風影奪還の章
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『………っ』
って、なんてことまで思い出してるのよ、私。頬に熱が集まり、思わず顔を背ける。隣を走るカカシ先生は、そんな私の様子に気づいたのか、わずかに首を傾げる。
カカシ「……?」
『い、いえ。なんでもないです』
慌てて誤魔化し、私は咳払いを一つした。
『スパルタな先生に修行を見てもらってました』
イタチの名前を口にするわけにはいかない。だから私は、ナルトたちとはぐれたあとに起きたもう一つの事実だけを選んで話した。実際、修行をつけてくれたのは彼だけではない。もう一人、私を導いてくれた存在がいた。
カカシ「へぇ。誰に?」
『私の一族の人です。正確には…祖先、ですね』
そう答えながら、脳裏にあの森の光景がよみがえる。森の奥には小さな祠があった。そこには先祖たちの意識だけが残されていて、肉体はなくても思考や記憶は失われていないらしい。後の世代へ力や知識を託すために、その場所で眠り続けているのだと聞かされた。
私はそこで祖先の意識と対話を重ねながら、修行を続けていた。イザナミの話によれば、同じような拠点は全国各地に存在しているという。それぞれ異なる先祖の意識が眠っていて、訪れた者に課題を与えるらしい。その課題を乗り越えるたびに力が引き上げられ、次の場所へ進む資格を得る。
どうやら、そういう仕組みのようだった。そこまで説明し終えると、カカシ先生はしばらく黙り込んだ。隣を走りながら眉間を押さえ、何かを整理するように考え込んでいる。やがて、小さく息を吐いた。
カカシ「……まぁ、お前の一族については、自来也様から相当特殊だとは聞いてる。だから、そこまで驚きはしないけど……」
そう言って、一拍置くいた後、ちらりと横目で私を見た。
カカシ「それで? 本当に大丈夫なのか、それは」
『大丈夫です。とりあえず……二〇%くらいなら、力を安定して使えるようになりました』
そう答えた瞬間だった。
カカシ先生の表情が目に見えて曇る。
カカシ「……それは安心していい方の数字なのか?」
『たぶん……大丈夫、です』
カカシ「おいおい。たぶんが一番信用ならないんだけど」
深いため息。けれど、その声音は叱るというより、呆れている方が近かった。懐かしいやり取りだ。カカシ先生は肩をすくめるように苦笑する。
カカシ「まあ、お前はナルトに続く意外性No.1の忍だからな。いや、それを言うならNo.2か……」
『それ、褒めてます?』
カカシ「褒めてる褒めてる」
まるで適当に言っているような口調だけれど、その隻眼はどこか楽しそうに細められていた。
カカシ「驚かされるのは今さらだし。ま、期待しとくよ」
その言葉に、私もつられるように笑う。
『もちろん。そこは期待してください』
自信たっぷりに言い切ると、カカシ先生が小さく笑う気配がした。
