風影奪還の章
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デイダラ「芸術は……」
その言葉が発せられた瞬間、空気がぴんと張り詰めた。肌を刺すような感覚に周囲の音が一拍、遅れて聞こえる。
デイダラ「爆発だ‼︎」
瞬間、視界が揺れた。デイダラの体内から異様な量のチャクラが膨れ上がるのが分かる。熱を持ったそれが空間を押し広げるみたいに膨張していく。〝自爆〟そう理解した瞬間、胸の奥が凍りついた。また奪うのか、我愛羅を、仲間を、ここにいる命を。
「下がれ!」
背後から制止の声が飛んだ。振り返らなくてもわかる、カカシ先生の声だ。確かに聞こえたはずなのに足は止まらない。近づけば死ぬかもしれない。危険だと身体は理解しているのに、計算する思考はぷつりと切れた。
ただ、嫌だった。また奪われるのが。守れるはずのものを目の前で失うのが。無力のまま立ち尽くす自分が何よりも許せなかった。
『ふざけんなぁぁぁぁあ‼︎』
喉が裂けるほど叫び、渾身の力を込めて拳を振り抜く。狙いなんてない。ただ一つ、吹き飛べとその想いを込める。衝撃で粉砕して爆発ごとすべて消えてしまえ。
膨れ上がるチャクラの熱が皮膚を焼く。それでも構わなかった。片腕が吹き飛ぼうと、それごと全部くれてやる。奪うだけ奪って笑って消えるなんて、そんな終わり絶対に認めない。
拳が届いた瞬間、光が視界を塗り潰し音が消える。時間が止まったみたいに何も感じない。だめか……そう思ったその刹那、ぐいと肩を強く引かれた。息が詰まるほどの力で背中から何かに包み込まれる。
衝撃と同時に空間そのものがねじれるような感覚。爆音は途中でぷつりと途切れ、さっきまで視界を埋め尽くしていた白い光も忽然と消える。代わりに、高い耳鳴りと鼻先を掠めるかすかに焦げた匂い。そして肌に触れる馴染みのあるチャクラ。
カカシ「ほんとに……人の言う事、聞きやしないんだから」
聞き慣れた声が、すぐ傍で静かに落ちてきた次の瞬間、体にずしりと重みがかかる。後方へ引かれ身体が傾くと、そのまま一緒に地面へと崩れ落ちた。
『……っ』
鈍い音を立てて尻餅をつく。背中にぴたりと重なる体温。肩口に回された腕が思いのほか強く、布越しでも分かるほどの熱がじわりと伝わってくる。すぐ後ろにある静かに乱れた呼吸。
万華鏡写輪眼。
空間を歪めた代償が、抱き留める腕のわずかな震えとなってはっきり伝わってくる。それでも離さない。むしろ、私がわずかに身じろいだ瞬間、腕の力が強まった。
『か、カカシ先生……だいじょ――』
振り返ろうとして、言葉が途中で止まった。
カカシ「……動くな」
低く、静かで抑えられた声。怒鳴っていないし、感情をぶつけてもいないのに、空気が一瞬で凍りついた。肌が粟立ち、視界の端で周囲の動きが止まるのが分かった。ナルトも、サクラも、何かを言いかけたまま固まっている。抱き留められた腕に、ぐっと力がこもる。逃がさない。そう、はっきり伝わってくる。
カカシ「自分が、何をしようとしたか……分かってるよね」
耳元で囁くような声。吐息が首筋をかすめるほどの距離で、どこにも逃げ場がない。背筋を冷たいものが静かに這い上がった。
カカシ「……止められなかったら、どうなってた?」
返事を待つ間すら、怒りを必死に抑えているのが分かった。過去、同じように静かに怒られた記憶が嫌というほど蘇る。恐る恐る後ろを振り返ると、案の定だ。目元はにっこりと細められ、穏やかな笑顔なのに底が見えない。分かってる。これは本気で怒っている時の顔だ。
『……爆発、します。たぶん……』
喉を絞るようにそう答えると、すぐ耳元で深く重たい溜息が落ちた。
カカシ「……たぶん? 」
一拍。
カカシ「バカかなー、君は」
声音は柔らかいく、いつも通りの力の抜けた調子。けれど、その一言が真っ直ぐ胸に刺さる。抱き留める腕がさらに強くなった。
『……ご、ごめんなさい』
絞り出すように言うと、頭上でもう一度、今度は少し長い溜息。
カカシ「仲間を守るのはいいけど……せめて、生き残る方法を選びなさい」
叱る声なのに、どこか疲れが滲んでいる。抱きしめていた腕がほんの少しだけ緩むけれど、完全には離れない。逃がさないと言うより、放すつもりがないという距離。
「名前がいなくなったら、悲しむ人間が多いんだから」
『……すみません』
かすれた声が自分でも情けないと思うほど小さく落ちた。
カカシ「……反省してるなら、いい」
それ以上は何も言わなかった。でも、そう言ったそばから私はもう悟っていた。きっと守れないだろう。同じ場面に立たされたら、また身体が先に動く。理屈も、忠告も、叱責も全部置き去りにして。
だって、視線の先の横たわる我愛羅の身体はあまりにも静かだった。胸は動かず、砂も、もう彼を守ろうとしない。こんなの見せられて冷静でいられるわけがない。
どんな現実が待っていようと、覚悟はしていたはずだった。けれど、こんなの受け入れられるわけがない。喉の奥に叫びにもならない何かが込み上げる。助けれなかった。必ず助け出すと、思っていたのに。
