋を走る。体を動かそうとするが、思うように動かない。手足は鉛のように重く、力が入らなかった。ゆっくりと重たい瞼を開くと、ぼやけた視界の中に赤い影が差し込む。
『……イ……』
思わず名前を呼びかけた、その瞬間。
サスケ「起きたか」
その声を聞いた途端、言葉が喉で止まる。違う、この声を忘れるはずがない。三年前、止めたかったのに、会うことすらできなかったあの人。
『……サ……スケ』
ゆっくりと名前を呼び、焦点の合い始めた視界の先にいたのは、間違いなく彼だった。
サスケ「久しぶりだな、名前」
突然、探していた彼が目の前に現れたことで、状況が飲み込めないまま、ゆっくりと辺りを見渡す。そこは見覚えのない部屋の中だった。何があったのか思い出そうと、途切れた記憶を辿る。
クローンを倒して、暴走したナルトを見つけて、術を使った。イザナミの力を使い、ヤマト隊長と共にナルトを抑えたところまでは覚えている。そのあと、二つの力を限界まで使い、満身創痍になりながらも、サクラが治療しているのを横で見守っていた。そこまでは確かに覚えている。けれど、それ以降の記憶がないことに気づいた瞬間、胸の奥がざわりと波立つ。そして次の瞬間、ようやく理解した。あの時、カブトに背後から襲われたんだ。
大蛇丸、いや、薬師カブトにここで捕まるわけにはいかなかった。もし研究材料として私の素材が彼の手に渡れば、またクローンの完成度が上がってしまう。それだけは絶対に避けなければならない。そんなことを考えているはずなのに、目の前にいる人物からどうしても視線を逸らすことができなかった。三年ぶりに会うサスケ。こんな状況だというのに、再び出会えたことがどうしようもなく嬉しかった。
『サスケ……私、あの時のこと謝りたくて。ずっと、ずっと謝りたかったの』
言葉は途切れそうになりながらも、胸の奥に溜め込んでいた想いが溢れるように零れていく。
サスケ「ああ、いいんだ。あれは俺が悪かった」
三年という月日が流れたからだろうか、そう言った彼は妙に落ち着いていた。会えて嬉しいはずなのに、なぜか胸の奥がざわつく。部屋の空気がどこか重く感じられ、その違和感に気づいた時には、彼がゆっくりとこちらへ歩み寄ってきていた。一歩、また一歩と、その距離が静かに縮まっていく。やがて伸びた彼の手が私の顔の横を通り過ぎ、ギシッと鈍い音がして、ベッドがわずかに軋んだ。いつの間にか、逃げ場はなくなっていた。
サスケ「あの時の俺は弱かったから……けど、今は違う」
写輪眼の赤が底の見えない闇のように揺れている。ぞくり、と背中に冷たいものが走る中、彼は手にしていた湯呑みにゆっくりと口をつけ、その後まっすぐに私を見下ろした。
『……サス……』
名前を呼びかけた、その瞬間だった。
一気に距離が詰められる。
『……んぐっ⁉』
唇が重なった次の瞬間、彼の口から流れ込んできた液体がそのまま喉へと落ちてくる。突然のことに思考が追いつかず、反射的にそれを飲み込んでしまった。離れる間も与えられないまま、すぐに舌が入り込む。まるで逃がさないとでも言うように、強引に、けれど執拗に口の奥まで探るように触れてきた。
『……っ、フ……』
呼吸が乱れ、まともに息ができない。逃れようと身をよじった拍子に、互いの歯が強くぶつかると、鈍い感触と音が口内に響いた。
『……ガリッ』
サスケ「……っ」
わずかに唇が離れ、その隙間から鉄の味がじわりと滲む。呼吸すら奪われたまま見上げる中、サスケは自分の赤く濡れた唇を、ゆっくりと舌でなぞった。その仕草はどこか確かめるようで、そして余裕すら感じさせた。
『サスケ違う!こんなの間違ってる‼︎私、ちゃんとサスケと話したいの。あの時はまだ子供で……仲間としての好きと、異性としての好きの違いがよく分かってなくて。サスケの気持ちがわからなくて、ただ動揺してただけなの……』
サスケ「……」
必死に言葉を紡ぐ。途切れないように、届くように。けれど、彼は何も言わない。ただ、静かにこちらを見ているだけだった。その視線は冷たくもなく、かといって優しくもなかった。
『今ならちゃんとわかる。だから話そうよ。サス… …っ』
言葉を続けようとしたその瞬間、視界がぐにゃりと歪む。平衡感覚を失いそうになり、ふらついた体を支えきれずベッドに手をついた。
『……サスケ……さっき……何を、飲ませたの……』
喉の奥がじわりと熱を帯び、体の内側を何かが這い回るような違和感が広がっていく。チャクラの流れが、ぐちゃぐちゃに乱されていくのがはっきりと分かった。
サスケ「チャクラを練れなくする薬だ。お前にはこの写輪眼でさえ効かないからな」
淡々とした声だった。そこには一切の迷いも、躊躇もない。
サスケ「名前、お前はあの時より美しくなり、強くもなった」
ゆっくりと近づいてくる足音が、やけに大きく耳に響く。逃げなければいけないのに、体が言うことを聞かない。
サスケ「……俺の隣にいるのに相応しい。お前は俺のものだ。話し合いなどいらない」
すぐ近くで落ちた低い声に、背筋が震えた。
サスケ「体からしっかり教えてやる」
その気配がすぐ目の前まで迫り、逃げ場はもうない。彼の瞳を見た瞬間、理解した。どれだけ強くなっても、その背中を掴もうとしても、それだけでは彼の心には届かない。今の彼には、私の言葉は何一つ届いていないのだと。
