旅立ち編
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イザナミ「……その程度か」
『ハァ……ハァ……』
荒い呼吸が喉を震わせ、肺に空気を入れるだけで苦しい。もう、何度目の死を迎えただろう。数えることすらとうにやめていた。
腹部には、チャクラで形作られた刀が深々と突き刺さっている。熱いはずなのに痛みはもう遠かった。血を流しすぎたせいか、それとも死に慣れてしまったせいか。
視界の端からゆっくりと暗闇が滲み、世界を覆っていく。立っていることすら叶わない。それでも私は倒れる前に、そっと目を閉じた。浮かんできたのは昔の記憶。
あの日。ナルトと誓いを交わした日のこと。
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ナルト「何言ってるんだってばよ!名前も狙われてるんだぞ!ここに残るのは危険だってばよ!」
『うん……でも』
あの時、迷いはなかった。危険だということも分かっていた。それでも。
『私は、ここに残って修行しなきゃいけない。じゃないと……強くなれない。そんな気がする』
根拠なんてどこにもない。ただの直感だった。それだけなのに、不思議と確信だけはあった。旅を続ける中で、ずっと胸の奥に引っかかっていた違和感。まるで見えない糸に引かれるような感覚。足を止めるたび、気づけば同じ方向を見ていた。
そして、辿り着いた。風化した石段の先にある、小さな祠。人の気配はなく、訪れる者もなく、長い年月の中で忘れ去られたかのように、静かに佇んでいた。
初めて来た場所のはずなのに、胸の奥から込み上げてきたのは、懐かしさにも似た感覚。まるで、〝帰ってきた〟と。そう思ってしまうほどに。私は無意識に祠へ手を伸ばした。
ジライヤ「ここは、お前らが拠点にしていた場所の一つじゃ。前に来た時は、こんな祠はなかった……お前さんら一族に反応する結界のようなものが張られているのかもしれんな」
少し思案するように顎に手をやったあと、自来也さんは静かに頷いた。
ジライヤ「……分かった。ここで別れよう」
隣に立つナルトへ視線を向けた。ナルトは何か言いかけて口を閉じる。きっと反対したかったんだと思う。危険だと分かっているから。それでも、ナルトは強く拳を握りしめると、ゆっくり顔を上げた。
ナルト「……絶対、死ぬなよ」
『うん。ナルト、約束する。絶対、強くなって帰る』
一度、息を吸う。
『サクラと……みんなで、サスケを助けに行こう』
そう言って、私たちは固く握手を交わした。確かに約束した。だから、こんなところで倒れるわけにはいかない。暗闇へ沈みかけていた意識の奥で、握り締めた手の感触が蘇る。
ナルトの声が聞こえる。
サクラの顔が浮かぶ。
みんなの姿が浮かぶ。
『……まだ』
終われない、終わるわけにはいかない。
『……まだ、まだぁぁぁぁぁ‼︎』
目を見開き、突き刺さった刀を力任せに握り潰す。砕け散ったチャクラが霧のように霧散した、その瞬間。意識を一気に傷口へ集中させた。焼けるような激痛。肉が、骨が、無理やり書き換えられていく感覚。呻きを噛み殺しながら、身体は確かに再生していった。
『約束したんだ…!強くなって帰るって!私は……あなたに勝つ‼︎』
その言葉を受けたイザナミは一瞬だけ目を細め、そして、心底楽しそうに口角を吊り上げた。
イザナミ「いいなぁ……いいなぁ!その調子だ!私を、もっと楽しませろ‼︎」
そこからの日々は地獄だった。身体が砕けるほどの鍛錬。倒れ、殺される。その繰り返し。それでも、目を覚ますたびに私は立ち上がった。倒れる理由なら、いくらでもあった。痛みも、恐怖も、諦める言い訳も。けれど、立たない理由はもうどこにもなかった。
『……っ』
まただ。また、身体は動かない。呼吸は浅く、心臓の鼓動は弱々しい。再起不能。そう呼ぶしかない状態だった。耳の奥で脈打つ音だけが、やけに大きく響いている。私は仰向けのまま空を見上げた。どこまでも高い空だった。
ゆっくりと息を吐く。
私は強くなる。この力を、今度こそ正しく使うために。瞼を閉じ、再び震える腕に力を込めた。
何度倒れても、何度壊れても、その先に辿り着くまで。。
