中忍選抜試験編 前編
夢小説設定
ご利用の端末、あるいはブラウザ設定では夢小説機能をご利用になることができません。
古いスマートフォン端末や、一部ブラウザのプライベートブラウジング機能をご利用の際は、機能に制限が掛かることがございます。
カカシ先生の言葉が、ふと頭をよぎる。
カカシ「まあ、上を目指すのはいいことだ。でも覚悟だけはしておけよ。忍の世界は甘くない」
『今その話ですか?もう受験するって決まってるのに』
カカシ「念のため、ね。お前は過酷な環境で生きてきた分、きっと強い。……受からなくてもいい。死なずに帰ってきたら、それで十分だ」
『……え、死ぬんですか?』
その時は、半信半疑で聞き流した。“中忍試験で死人が出る”なんて、あまりにも現実味がなかったから。
――今思えば。“普通じゃなかった”のは、私のほうだったのかもしれない。同意書にサインした時でさえ、深く考えていなかった。試験の話が出た瞬間から、私は本当の意味での“危険”を、理解していなかったのだ。それでも、ほんの少しでも早く、この試験の本当の危険性を知っていたら。そんな後悔が、胸の奥で燻る。
腕の中で、ぐったりと気を失うナルト。
震えが止まらないサクラ。
血に濡れ、動揺を隠しきれないサスケ。
そして、この惨状を生み出した――蛇のような女。
胸に湧き上がったのは、恐怖じゃなかった。じわじわと体の奥を焼く、人生で初めての感情。怒りだった。
『……なんか、腹が立つ』
思わず零れたその声を、女は鼻で笑った。まるで子どもの癇癪でも見るような、余裕を含んだ笑み。私はそれを意識的に無視し、ナルトをサクラに預ける。それから、ふらつく彼女の身体を支えながら、状態を確かめた――腰が抜けている。これでは、もう戦える状態じゃない。サスケに託すしかない。頭では、ちゃんと分かっている。それでも――胸の奥に渦巻く怒りは、少しも静まる気配を見せなかった。
サクラ「名前……」
『大丈夫だよ、サクラ。私が時間を稼ぐから……みんなで逃げて』
サクラ「そんな……! 名前が死んじゃう!』
『大丈夫』
笑った、つもりだった。それでも、サクラの震えは止まらない。サスケに視線を向けると、彼もまた、同じ不安を必死に押し殺していた。その怯えを宿した瞳を見るたび、胸の奥で怒りの熱が、さらに煮えたぎっていく。私は、拳を強く握りしめた。
『遅れてごめん。だいぶ遠くまで吹っ飛ばされちゃって、戻るのに時間かかった』
二人を、まっすぐ見据える。
『みんなが戦ってくれたんだから、次は私の番。だから……ナルトとサクラを連れて、ここから離れて』
初めてできた仲間。
守りたいと思えた人たち。
だからこそ――。
『絶対に死なせない。みんなのこと。大丈夫、死なないよ。私、頑張るから』
その言葉に、迷いはなかった。揺らぎのない決意だけが、そこにある。
サスケ「……んな」
『えっ』
サスケ「ふざけんじゃねぇ‼︎ 何が“頑張る”だ! 死ぬ気だろうが‼︎」
襟を掴まれ、強く引き寄せられる。視界いっぱいに広がる、紅い写輪眼。怒りと焦りが混ざった瞳に、息が詰まった。
サスケ「お前はすぐ自分を犠牲にする!でもな――」
声が、震えている。
サスケ「顔に“怖い”って、思いっきり出てんだよ‼︎そんな顔でカッコつけんな。ダサいんだよ‼︎」
『……怖いよ』
絞り出すように言った。
『だって、初めてできた仲間を…失いたくないんだから』
その言葉に、掴む指が、わずかに緩む。
サスケ「ククッ……ははっ…ほんっと、うざいなお前」
『……えっ、いっ、痛っ⁉︎』
こつん、と額をぶつけられ、情けない声が漏れた。
サスケ「どう考えても、お前一人じゃ時間すら稼げねぇよ」
それは、怒りじゃない。“信頼”の響きだった。
サスケ「だから、俺ら二人でやるぞ。あれ――やってみるか」
胸の奥が、熱くなる。
修行では一度も成功しなかった、あの連携。
『……うん、やろう』
視線が合った瞬間、なぜだか分かった。
――いける。
オロチマル「お話は終わったかしら?泣けるドラマだったわね。でも哀れね。その子が増えたところで、何になるの?」
サスケ「ほざいてろ。…とは言え、あいつは強ぇぞ」
『絶対勝つよ。それとサスケ…瞳、すごく綺麗』
サスケ「は? …お前、ほんっとアホだな」
『ビクビクして動けないより、マシでしょ。和ませただけ』
サスケ「フッ……確かにな。絶対、しくじんなよ」
『もちろん』
二人同時に地を蹴る。交互に仕掛ける攻撃は、最初はあっさり躱された。けれど――集中が極限に達した、その瞬間。周囲の音が、すっと消えた。世界が、ゆっくりと動き始める。サスケの視界が、私の視界と重なる。
『……見える』
タイミングが、完璧に噛み合った。二人の連撃が、初めてオロチマルの表情を歪ませる。ほんの一瞬――届いた。
『ハッ……ハッ……』
肺が焼けるほど苦しい。
それでも、止まりたくなかった。
サスケ「へばるんじゃねーぞ‼︎」
『……ッ、わかってる‼︎』
オロチマル「あなたは――邪魔よ」
『しまっ……カハッ‼︎』
首を掴まれ、木へ叩きつけられる。
視界が歪み、色が抜けていく。
オロチマル「ここで、寝てなさい」
『……ハッ……っ……』
だめ。まだ、終わってない。起きろ。そう命じても、手足は鉛のように重い。視界は、闇に塗りつぶされていく。私は、そのまま意識を手放した。
⸻ バン‼︎
真っ暗な世界に、夢で見た――あの扉が現れた。
……あれ?
私、何してたんだっけ。
さっきまでの出来事は、霧のように消えている。
扉の向こうから、赤黒いモヤが漏れ出す。
禍々しい気配に、思わず後ずさった。
〝フフフフ……変わって〟
陽気な声。
扉が、バタンと開く。
赤黒い渦が、こちらへと飛び込んできた。
逃げ場は、なかった。
そして私は――
その渦に、飲み込まれた。
『フフフフ』
オロチマル「何かおかしいかし……――ボキッ⁉︎」
私の口は、弧を描いていた。
