遙かなる再会の章
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『シカマル、聞いてる?』
シカマル「ん……ああ、わりー。聞いてるよ」
反射的にそう返すけれど、正直半分も入ってきていなかった。『変なの』と彼女は小さく笑って、何事もなかったかのように話を続ける。その横顔を思わず見つめてしまう。
綺麗になった。そんな言葉、口が裂けても言えるわけがない。ナルトと並んで歩いてきた時は本気で驚いた。一瞬で名前だと分かったのに言葉が出なかった。顔立ちだけじゃない、立ち姿、視線、纏う空気。全部が昔とは違う。
しかも、あの正体の掴めない男との一瞬の攻防。動き出しの速さ、咄嗟の状況判断、術の発動までの流れは無駄がない。昔の彼女なら、あそこまで冷静には動けなかった。〝成長した〟なんて一言じゃ足りない。別人みたいで、でも確かに彼女だった。
その強さは彼女の話す修行の3年間の賜物だと言うことも分かった。訳のわからない修行のおかげで暴走することも無くなったらしい。『もう、殺して止めてなんて言わないから安心して』そんなことまで伝えてきた。本当にこいつは馬鹿だと思う。絶対に殺すわけがない。ふと、脳裏に過る声。
〝あの子はな、絶対美人になって強くなるタイプだ〟
あの日、初めて名前が俺の家に来た時、ぼんやりと言った親父の言葉。ガキだった当時は、なに馬鹿な事を言ってるんだと、照れくささまじりに適当に聞き流していたけれど、今なら分かる。本当に言葉通りの女になっていた。……めんどくせぇ。そう思うのに目が離せない。一緒に並んでいたはずの彼女が、いつの間にか遠くへ行きそうで、それが妙に落ち着かなかった。そんな時だった。
「あっ……いたたた」
声に振り向くと、目の前でばーさんが盛大に転んでいた。買い物袋の中身が石畳の上にばらばらと転がる。立ち上がろうと足を踏み出した瞬間、俺より早く彼女が駆け出していた。しゃがみ込み、散らばった野菜やら乾物やらを一つ一つ拾い上げる。さっきまで戦闘していたとは思えない、柔らかい表情。大人びた彼女の顔に見惚れてしまい、少し出遅れた。足元に転がってきたりんごを拾い上げ、後から歩み寄る。
『おばあさん、大丈夫? はい、これで全部だと思う』
シカマル「これもあるぜ」
後ろからりんごを差し出すと彼女が振り向き、一瞬だけ目が合った。
「おやおや、親切にどうもありがとうねぇ」
シカマル「ばーさん、気ぃつけろよ」
『こら、シカマル。〝ばーさん〟はないでしょ』
すぐに小声で窘められる。
シカマル「あ……わりぃ」
「ふふふ、お若い忍びのカップルさん、どうもありがとう。気をつけるよ」
その言葉に時間が止まった。ばーさんは悪気なく笑いながら去っていく。残された俺と名前は、並んだままその背中を見送った。……妙に静かで、隣を見ると彼女もこっちを見ていて、目が合う。
『……カップルだって。どうしてそう思ったんだろう』
本気で不思議そうな顔をしている。
シカマル「……さーな」
肩をすくめて返す。どうやら気づいてないようだ。俺は、なんでばーさんがあんな事を言ったのか分かっていた。彼女の耳元で光るそれ。昔、願掛けだとかなんとか理由をつけて渡したピアス。並んで立てば、嫌でも目につく。
シカマル「ほら、さっさと食おうぜ。せっかくの茶が不味くなる」
それだけ言って先に茶屋へ戻る。自分でも分かるくらい口元が上がっていた。名前に見られたくなくて少しだけ背中で隠す。お揃いのピアス。それだけで周りは勝手に線を引く。…悪くねぇ。
〝俺の息子にしちゃ上出来だ〟
また、親父の声が蘇る。そりゃそうだろ。将棋は最初から王を取るために打つもんだ。一手一手、詰みに近づける。焦る必要なんざ、ねぇ。さっきまで胸の奥にあった妙な不安は、いつの間にか消えていた。後ろから来る彼女は、まだ何も気づいていない。それでいい、今はまだ_________。
シカマル「そういやあ。第七班の穴埋めなんて、お前がいるから必要ねぇんじゃねーか」
団子を咥えたまま、なんとなく口に出した疑問だった。こいつがいれば戦力的には十分すぎる。わざわざ補充なんて、面倒なことする意味が分からない。
『そうなんだけど、私途中で他の任務があって抜けなきゃいけないから人数に入らないんだよね』
シカマル「なんだよ、他の任務って」
『えっとね……あ……これ極秘だったんだ』
シカマル「……」
何気なく聞いたつもりだったが、ぴたりと動きが止まる。こいつ、今さらっとヤバいこと言ったな。青い顔でこっちを見るあたり、自覚はあるらしい。
シカマル「たくっ、それを言わずに“言えない”で済ませりゃいいだろ。極秘なんて付け足すなよ」
面倒くせぇ、と小さく舌打ちする。ほんと、こういうとこ抜けてる。
『ま、シカマルだしいいか』
シカマル「いや、よくねーだろ」
即答する。信用されてんのか、雑に扱われてんのか分からないけど、そのどっちでもいいと思ってる自分がいるのが、少しだけ厄介だった。こいつにそう思われるのは、別に悪くない。
シカマル「まあ、無茶はすんなよ」
ぽつりと落とす。軽く言ったつもりだったのに、思ったより声が低く出た。言ったところで、無茶をする姿しか想像できない。むしろ、そういうやつだと分かってるからこそ、言わずにはいられないあたり、自分でも面倒くさいと思う。
